高低差のある土地とは、道路や隣家の敷地との高さが異なっている土地を指します。具体的には、崖地や傾斜のある土地が該当し、坂道の多い住宅街で見られる土地です。

一般的に、高低差のある土地は周辺にある平地と比べて価格が安い傾向があります。しかし、いくつかの懸念点もあるため、建築する際には総合的に判断しなければなりません。

この記事では、高低差がある土地に建築するメリットとデメリット、事前に把握すべき注意点、設計のアイデアを解説します。高低差のある土地での新築計画を検討されている方必見の内容なので、ぜひ参考にしてください。

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高低差のある土地に建築するメリット

高低差のある土地は、使い勝手が悪そうなイメージがあるかもしれません。しかし、高低差のある土地ならではのメリットがあります。

こだわりの注文住宅を作りたい方は、高低差のある土地に建築するメリットをチェックしておきましょう。

  1. 周辺相場に比べて土地価格は安い
  2. 水害対策になる
  3. プライバシーを確保しやすい

1.周辺相場に比べて土地価格は安い

高低差がある土地の最も大きなメリットは、周辺相場に比べて土地価格が安いことです。通常、同じエリアで土地の広さといった条件に違いがなければ、価格に大きな差はありません。

高低差のある土地が周辺相場より安い理由には、以下のものが考えられます。

  • 土地の形状が複雑で整地にコストがかかるため
  • 整形地であることが少ないため
  • 基礎を高くする、もしくは擁壁(壁状の構造物)を造る費用がかかるため
  • 撤去が必要な石積みの擁壁が設置されているため
  • 北向きにひな壇状になっている場合は、南側の土地が日当たりが悪くなるため

上記の理由により、周辺相場よりも価格面で好条件にしなければ売りにくくなるので、高低差のある土地は安くなります。高低差のある土地に建築する場合には、造成や基礎、擁壁などの費用をできるだけ少なくする工夫が必要です。

2.水害対策になる

川が近くにある場合、少しでも高いところに土地があれば、床上浸水を防止できる可能性が高まります。そのような土地は、大雨などの際に河川の増水(外水氾濫)だけでなく、下水道の排水能力が超過(内水氾濫)の影響を受けやすいからです。

国土交通省の調査によると、2008年~2017年までの10年間に、約97%以上の市町村で水害や土砂災害が発生しています。近年は、局所的な豪雨の発生が多くなっており、水害のおそれがある地域であっても、周辺よりも高くなっている土地であれば水害対策になるでしょう。

参照:河川事業概要2021|国土交通省

3.プライバシーを確保しやすい

高低差のある土地は、プライバシーを確保しやすくなります。都市部のように住宅の密集する土地はもちろんのこと、郊外であっても外からの視線を感じない家づくりが可能です。

プライバシーを確保するには、以下の視点で設計しましょう。

  • 周辺の建物:住宅を囲む隣家との距離や窓の高さ、窓ガラスの透明度
  • 建物に接する道路:高低差の程度や道路の向き、人通りや交通量
  • 洗濯物:洗濯物を干す場所と時間

ただし、プライバシーの確保を重視するあまり、開口部をなくしたり小さくしたりすると、視線とともに自然光や通風も遮りやすいので注意が必要です。

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高低差のある土地に建築するデメリット

高低差のある土地は、平坦な土地だと必要のない工事をしなければならないため、費用が別途かかることが多いのです。

メリットがある一方で、高低差のある土地に建築するデメリットも存在します。

  1. 確認申請に時間を要する
  2. 工事費用に費用がかかる
  3. 段差が多くなる
  4. 建築プランが限定される

1.確認申請までに時間を要する

高低差のある土地に建築する際には、確認申請までに時間がかかるので要注意です。高低差が大きい場合は、造成工事が必要になるからです。

造成工事において、以下のような状況になる場合は、都道府県知事の開発許可を受けなければなりません。

  • 盛土をして1メートル以上の崖が生じる
  • 切土をして2メートル以上の崖が生じる
  • 盛土と切土を同時におこない、2メートル以上の崖が生じる

開発許可制度の運用は、各自治体の運用基準により、都市計画や環境の保全、災害防止などの観点から、個別案件ごとに審査がおこなわれます。開発許可に必要な期間は、2~3か月程度が一般的です。仮に、開発行為許可が受けられない場合は、確認申請ができません。

建築スケジュールの余裕をもち、高低差のある土地での建築実績が豊富な建築会社に依頼しましょう。

参照:開発許可|国土交通省

2.工事に費用がかかる

高低差のある土地に建築する場合、平地に比べて工事に費用がかかる可能性があります。

造成工事・土地状況に応じて、埋立・切土・盛土をおこない、土地の高低差を解消する・建築の支障となる木を伐採する
地盤改良工事・地盤が弱い場合に補強する
土留・擁壁工事・道路や隣地に土砂が崩れることを防ぐために、コンクリートで土を留める・住宅の基礎を補強するために擁壁を設置する

工事費用の対策としては、土地状況を事前に把握しておき、予算を多めに見積もっておくことが大切です。

3.段差が多くなる

高低差のある土地に建築すると、段差が多くなります。そのため、階段の多さが負担になるかもしれません。居住スペースまで、スムーズに移動できる工夫が必要です。

駐車スペースや物置などの設備を道路から近い高さに造り、玄関に通じる緩やかな階段やスロープを設置するのも方法のひとつです。また、外部階段のほかに、地下玄関も設けてホームエレベータ―を設置するのも良いでしょう。

現在の家族構成だけでなく、将来の暮らしを見据えたうえで設計すると、住みやすい家づくりが実現します。

4.建築プランが限定される

高低差のある土地に建築する場合、建築プランが限定される可能性があります。2メートル以上の高低差がある場合、建築物へ制限を設ける「がけ条例」が適用されるためです。

がけ条例は、崖崩れなどの自然災害から人命や財産を守る目的で、建築基準法のほかにも各都道府県で規定されています。

崖とは、高さ2~3メートルを超える勾配30度以上の傾斜がある土地を指すのが一般的です。崖の上下に建築する場合は、崖から高さの2倍に当たる距離をあける必要があります。

がけの高さを2メートルと仮定した場合、がけから4メートル離して建築しなくてはいけません。土地の広さにもよりますが、小さな建物になりがちで、要望通りの建築プランが難しくなります。

そこで、がけ条例が適用される土地でも、建築プランを限定されずに済むのが、鉄筋コンクリート住宅です。コンクリートの擁壁を設置する方法もありますが、費用が数百万かかることも少なくありません。鉄筋コンクリート住宅であれば、基礎と建物がコンクリートで一体化しているため、擁壁を設置しなくても建築可能です。

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高低差のある土地を購入する際の注意点

ここまで解説してきたように、高低差のある土地はデメリットを踏まえて対策することで、懸念点が解消できます。ここでは、高低差のある土地を購入する際の注意点を紹介します。

高低差のある土地を購入する際の注意点は、主に以下の4つです。

  1. 建築費用はトータルで考える
  2. 土地の状況を把握しておく
  3. 既存の擁壁がある場合は現行基準を確認する
  4. 建築の専門家に現地確認を依頼する

1.家づくりの費用はトータルで考える

高低差のある土地は購入価格が割安ではありますが、家づくりの費用はトータルで考えましょう。土地購入価格のほかに必要に応じて、造成工事、地盤改良工事、土留・擁壁工事にかかる費用が必要です。

また、家づくりには土地代のほかに、以下の建築費も含まれます。

本体工事費用付帯工事費用諸費用
基礎工事
木工事
屋根工事
建具工事
防水工事
外壁工事
設備工事費
内外装工事など
解体工事(建て替えの場合)
地盤工事(軟弱な地盤の場合)
電設工事
給水工事
ガス工事
家具工事
外構工事植栽工事など 
契約手数料
収入印紙代
ローン関連の手数料
登記費用
登録免許税
不動産取得税
固定資産税など

土地代以外の費用については、複数の建築会社に見積もりを依頼して、各項目を比較しましょう。

建築費用の内訳:土地代が約4割・建築費が約6割

国土交通省の調査によると、注文住宅を建てるために購入した土地代の三大都市圏(首都圏・中京圏・近畿圏)平均は以下の通りです。

土地・建物の総額6,787万円
土地代2,626万円
建築費4,161万円

内訳は、土地代が全体の約4割、建築費用が約6割で検討されるケースが多いことが分かります。高低差のある土地の建築を検討する際には、土地にかかるすべての費用と建築費のバランスを考慮しましょう。

参照:令和4年度住宅市場動向調査|国土交通省

2.土地の状況を把握しておく

高低差のある土地に建物を建築する場合、土地の状況を事前に把握しておくことが大切です。まず、急傾斜地崩壊危険区域に該当しているかを確認しましょう。急傾斜地崩壊危険区域とは、崖崩れによる被害を防止するための対策を必要とするエリアです。

急傾斜地崩壊危険区域に指定される土地には、擁壁や排水施設を設置しなければなりません。高低差の程度によって取るべき対策はケースごとに変わるので、自治体のホームページや窓口で確認してください。

次に、造成時期が宅地造成等規制法の改正後であるかも確認しましょう。問題のない高低差に見えても、地すべりの発生しやすい場所があります。宅地造成等規制法は2006年に改正されているため、それ以前の基準で盛土などが実施された場合、何らかの対応がなされたのか土地の管理者へ確認することをおすすめします。

3.既存の擁壁がある場合は現行基準を確認する

高低差のある土地に既存の擁壁がある場合は、現在でも使用できる基準となっているか確認しましょう。経年劣化により擁壁が損壊する可能性があり、建物や家族に被害をおよぼす危険があります。新たな擁壁の設置には数万円かかる場合があり、資金計画に影響を与えかねません。

不動産会社に、既存擁壁の確認申請書や検査済証がそろっているか確認してください。また、国土交通省が公開している「宅地擁壁老朽化判定マニュアル(案)」を活用して、擁壁の種類やひび割れや膨張の程度をチェックできます。

4.建築の専門家に現地確認を依頼する

高低差のある土地を購入する際は、建築士など専門家に現地確認を依頼するのがおすすめです。専門家であれば、高低差の程度から造成工事や擁壁工事の必要性を知識と経験に基づいて判断してもらえます。災害リスクについても、的確にアドバイスを受けられるでしょう。

また、地盤が軟弱な場合は安心して暮らす家づくりができません。高低差のある土地は周辺の平地より安く購入できるので、地盤改良に多くの費用がかかればメリットを活かしきれないでしょう。現地確認を依頼して、地盤改良工事費と予算との兼ね合いから専門家に相談してみてください。

高低差のある土地を活かしたRC住宅の設計アイデア

高低差のある土地は、できるだけ大がかりな造成をせずに建築するほうが工事費は安くなります。

傾斜地にそのまま家を建てようとする場合、高基礎(または深基礎)となり、地面が斜めになっているので、地面が接する部分が長くなります。必然的に傾斜地では土に近い部分がRC造・それ以外の部分を木造というふうに組み合わせて対応することが多いです。

ここでは、高低差のある土地を活かしたRC住宅の設計アイデアを紹介します。

  • 眺望の良さを暮らしに取り入れる
  • 地上2階建てにして地下室を設ける

眺望の良さを暮らしに取り入れる

高低差のある土地は周囲に遮る建物がない場合が多く、高さ次第で景色を楽しめる場所も少なくありません。そのため、四季の移ろいを感じやすく、地域によっては花火大会やお祭といったイベントを自宅で楽しめます。

RC住宅は、床面から天井までといった高さのある窓を設置できるのが魅力です。鉄筋コンクリートは強度があるため、大きな開口部で眺望の良さを暮らしに取り入れられます。

さらにガレージとデッキスペースを兼ね備えて、家族の集まるアウトドアリビングとしての空間が生まれます。自宅に居ながらにして、別荘で過ごすかのようなゆったりとした時間を過ごせるでしょう。

地上2階建てにして地下室を設ける

土地が道路より低い場合は、道路側から見ると低層階部分が囲まれてしまう可能性が高くなります。この場合は、低層部に地下室を設けるのがおすすめです。

居住スペースとなる部分が道路に面する形になるようにします。地下1階地上2階の建物なら、地下室は容積率算定上の床面積に含まれないからです。建築基準法では敷地に対して建てられる床面積を容積率で定めています。適用される地下室は、地盤からの高さが1メートル以内に天井が設けられたものです。

そうすることで、容積率の上限より広い住宅が建てられる利点があります。その上で、明るさが必要なリビングを2階部分に、寝室や浴室などの部屋を1階部分にする間取りであれば、プライバシーがしっかりと確保され生活しやすくなるでしょう。

参照:建築基準法の一部を改正する法律等の施行について|国土交通省

周辺を建物で囲まれるときは中庭型の住まい

住宅街にある高低差のある土地は、中庭型(コートハウス)の住まいがおすすめです。土地を広く確保できないなら、新たに擁壁を造るのではなく、その機能を兼ね備えたRC住宅が向いています

住宅地の場合、窓からの景色を楽しむのは難しいものです。中庭に面してリビングダイニングに窓を設けることで解放感とともに庭の美しさを楽しめる一石二鳥の間取りになります。

窓の工夫としては、開閉しないタイプを採用すると、すっきりとした開口部になるうえに、断熱性を高められるのがポイントです。庭の景色を1枚の絵のように感じられるでしょう。

sumuzuは土地探しとハウスメーカー選びを同時進行でサポート

sumuzuでは、高低差のある土地に関する様々な活用法をご提案いたします。

高低差のある土地での家づくりは、建築基準法や条例を踏まえて進めるため、個人では判断が難しいケースも珍しくありません。経験豊富な一級建築士による、家づくりのサポートが可能です。お悩みがある方は、ぜひお問合せください。

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城南エリア(世田谷区、目黒区、大田区、渋谷区、港区、品川区)をメインに土地の仲介事業を行う、東証グロース上場企業(株)LANDIXが運営しており、土地探しからハウスメーカー選びまでワンストップで注文住宅をサポートすることが可能です。

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さらに、インテリア、エクステリア、セキュリティなどにも対応しておりますので、住宅に関する様々な面をカバーしているということになります。

なお、具体的な話は面談が必要ですが、対面のほかオンラインにも対応していますので、お気軽にお問い合わせください。

 

最後に

この記事では、高低差がある土地に建築するメリットとデメリット、事前に把握すべき注意点、設計のアイデアを解説しました。

高低差のある土地に建築するメリットは、周辺の土地価格より安くなり、水害対策にも有利です。また、プライバシーも守りやすくなります。一方、デメリットは確認申請に時間がかかり、工事費用の増加や建築プランの制約がある点を理解しておきましょう。

sumuzuは土地探しとハウスメーカー選びを同時にサポートし、建築計画や住宅に関するアドバイスが可能です。理想の家づくりを叶えたい方は、ぜひご利用を検討してみてはいかがでしょうか。