二世帯住宅で判断に困ってしまうことの一つに、「誰の名義にするか」という点が挙げられます。

そもそも誰の名義にすることができ、また名義が誰であるかによって何が変わるのでしょうか。
それらを知らないまま名義を決めてしまうと、思わぬ不利益を被ってしまう可能性すらもあります。しかし、必要な知識を身につけておけば、様々な制度による優遇を受けられる場合もあります。

当記事では、状況に応じて二世帯住宅における適切な名義に決定できるよう、詳しく解説していきます。

二世帯住宅の名義には3パターンある

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二世帯住宅における「名義」とは、その住宅が誰のものであると書類上(または法的)に記録されているか、ということを意味します。

登記とは、「不動産登記法や商業登記法といった法律上の手続きによって保護・保証される、行政における仕組みの一つ」です。

すなわち「〇〇の名義」という場合、「〇〇の名義で登記されている」ということを示すとともに、それらは登記法によって守られており、ある程度の拘束力が生じるものであると言えるでしょう。

そのなかでも、二世帯住宅において誰の名義による登記であるかは、主に下記の3つのパターンで示すことができます。

登記方法

誰の名義か

単独登記親または子の単独の名義
共有登記親と子の共同名義
区分登記親世帯が居住するスペースは親の、子世帯が居住するスペースは子の名義

参考:不動産登記法

単独登記

単独登記とは、住んでいるのは二世帯ですが、親か子、いずれか片方の単独名義になっていることを意味しています。

二世帯住宅の場合、多くは親世帯のほうが資産をもっているケースが多いものです。誰の名義であるかは、誰が費用を多く出したかと密接に関係しています。そのため二世帯住宅における単独登記といえば、親の名義である場合が多いでしょう。

これらは特に、居住スペースを親世帯と子世帯でまったく分けない、完全共有型の二世帯住宅で多く見られる名義のパターンです。

共有登記

共有登記とは、その家の名義が親世帯と子世帯で共有されていることを意味します。
二世帯分が住んでいるので、購入資金を出し合い、名義も二世帯で共有するという考え方です。

これらは特に、居住スペースを親世帯と子世帯で一部分を共有する、一部共有型の二世帯住宅で多く見られる名義のパターンです。

区分登記

区分登記とは、その家のスペースを親世帯が使う居住スペースと子世帯が使う居住スペースを明確に区切り、親世帯が使う場所は親名義、子世帯が使う場所は子名義にすることを意味しています。

二世帯住宅は一戸のなかに二世帯が住んでいるものですが、一戸の中をまるで二戸あるかのように明確に区切る、完全分離型という住宅の建築形式があります。

基本的には、この完全分離型の二世帯住宅で採用される名義のパターンです。

区分登記がほかの単独登記と共有登記と大きく異なる点は、親から相続しなくても、子世帯は子世帯の居住スペースを確保できるという点があります。
これは完全分離型かつ区分登記における大きな利点でもありますが、相続時に適切に処理しなければトラブルの原因にもなります。

建物が建つ土地の名義も関係する

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建物に関する名義以外にも、土地に関する名義も存在しているため、この点についても必ずおさえておきましょう。

住宅は共有登記や区分登記、あるいは子の単独登記であるものの、土地は親の名義である、という場合もありえます。

ある土地に建つ住宅に住むためには、その土地の所有者の許可も必要になります。
そして、住宅の価値はそれが建つ土地の価値と密接に関わっているうえに、土地を含めた評価額で相続税などの計算がなされます。

二世帯住宅の名義トラブルを考える前に知っておきたいこと

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二世帯住宅の名義に関してトラブルについて耳にするものの、いくつかメリットや税制面、今後のライフスタイルを考える上での特徴があります。主な内容は以下の通りです。それぞれについて解説します。

  1. 相続税で優遇される
  2. 区分登記の場合は相続税優遇を受けられない
  3. 二世帯住宅はすぐに現金化しにくい

1.相続税で優遇される

二世帯住宅にする際の大きな特徴として、相続税で優遇される可能性があることが挙げられます。

親世帯の単独登記である場合、あるいは共有登記である場合、死去などに関連する相続が発生したとき子世帯が今住んでいる二世帯住宅に住み続けるためには、相続税を支払って相続しなければなりません。
しかし、現金や現金化できる資産がない場合は相続税を支払うことができず、「今住んでいるはずの家に、住み続けることができなくなる」という可能性が生じてしまいます。

そのようなことを防ぐため、親世帯の単独登記または共有登記で相続が発生する際、「小規模宅地の特例」を受けられる可能性があります。

「小規模宅地の特例」を受けることによって、土地の評価額が80%減額になります。これによって大きく相続税を減らすことができ、これまで通り、子世帯が住んでいた家に住み続けられる可能性が高くなります。

参考:国税庁「〔措置法第69条の4《小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例》関係〕

またこの制度を活用し、相続税対策としてあえて二世帯住宅を選んでいる、という方もいるようです。

2.区分登記の場合は相続税優遇を受けられない

相続税を減らせる優遇を受けられる「小規模宅地の特例」ですが、残念ながら区分登記の場合は受けることができません。

なぜなら、「小規模宅地の特例」は相続税の関係で子世帯が今住んでいる家に住めなくなることを防ぐ目的もあるからです。
区分登記の場合、すでに子世帯の名義である居住スペースがあるため、今住んでいる場所に対する相続が発生しません。
同居を伴う相続が発生しないため、「小規模宅地の特例」を受けることができないのです。

ただし区分登記が選ばれることが多い完全分離の二世帯住宅は、一戸の中に二戸あるようなものであると見なされています。そのため、区分登記では「二戸である」として考えられるため、住宅ローン減税や不動産取得税の軽減措置を二戸分受けることができる場合があります。

3.二世帯住宅はすぐに現金化しにくい

二世帯住宅の基本的な知識として覚えておきたいのが、中古住宅としてすぐに買い手がつかないため、すぐには現金化しづらいという点が挙げられます。

多くの二世帯住宅は自身の生活スタイルに合わせた施工を行ったり、間取りにしていたりすることから、買い手のニーズと必ずしもマッチするケースは少なくないでしょう。
また、長く住み続け築年数が古くなっている場合は上物の価値が大きく下がることから、更地にした方が売却しやすいケースも少なくありません。

二世帯住宅の名義に関連して起こるトラブル

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二世帯住宅の名義に関連するトラブルについては、以下のことが挙げられます。それぞれについて解説します。

  1. 親世代の単独や共有だと死別時の相続が面倒になることも
  2. 子世代の名義にすると贈与税がかかることがある
  3. 土地が親の名義だと死別時の相続がさらに複雑に
  4. 同居していた子世代のほかに相続すべき子がいると相続問題に発展することも

1.親世代の単独や共有だと死別時の相続が面倒になることも

二世帯住宅の名義において発生する大きなトラブルといえば「相続」です。
なかでも、住宅そのものの名義に親が関係しており、それを放置しておくとトラブルにつながりやすくなります。

住宅が単独登記や共有登記である場合、子世帯が住んでいるのが親の名義の住宅でもあるという状況になります。
名義をもつ親と死別してしまった場合、きちんと相続しなければその住宅に住み続けることはできません。

前述した税制の優遇を受けられる可能性もありますが、それらの申請を行う手間があります。そしてそれでも相続税は発生します。
さらには、しっかりと調べておかないと実は優遇を受けられないことが後から判明し、想像以上の相続税を支払う必要が生じることもあり得ます。

現金が足りない場合に相続することができず、「これまで住んでいたはずの家に、住み続けられなくなる」という大きなトラブルに発展してしまう可能性があるのです。

2.子世代の名義にすると贈与税がかかることがある

親と死別した際に親が名義に関わっていると、相続関連で面倒なことがあるというのは、前述したとおりです。

それでは、親が存命のうちに、早めに子の名義に書き換えてしまえばいいと考えるかもしれません。
しかしその場合、贈与税が発生する可能性があるのです。

二世帯住宅の建築費を、子世帯だけでまかなうことは難しいのではないでしょうか。
建築費を親世帯と子世帯で半々にしたのなら、両者の共有物となるため、共有登記が妥当となります。建築費の割合(負担したコスト)に応じた名義にする必要があるためです。

建築費を親世帯が出しているにも関わらず、住宅を子世帯の名義にするなら、「建築費を贈与した」とみなされるのです。そのため、贈与税がかかることがあります。

これを知らずに初めから住宅を子の名義にしたり、親の名義から子の名義に書き換えようとすると、思わぬ費用が発生してしまう可能性があるのです。

3.土地が親の名義だと死別時の相続がさらに複雑に

土地の名義が親のものである場合、いくら住宅が子の名義であっても、相続税を支払わなければ相続できない可能性があります。

その住宅の価値というものは、住宅だけでなく土地も合わせた評価額で算出されます。そのため、土地は親・子のいずれの名義か、住宅は親・子のどちらの名義かの組み合わせによって、相続税が思っていたよりも高額になってしまうというケースもあります。

4.同居していた子世代のほかに相続すべき子がいると相続問題に発展することも

親と二世帯住宅で同居していた子には、税制など家の相続に関して優遇があります。

しかし、子世代は、同居している者も同居していない者も、平等に相続の権利があります。そのため、同居していない子がいた場合、上記の差による不公平感から相続問題に発展するケースも少なくありません。

そうなったとき、まずは親の資産である住宅の価値を現金に換算し、そのうえで平等に子の数で割り、子一人がいくらの金額に相当する資産を相続できるかを算出します。
そして二世帯住宅に住み続けたい子世代が、ほかの子に対して算出された相続金額を支払うことで解決するというケースもあります。
結果的に、資産価値としては同じだけ相続することになるのですが、住宅に住み続けたい子は一時的に大量の現金を用意する必要があります。
これができない場合、今住んでいるはずの住宅を手放さなければならないという問題に直面してしまう可能性もあるでしょう。

二世帯住宅の名義トラブルを防ぐ方法

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二世帯住宅の名義に関するトラブルを防ぐには、以下の方法が考えられます。

  1. 事前に親と子たちの間で書面を交わしておく
  2. 土地も住宅も子の単独登記にしておく

1.事前に親と子たちの間で書面を交わしておく

もっとも重要かつ効果的な解決策が、関係者間で相談しておくことです。できれば弁護士などの法的な根拠を相談できる人を交えて、書面を交わしておくようにしましょう。

親と同居する子は介護も含めて親の面倒を見ることになりますし、親としても同居してくれる子に資産の多くを相続させたいと考えるものです。
問題は、同居していない子がそのことを知らなかったり、不公平感を抱いてしまうことです。

あらかじめ話し合って相続の割合を決めておいたり、相続の方法についても相談しておきましょう。
これを行って書面を残しておくだけでも、多くのトラブルを未然に防ぐことができます。

2.土地も住宅も子の単独登記にしておく

特に名義に関する相続トラブルを防ぐためには、土地も住宅もすべて子の単独所有にし、子の名義にしておくという手もあります。

税制の優遇を受けられなくなったり、贈与税が発生してしまったりする可能性もありますが、いざ相続の段階で大きなトラブルにつながることを防ぐことができます
こうしておくことで、いざ両親の身に何かあったとしても、子世帯は問題なく今住んでいる住宅に住み続けることが可能です。加えて、相続も生前に解決できているため、家を手放したりといった問題に巻き込まれる可能性も少なくなるでしょう。

土地も住宅もすべて子の名義にする、というのは少しハードルが高く、簡単にできない家庭もあるでしょう。その場合は、いずれか一つでも子の名義にするなどしておけば、トラブルが発生したとしても軽減できます。検討しておいて損はないでしょう。

二世帯住宅の名義について相談できる会社を選ぶことも

これまで解説してきたとおり、二世帯住宅の名義にはいくつかのパターンがあり、場合によってはトラブルに発展してしまうこともあります。

そのため、自分たちに適切な名義はどれで、またトラブルを防ぐにはどうすべきか、相談しながら二世帯住宅を建築するという方法がおすすめです。
その際に活用したいのが、株式会社ランディックスが運営する注文住宅マッチングサービス「sumuzu(スムーズ)」です。

コーディネーターに相談できる

sumuzuが提供するサービスの一つが、建築会社とのマッチングサービスです。
審査を通過した、信頼できる建築会社やハウスメーカーなどが登録されています。(建築会社一覧)。

sumuzu(スムーズ)は、相談者の家づくりを中立的な立場からサポートする専門家集団です。
工務店・ビルダー・ハウスメーカー・設計事務所の選び方、相談者が抱える悩みや希望合わせた間取り計画から、工事見積りの減額調整まで、家づくりに関するすべてについて相談できます。

コーディネーターに相談する時点で、自分たちの希望と予算感を伝えながら、名義についても相談してみてはいかがでしょうか。
建築会社や不動産会社のなかには、内部に法律の専門家であるファイナンシャルプランナーを抱えているところもあります。

自分たちに最適な解決策を教えてくれる会社に出会うきっかけになるのではないでしょうか。

最後に

本記事では、二世帯住宅の名義について、その形式やそれぞれの特徴について解説してきました。
どの名義の形式が良いか、誰の名義にすべきかということは、一概には言い切れません。しかし、置かれた状況によって適した名義の形式があるのは事実です。
また、やり方によっては制度の優遇を受けられる場合もあれば、損をしてしまう場合すらもあります。
ぜひこの記事を参考にしつつ、どうするのが適切か検討してみてください。

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