賃貸併用住宅を3階建てにすることで、限られた土地を有効に活用できるなどのメリットがあります。都市部のように地価が高い地域では、3階建てを検討する方も多いでしょう。この記事では、賃貸併用住宅を3階建てにするメリットとデメリット、建てるときの注意点について解説します。

賃貸併用住宅を3階建てにするメリット

賃貸併用住宅を検討する上で、都市部のように地価の高い地域で限られた土地では、3階建てにするという選択肢もあります。賃貸併用住宅を3階建てにするメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。そのメリットとして、以下の5点について解説します。

  1. 狭い土地を有効活用できる
  2. 2階建てより自宅と賃貸スペースのパターンが増える
  3. 階層ごとに区切るのでプライバシーが守られる
  4. 同じ床面積の2階建てより戸数を増やせる
  5. 採光や通風を確保できる

1.狭い土地を有効活用できる

賃貸併用住宅を3階建てにする最大のメリットは、限られた土地を有効活用できることです。限られた土地の中で縦に階層を増やすことで、床面積を十分に確保できます。

例えば、建ぺい率や容積率にもよりますが、床面積36坪の総2階の賃貸併用住宅を建てる場合には1階部分が18坪、3階建てでは1階部分が12坪となり、敷地を占める1階部分が少なくて済みます。そのため、狭小地でも物理的に大きな建物を建てることが可能となるのです。

つまり、利便性の高いエリアで狭い土地を所有または取得している方ほど、3階建ての賃貸併用住宅という選択肢が有効になるといえます。狭小地でも十分な広さの住宅を確保できるだけでなく、立地の良さを強みにできるため賃貸の募集もしやすくなります。

2.2階建て比べ自宅と賃貸スペースのパターンが増える

3階建てであれば、2階建てより1フロア分が増えるため、自宅と賃貸スペースのパターンが増えることがメリットといえます。特に、賃料の低い1階を自宅あるいは駐車スペースにできるのが3階建ての魅力です。もちろん、3階部分を自宅とし、2階を賃貸・1階を駐車スペースというようにフロアごとに異なる空間として活用することもできます。

収益性を重視するなら2フロア分を賃貸とするのも良いでしょう。また、二世帯など同居する人数に応じて、自宅部分を2フロア分にしたり、1フロアだけ賃貸と自宅部分を共有したりといったことも可能です。

3.階層ごとに区切るのでプライバシーが守られる

階層ごとに区切るので、賃貸部分と自宅部分の独立性が高く、プライバシーが守られるという点も賃貸併用住宅を3階建てにするメリットです。3階建てであれば2階建てよりもスペースに余裕があるため、玄関を別々にする、階段を共有しないなど、入居者とオーナーのスペースを完全に区切るといったプライバシーの確保を重視した間取りを作りやすくなりま

また、2階は上下階への配慮が必要になるので、1階をオーナーの自宅とすることも可能です。1階をオーナー宅・2階と3階を賃貸スペースとすることで、上階への生活音が伝わりづらくなる上に、入居者と顔を合わせる機会が減ります

4.同じ床面積の2階建てより戸数を増やせる

3階建ての賃貸併用住宅は、2階建てより戸数を増やせるというメリットがあります。実際には容積率にもよりますが、ワンフロア増えた分を賃貸とすることで最大で2階建ての2倍程度まで増やすことが可能です。全ての住戸の同じ広さに揃えたり、広さの違う住戸を組み合わせたりすることもできます。結果として、家賃収入の増加につながるため、3階建て賃貸併用住宅はおすすめです。

5.採光や通風を確保できる

3階建ての賃貸併用住宅は、2階建てに比べると隣家と距離が近くても、採光や通風を確保できる点が3階建てならではのメリットです。周囲に2階建ての建物が多ければ、3階建ての2階より上の部分は日当たりが良くなります。

都市部では隣家との距離が1メートル以下となることも珍しくありません。隣家と接近していると湿気がこもりやすくなるため、採光や通風の確保が大事になります。窓を上手に配置することで、日当たりや風通しが良くなります。

賃貸併用住宅を3階建てにするデメリット

賃貸併用住宅を3階建てにするメリットを紹介しましたが、魅力的な3階建てにもデメリットがあります。そのデメリットは、以下の5つです。

  1. 階段の昇り降りが負担になる
  2. 大きな家具の搬入が難しくなりがち
  3. 1階と3階の温度差が大きい
  4. 構造計算が必要になる
  5. 2階建てより建築コストが高くなる

1.階段の昇り降りが負担になる

3階建ての賃貸併用住宅では、階段の昇り降りが負担になる点がデメリットです。自宅部分が3階にある場合は、日常的に3階分の昇り降りが発生します。急いでいる時や重い荷物を持っている時などは負担に感じることも多くなるでしょう。特に、狭小地の3階建ては階段が狭く急な傾斜になりがちです。

エレベーターを設置するのも1つの方法ですが、エレベーターは設置費用はもちろん、固定資産税も高くなります。階段の昇り降りを考慮し、自宅部分をどこにするのかを検討しましょう。

2.大きな家具の搬入が難しくなりがち

3階建ての賃貸併用住宅は、大きな家具の搬入が難しくなりがちです。階段での搬入が困難なケースでは、クレーン車での作業となります。作業車両が入れば問題ありませんが、周囲にさえぎるものがあると、クレーンで3階まで吊り上げるのが困難な場合も少なくありません。間取りを決める段階から、窓の大きさやベランダなど搬入しやすい配置を考えておきましょう。

3.1階と3階の温度差が大きい

3階建てにすると、夏は3階が暑くなり冬は1階が寒くなります。隣家との距離が近いと日当たりが悪くなるのに対して、3階は周辺に高い建物がなければ日当たりが良いからです。日当たりの良い場所に大きな窓を設置すると、どうしても外気の影響を受けやすくなります

過ごしやすくするためには、屋根と床下の断熱性に加えて、窓の大きさや位置、複層ガラスの窓にするといった点を重視しなければなりません。全室空調システムを導入するなど、1階から3階まで空気の流れが良くなるような工夫が必要です。

4.構造計算が必要になる

3階建ての建物の場合、構造計算が必要になります。1階および2階建ては簡易計算なので、その分の費用が不要です。現状の建築基準法では、3階建ての住宅は構造計算をしないと建てることができません。構造計算をするので安心感はありますが、費用が特別にかかってしまうことがデメリットとなります。

構造計算とは

構造計算とら建物自体の重さ、地震、強風、積雪などの加重によって発生する応力や建物の変形を計算することを指します。計算結果に基づいて、構造物(柱、梁、壁、床、屋根、基礎)の安全性を確認します。

5.2階建てより建築コストが高くなる

賃貸併用住宅を3階建てにすると、2階建てよりも建築コストが高くなる場合が多くなります。その理由は、3階建ては2階建てと異なる構造を必要とすることがあるからです。例えば、鉄骨造の2階建てでは軽量鉄骨でも、3階建ては重量鉄骨に制振システムとなる場合があり、構造の違いによって建築コストが高くなりがちなのです。

構造の他にも、賃貸戸数が増えれば水回りなどの設備も増えます。建物が高くなれば、配管の長さも増え、階段も2階建てより1つ多くなるといった具合で、建築コストが高くなるわけです。

また、同じ床面積の2階建てと比べて3階建ては外周が大きくなることから、外壁が長く大きくなります。ゆえに、外壁材の耐久性や防水性能、壁内結露対策を高めるとコストアップにつながるのです。このように2階建てより建築コストが高くなるため、3階建ての賃貸併用住宅の実績がある建築会社でないと、予算に合った適正なプランニングができない可能性が高くなるといえます。

3階建て賃貸併用住宅を建てる際の注意点

3階建て賃貸併用住宅を建てるときには、注意点がいくつかあります。特に、把握しておきたいのは以下の3点です。

  1. 高さ制限など土地にかかる制限を知っておく
  2. 賃貸部分が増えると住宅ローンが使えない場合がある
  3. 建て替えの場合は仮住まいの出費を考えておく

1.高さ制限など土地にかかる制限を知っておく

3階建て賃貸併用住宅を建てる際の注意点として、あらかじめ高さ制限など土地にかかる制限について知っておく必要があります。土地を有効活用したいといっても、思うままに建てて良いというわけではありません。賃貸併用住宅を3階建てにできるかどうか判断するには、法律的な制限が複雑に課されるので注意が必要です。

ここでは、主な制限について解説します。

▶用途制限

それぞれの地域で、第一種低層住居専用地域から工業専用地域まで13の地域に分けられています。住居系と非住居系では、法律的な制限が異なります。

住居系地域非住居系地域
商業系地域工業系地域
第一種低層住居専用地域

第二種低層住居専用地域

第一種中高層専用地域

第二種中高層専用地域

田園住居地域

準住居地域

近隣商業地域

商業地域

準工業地域

工業地域

工業専用地域

上記の13地域で、賃貸併用住宅が建てられないのは工業専用地域のみです。しかし、用途制限だけでは3階建てできるかどうかを確定することはできません。次に紹介する高さ制限が絡んでくるからです。

▶絶対高さ

低層住居(第一種低層住居専用地域と第二種低層住居専用地域)のみに、定められた高さ制限です。この地域の建物の高さは、10メートルあるいは12メートルの絶対高さの制限があります。高さ10メートル以下であれば、3階建て住宅の建築が可能です。

▶高度地区

都市計画法に基づいて、自治体が建物の高さの制限を定めている地区です。例えば、東京都港区では、第1種高度地区から第3種高度地区が定められています。

  • 第一種高度地区:北側隣地境界5mの高さから1:0.6の傾斜で建てる
  • 第二種高度地区:北側隣地境界5mの高さから1:1.25の傾斜で建てる
  • 第三種高度地区:北側隣地境界10mの高さから1:1.25の斜度で建てる

第一種高度地区は2階建てまでとなり、3階建ては建てられません。第二種高度地区は3階建ては可能ですが、隣家と一定の距離が必要で3階部分に斜線がかかってしまうケースが多くなります。3階建てが問題なく建てられるのは、第三種高度地区です。

東京都で建物の高さの制限を定めている地区を調べるには、都市整備局が後悔している都市計画情報等インターネット提供サービスが便利です。その他の地域については、建築予定地を管轄する自治体に問い合わせてみてください。

▶日影制限

冬至の日を基準とし、隣地に対して日照を確保するための規定です。日影制限により、建物の高さや形状に影響が出ます。

第一種低層住居専用地域および第二種低層住宅専用地域の日影制限は、下記のいずれかに適用されます。

  • 軒高が7メートルを超える建物
  • 3階以上の建物

それらの地域では、そもそも3階建てが建てられないことや、3階部分の形状が当初のプランと変更になることが起こり得ます。3階建てを検討する場合は、建築会社や設計士に相談しましょう。

▶道路斜線制限

道路の日照、通風の確保を確保するための規定です。全ての用途地域に適用され、用途地域によって傾斜の勾配に違いがあります。

  • 住居系地域:前面道路の反対側の境界線から1:1.25の傾斜内に建てる
  • 非住居系地域:前面道路の反対側の境界線から1:1.5の傾斜内に建てる

住居系地域の方が非住居系地域に比べて、道路斜線の制限が厳しくなっています。そのため、住居系地域に3階建て併用住宅を建てると、建物の形状への影響が大きくなるのです。

また、道路から離れて建築すれば、対面側の斜線も同じ距離だけ下がった位置から斜線がかかります。したがって、前面道路に建物を近づけて建てるのか、もしくは少し離れて建てるのかは、土地の形状や道路の幅で検討する必要があります

これらの制限は設計士でなければ、正確に把握するのは難しい内容です。知識として身につけておくことで、有意義な打合せが可能になるでしょう。3階建ての詳細な検討は、設計士に依頼することをおすすめします。

2.賃貸部分が増えると住宅ローンが使えない場合がある

賃貸併用住宅は、住宅ローンで融資を受けられます。しかし、3階建てにした場合に「賃貸部分の床面積が建物全体の50%を超える」と、住宅ローンの住宅要件から外れるため注意しましょう。収益性を重視した間取りの賃貸併用住宅は、不動産投資ローンを利用することになるためです。

不動産投資ローンは、住宅ローンに比べて金利が高い上に返済期間は20〜30年と短いという特徴があります。賃貸併用住宅は、自宅部分は収益を生み出さないため、限られた家賃収入で返済するには、利息の支払いを含めて負担は大きくなるでしょう。

住宅ローンによる融資を検討しているなら、自宅部分の床面積が50%以上になるような設計が必要です。収益性を高めるのであれば、不動産投資ローンを念頭に入れ、ファイナンシャルプランナーに相談しながら慎重に返済計画のシミュレーションを行うことをおすすめします。

不動産投資ローンについても確認

不動産投資ローンとは、アパートやマンションの建築や購入の際に利用できる融資のことです。家賃収入は常に安定しているわけではないため、住宅ローンに比べると貸し倒れのリスクが高いと考えられています。したがって、住宅ローンより金利を高く、なおかつ返済期間も短く設定されているのです。新築であっても融資審査が通らないケースがあり、立地や収益性などの評価が重要になります。

3.建て替えの場合は仮住まいの出費を考えておく

3階建ての賃貸併用住宅は、2階建てと比較すると完成までの期間が長くなります。通常、2階建ての注文住宅で工期が6カ月かかることも例外ではありません。賃貸併用であれば、さらに長くかかると考えておくと良いです。

そのため、建て替えの場合は賃貸住宅などの仮住まいの家賃、光熱費、引越し費用といった出費があることを覚えておきましょう。それらの出費をできるだけ少なくするのであれば、工期の短い建築会社を選ぶのも1つの方法です。なお、建物の構造や工法でも工期は変わってくるので、事前の確認が必要になります。

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3階建ての賃貸併用住宅の建築を考える時、希望の地域で理想的な土地を探すのは難しいことです。また、収益性という点で賃貸住戸の間取りや自宅を何階に設定するかも重要なポイントになります。とはいえ、自分で土地にかかる制限を調べたり、建築会社を探したりするのは手間と時間がかかり大変です。

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最後に

この記事では、賃貸併用住宅を3階建てにするメリットとデメリット、建てるときの注意点について解説しました。3階建ての賃貸併用住宅は、狭い土地を有効活用でき、自宅と賃貸スペースのパターンが増えるなど様々なメリットがあります。その一方で、構造計算しないと建てられないといったデメリットも見逃せません。

高さ制限など土地にかかる制限をすべてクリアする必要があるため、建築会社の選定は賃貸併用住宅や3階建て住宅に関する実績があるかどうかが重要になるといえるでしょう。ぜひ、sumuzuで複数の建築会社の建築プランを比較検討してみてはいかがでしょうか。