賃貸併用住宅を経営する上で、必ず納めなければならない税金の1つが固定資産税です。購入した翌年から発生するので、納税額がどのくらいになるのか関心がある方は多いでしょう。この記事では、賃貸併用住宅における固定資産税の基礎知識と償却資産の詳細に加えて、所得税などの税金についても解説します。

賃貸併用住宅における固定資産税の基礎知識

賃貸併用住宅を取得した場合、その年の収益にかかわらず納めなければならない税金の1つが固定資産税です。ここでは固定資産税の基礎知識として、以下の項目で解説します。

  • そもそも固定資産税とは何か
  • 固定資産の税率と課税対象資産

そもそも固定資産税とは何か

固定資産税とは、毎年1月1日時点での土地や建物、償却資産を固定資産として、その所有者に対し、市町村が固定資産の価格を元に算定して課税される税金のことです。

固定資産納税義務者固定資産の所有者
土地固定資産の所有者原則、登記簿や土地補充課税台帳に所有者として登録されている者
家屋原則、登記簿や家屋補充課税台帳に所有者として登録されている者
償却資産原則、償却資産課税台帳に所有者として登録されている者

引用元:地方税制度|固定資産税|総務省

固定資産の税率と課税対象資産

固定資産税と都市計画税の税率は表のとおりです。また、課税対象は固定資産税が土地、建物、償却資産に対して、都市計画税は市街化区域内の土地、建物が課税対象です。

科目税率課税対象資産
固定資産税1.4%土地、建物、償却資産
都市計画税0.3%土地、建物

(原則:市街化区域内)

引用元:地方税制度|固定資産税|総務省

通常、都市計画税は固定資産税と合わせて納税することになっています。

固定資産税の計算方法

固定資産税は、固定資産税評価額に1.4%として計算されます。

固定資産税評価額×1.4%

固定資産税評価額は、固定資産の価格を基礎として計算されます。実際に売買された金額ではないので注意しましょう。固定資産の価格は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて評価された額を知事あるいは市町村長が決定し、固定資産課税台帳に登録したものを指します。

また、土地・建物の価格は原則として3年に1度全件評価替えを行い、価格の決定が行われます。次回の改定は令和6年度の予定です。

引用元:地方税制度|固定資産税|総務省

賃貸併用住宅に適用される固定資産税の特例

固定資産税の特例は、賃貸併用住宅にも適用されます。大きな節税効果につながるので、理解を深めましょう。

ここでは、以下に示す4つの観点で解説します。

  1. 土地に対する固定資産税の軽減措置
  2. 新築建物に対する固定資産税の軽減措置
  3. 実際に固定資産税はどのくらい抑えられるのか
  4. 都市計画税の軽減措置

1.土地に対する固定資産税の軽減措置

賃貸併用住宅にかかる固定資産税のうち、土地に対しては「住宅用地の特例」があります。この特例は、固定資産税評価額を下げることができるという税額負担が軽減される仕組みのことです。

住宅用地の特例は、下表の通りです。

住宅用地の区分固定資産税都市計画税
小規模住宅用地

200平方メートル以下の部分

6分の13分の1
一般住宅用地

200平方メートルを超える部分

3分の13分の2

住宅用地の特例では、固定資産税額は以下のように計算されます。

●200平米メートル以下の住宅用地の場合

 

 固定資産評価額 × 1/6 × 1.4%

●200平米メートル以上の住宅用地の場合は「①+②」

 ①200平米メートルまで:固定資産評価額× 1/6 × 1.4%

 ②200平米メートルを超える部分:固定資産評価額 × 1/3 × 1.4%

なお、住宅用地の特例による軽減措置を受けるためには、住宅用地の申告が必要です。新たに土地を購入するような場合には問題ありませんが、所有していた土地に賃貸併用住宅を建てるなど、土地状況に「変更」がある場合において適用を受けるためには「固定資産税の住宅用地等申告書」の提出が求められます。

また、2024年3月31日までに住宅を建てることが求められます。軽減措置については、今後の税制改正により変更の可能性があるので要注意です。

参照元:税負担措置関係|総務省 

参照元:新築住宅に係る税額の減額措置|国土交通省

2.新築建物に対する固定資産税の軽減措置

新築住宅の特例があります。これは、以下の要件を満たす場合に、住宅部分の固定資産税が一定期間、減額されるというものです。

適用要件
  1. 床面積の2分の1以上が居住用であること
  2. 住宅の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下であること

新築住宅の特例は、下表の通りです。

 固定資産税額×1/2 
新築住宅3年間一戸あたり

120平方メートルまで

認定長期優良住宅5年間
3階建て以上の

中高層耐火建築物である

新築住宅

5年間
認定長期優良住宅7年間 

長期優良住宅とは、長期にわたり有効な状態で使用するための措置が講じられた住宅のことです。この住宅の場合、特例を受けるには「認定通知書」が必要になります。新築の翌年1月31日までに住宅のある自治体に提出しましょう。

先に紹介した住宅用地の特例と合わせると、固定資産税額が大幅に軽減されます。賃貸併用住宅では、家賃収入を得ていたとしても特例の適用に影響はありません。賃貸併用住宅の新築を検討していて特例を適用したい方は、建築プランが適用要件を満たしているか建築会社に相談してみてください。

参照元:税負担措置関係|総務省 

参照元:新築住宅に係る税額の減額措置|国土交通省

3.実際に固定資産税はどのくらい抑えられるのか

ここでは、固定資産税の特例を受けない場合と受ける場合でどのくらい違うのか、一例を挙げて計算します。

<土地・建物ともに3,000万円のケース>
  • 土地:3,000万円
  • 建物:3,000万円(150平方メートル)
  • 長期優良住宅ではない

土地の固定資産税評価額のおおまかな目安は、購入した価格の約70%です。ただし、実際には地域差があります。

土地の評価額:3,000万円×70%=2,100万円

建物の評価額:3,000万円×70%=2,100万円

▶特例の適用を受けない場合

固定資産税標準額×1.4%

土地:2,100万円×1.4%=29.4万円

建物:2,100万円×1.4%=29.4万円

合計98万円

▶特例の適用を受ける場合

土地:固定資産評価額 × 1/6 × 1.4%

建物:固定資産税額×1/2

土地:2,100万円×1/6×1.4%=4.9万円

建物:(2,100万円×1.4%)×1/2=14.7万円

合計19.6万円

適用前後の差額は、78.4万円

上記のように適用前後の差額が3年間にわたって生ずるとなれば、かなりの額を抑えることができます。少しでも税負担を減らすには、固定資産税の軽減措置も賢く活用することが重要です。

4.都市計画税の減税措置

都市計画税には、固定資産税と同じく減税措置があります。具体的な税率は、市町村により異なりますが上限0.3%です。

都市計画税の計算方法は以下の通りです。

固定資産税評価額×税率(0.3%以下)

都市計画税の軽減措置は、以下の内容です。適用期限は、2024年3月31日までとなっています。

  • 200平方メートルまで「固定資産税評価額の3分の1を軽減」
  • 200平方メートルを超える部分は、「固定資産税評価額の3分の2を軽減」

都市計画税の軽減措置に関して、申請の必要はありません。固定資産税と一緒に課税されます。納税通知書が送付された場合は、納付書にしたがって期日までに税金を納めましょう。

参照元:地方税制度|都市計画税|総務省

賃貸併用住宅における償却資産について詳しく解説

賃貸併用住宅における償却資産は、その経営のために所有している資産を指します。土地や建物と同じように固定資産税の課税対象となるため、理解を深めておきましょう。

ここでは、以下に示す4つの観点から解説します。

  1. 償却資産とは
  2. 償却資産を持っている人は申告が必要
  3. 償却資産の対象外となる資産
  4. 申告漏れがあった場合は?

1.償却資産とは

償却資産とは、土地、建物以外の事業用資産で、減価償却を行うものを指します。固定資産の1つであるものの、土地・建物とは別に考えるため、毎年1月1日時点で所有する償却資産を対象に課税されることから分かりにくいと感じる方も多いようです。

2.償却資産を持っている人は申告が必要

土地・建物に関する固定資産税は、市町村で課税し納付書が送られてきます。ところが、償却資産の固定資産税は所有者が1月31日までに申告しなければなりません。売却資産申告書という申告書式に記入し、市町村に対して申告します。近年では、電子申告(eTAX)を使った申告が主流です。その申告に基づいて、市町村が税額を計算して納付書を送付します。

ただし、償却資産を所有していない場合でも、償却資産がないという申告を必要とする市町村があります。例えば、東京都23区では「償却資産なし」ということで申告が必要です。

減価償却の対象となるもの

償却資産は、耐用年数と資産を使用した年数に応じて評価額が決まります。利用する年数が長くなるに応じて、評価額は徐々に下がっていくものとなります。持っている全ての償却資産の「評価額」の合計が150万円以上の場合に課税されるので、150万円未満の場合には、税金は課税されません。

賃貸併用住宅の償却資産は、屋外給排水設置、ガス管設備、植栽、取り外しできるエアコン、野外の照明設備などが対象になります。経営に関連し、なおかつ建物内部にないものが対象です。

注意点:建物の固定資産税に含まれる例外設備

一見、償却資産のようでも建物の固定資産税に含まれる設備があるので注意が必要です。建物に内蔵されている設備は、建物の付属設備として固定資産税に含まれるため、償却資産の対象外になります。具体的には、建物の中の給排水管、空調設備、屋内の照明器具、天井埋め込み型エアコンなどです。

建物か償却資産なのか区分しにくいケースがあります。固定資産税と償却資産を間違えると、重複して課税されてしまうので注意が必要です。判断に迷う場合は、市町村の償却資産に関する窓口あるいは償却資産に詳しい税理士などに相談しましょう。

償却資産の免税点

全ての償却資産の「評価額」の合計が150万円以上の場合に課税されるので、150万円未満の場合には、税金は課税されません。購入時に課税された後は、耐用年数に応じて減価償却が行われ、徐々に下がっていきます。固定資産税評価額が合計150万円未満になると免税になるというわけです。

参照元:固定資産税で使用する主な申告|総務省 

参照元:主な減価償却資産の耐用年数表|国税庁

3.償却資産の対象外となる資産

少額の減価償却資産の一部で、償却資産の対象外となる資産があります。少額の減価償却資産は、10万円未満もしくは使用期間が1年以内のものです。一括償却資産は、20万円未満で3年かけて減価償却を行うものが該当します。

 10万円未満10万円以上

20万円未満

少額の減価償却資産申告対象外 
一括償却資産

(3年)

申告対象外

以下に記す資産も償却資産の対象外です。

  • 土地・建物:固定資産税が課税されるため
  • :自動車税や軽自動車税が課税されるため
  • 無形固定資産・繰延資産:ソフトウェアなど法律上の権利や物理的実体のない資産のため
  • 家屋と構造上一体となる建物付属設備

参照元:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁

4.申告漏れがあった場合は?

償却資産の申告漏れがあった場合は、その資産が課税対処となる年度(最長5年)まで遡って課税されます。また、正当な理由なく申告しなかった場合や虚偽申告が認められた場合には、罰金や過料を科せられることもあるため、税理士に相談するなどして、できるだけ漏れなく1月31日の期限までに正しく申告しましょう。

固定資産税以外に賃貸併用住宅にかかる税金と節税

賃貸併用住宅を取得すると、取得すると固定資産税以外にもいくつかの税金が発生します。経営する上で、どのような税金がかかるのか、軽減措置といった節税策も合わせて知っていきましょう。

ここで解説する税金の種類は、以下の3つです。

  1. 所得税
  2. 不動産取得税
  3. 相続税

所得税 

賃貸併用住宅の経営により家賃収入(不動産所得)を得ると、その額に応じて所得税を納めなければなりません。当然ながら、家賃収入が増えると所得税も高くなります。しかし、貸部分にかかる必要経費は、確定申告の際に家賃収入の総額から控除できることから、不動産所得は小さくなり、結果として所得税の減額が期待できます。

賃貸併用住宅の主な必要経費は、以下の通りです。

  • ローン返済額の利息部分
  • 租税公課:固定資産税、都市計画税、不動産取得税、登録免許税、印紙税など
  • 損害保険料:火災保険、地震保険
  • 修繕費:建物、設備等の修理代金
  • 減価償却費:設備などの減価償却分
  • 借入金利子:口ーンの利息額
  • 水道光熱費:共用スペースの水道・電気料金など

また、家賃収入の総額から必要経費を差し引いて赤字となった場合、給与所得と合算できるため所得税の節税が可能です。その際、源泉徴収の一部に関して還付を受けることができます。したがって、賃貸併用住宅は一般的な戸建住宅よりも所得税を節税しやすいといえるのです。

不動産取得税

不動産取得税は、賃貸併用住宅を取得した時に1回だけ課される税金です。

税額は以下のように計算されます。

固定資産税評価額×3%税率)

税率は原則4%ですが、2024年3月31日までに土地・建物を取得した場合に限り3%に引き下げられています。加えて、土地は固定資産評価額が2分の1となり、適用されるのは2024年3月31日までです。

不動産取得税は、新築の住宅で床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下であれば、1戸あたり1,200万円の控除を受けることができます。賃貸併用住宅で賃貸部分の戸数が認められれば、自宅と賃貸部分の戸数分が控除となり、大きな節税効果を得ることができるでしょう。不動産取得税の詳細は、税理士など専門家への相談がおすすめです。

参照元:不動産取得税|総務省

相続税

被相続人が所有していた賃貸併用住宅を相続すると、相続税が課されます。その際、場合によっては相続税を支払うために住宅を売却しなければならないケースもあるかもしれません。土地を相続する場合、相続が開始した時点で被相続人と一緒に暮らしていたなど一定の要件を満たすことで、土地の相続税評価額が最大80%減額できる制度があります。その制度が「小規模宅地等の特例」です。

小規模宅等の特例の種類は、以下の4つです。

土地の種類用途限度面積減額割合
特定居住用宅地等被相続人などが居住していた宅地330平方メートル80%
特定事業用宅地等被相続人などが事業用として使用していた宅地400平方メートル80%
特定同族会社事業用宅地等特定同族会社の事業用として使用していた宅地400平方メートル80%
貸付事業用宅地等相続人などが貸付事業用に使用していた宅地200平方メートル50%

賃貸併用住宅では「自宅部分は特定居住用宅地等・賃貸部分は貸付事業用宅地等」として、小規模宅地等の特例を受けることができます。賃貸部分の減額割合は50%となりますが、それでも相続税の負担を大きく減らせることにつながるでしょう。

参照元:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

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固定資産税など税金の軽減措置は、固定資産税評価額や住宅用地の面積、建物の床面積と密接な関係があります。賃貸併用住宅の建築には、税金はもとより住宅の規模や予算など様々な視点での検討が必要です。賃貸併用住宅の建築を考えている方は、家づくりのプロに相談してみてはいかがでしょうか。

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最後に

この記事では、賃貸併用住宅における固定資産税の基礎知識と償却資産の詳細に加えて、所得税などの税金についても解説しました。

固定資産税は、賃貸併用住宅を保有している間ずっと納めなければならない税金の1つです。賃貸併用住宅を検討するにあたり、固定資産税などの税金とその節税の仕方について理解を深めることが大切です。税金に関する知識を身につけ、万全の対策で収益の増大を目指しましょう。