渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
この記事の監修者
渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
二世帯住宅は中古で売れない、という話を聞いたことはあるでしょうか。しかしその理由を知れば、いざというときでも売れやすい住宅にしておくことができます。当記事では、売れにくいとされる理由から二世帯住宅を中古で売るコツまで、詳しく解説していきます。
二世帯住宅が中古で売りづらいと言われていることには、一定の根拠が存在しています。
なぜ二世帯住宅が中古で売りづらいとされているのか、主な理由について解説します。
まず最初に押さえておきたいのは、二世帯住宅は中古物件として高額になりがちという点です。その理由として、二世帯住宅は基本的に一般的な一戸建てと比べて大きく、元々の建築費が高いためです。
たとえ高額であっても、買い手が妥当な価格だと判断すれば、それが適正な価格ともいえます。二世帯住宅が売りづらくなるのは、売り手が建築費の多くを回収しようと加味した分、現実的な価格からかけ離れてしまうこともあるのです。
2019年に行われた国民生活基礎調査によると、単独世帯や夫婦のみの世帯が増加傾向にあり、核家族化している現状であることが分かります。この結果から、二世帯住宅の需要そのものが比較的少ないと考えられるでしょう。
引用元:令和3年国民生活基礎調査(令和元年)の結果からグラフで見る世帯の状況|厚生労働省政策統括官
二世帯住宅には、いくつかの種類が存在し、それぞれの特徴から買い手のニーズに合いにくいことが中古の二世帯住宅が売りづらい理由として挙げられます。
核家族世帯が増加している現状を紹介しましたが、核家族世帯にとって、二世帯分の広さを希望する人は少ないかもしれません。二世帯住宅のようにいくつもの部屋数や水回りといった設備の必要性が低く、二世帯で住むのに適した間取りは使いにくいといえます。
特に、一部共有型や完全分離型は水回りなどの設備が2つずつあるため、交換や修繕が必要になることが多くなる点が懸念される点です。一方で、完全共有型は「広い一戸建て住宅」として売り出すことが可能になります。
二世帯住宅は、その住宅に住まう人の好みや利便性にこだわって建てられるケースがほとんどです。そのため、別の家族が暮らすとなると、どうしても住みにくさがある点は否めません。しかし、二世帯住宅を探している人にとって、新築で建てるには建築費が高額になりがちなため、中古市場に魅力を感じられることもあります。多少は使いにくさがあったとしても、築浅の中古二世帯住宅や汚れや破損の少ない二世帯住宅は、二世帯での暮らしを検討している方の需要につながるともいえるでしょう。
二世帯住宅が売却されている場合、買い手がネガティブな要因を感じ取ってしまい、なかなか売れないということがあります。二世帯住宅では、高齢の親との死別を想起する人は少なくありません。しかし、二世帯住宅のネガティブな要因はそれだけではありません。
例えば、立地条件では以下の点で確認されれば、ネガティブな要因となります。
これらの立地条件は、後から直せるものとどうにもならないものがあり、なかなか売れないのです。
また、再建築不可物件であれば、敬遠されるポイントになるでしょう。再建築不可物件とは、建物を解体した後に新たな建物を建築できない土地のことです。この物件は住宅ローンが組めない可能性があります。そのため、現金もしくはノンバンクでの融資になることから、買い手の資金に影響しすぐには売れないのです。
二世帯住宅を中古で売却する際の流れについて確認しておきましょう。売却までの流れを理解しておくことで、どのタイミングで何をすべきかについて分かるため、スムーズに進めることができます。
二世帯住宅を売りに出す際の前提として、「自分に売りに出せる権利があるか」を明確にしておかなければなりません。当然ながら、自分の名義でない物件を勝手に売りに出すことはできないからです。
登記方法により、同居する家族の合意が得られなければ売却できないケースがあるため確認が必要となります。
二世帯住宅の場合、以下のような名義のパターンが考えられます。
自分以外が所有している場合は相続したり、名義を譲り受けるなどをしなければなりません。それぞれについて少し解説していきます。
二世帯住宅が親だけの名義である場合、父の専用物となります。単独登記の場合は、名義人である親の意思で売却が可能です。もちろん、売却の相談を家族にするべきではありますが、単独登記があくまでも名義人の専用物のため、同居家族の合意は不要です。
二世帯住宅がもともと子だけの名義である場合は、親の単独登記と同じ扱いです。ただし、住宅を建築する際の費用の一部でも親が出資している場合は、共有登記になるため、売却利益を分配しなければなりません。単独登記のままにしておくと、思わぬ贈与税が課せられる可能性があるため、注意しましょう。
二世帯住宅が親と同居している子の名義である場合、親と子の双方が合意しなければ売却することはできません。なお、どちらか一方の名義人が勝手に売却することを回避できる点がメリットでもあります。ただし、売却については合意しても、売却価格に納得できないケースも多く、スムーズに進まない可能性もあるでしょう。
完全に親世帯と子世帯が住む場所が分かれており、なおかつそれぞれの住んでいる場所が親または子の名義である「区分登記」がされている場合もあります。区分登記は、マンションのような集合住宅の登記に使われることが多く、売却に関して比較的スムーズに進みます。
しかし、二世帯住宅の区分登記は「1階が親世帯・2階が子世帯」もしくは、「住宅の右側が親世帯・左側が子世帯」と分かれるのが一般的です。2分割しているからとはいえ、実際の売却で、例えば1階だけを購入してくれる人はほぼいないでしょう。売却においては、区分登記の二世帯住宅は非常に売れづらい物件といえます。
参照元:不動産登記法
権利関係がクリアになったら、不動産業者に問い合わせて査定してもらいます。この段階では、どのような不動産業者を選ぶかが重要なポイントです。信頼できる業者があれば1社でも良いと思うかもしれませんが、なるべく3社の業者に査定してもらうことをおすすめします。
その際には、大手・地元と二世帯住宅の売却に力を入れている業者というように、特徴に違いがある3社を選ぶのも1つの方法です。複数の業者を比較することで、より良い条件やより良い対応の業者を見つけやすくなるでしょう。
また、気をつけたいのは、査定価格はあくまでも不動産業者が売れるだろうと予想する価格である点です。査定価格が高いからといって、その価格で売れるとは限りません。その点をしっかり理解しておきましょう。
仲介での販売契約ができたら、不動産業者が二世帯住宅を求めている人に向けて売りに出します。二世帯住宅を売却する時は、不動産業者に仲介してもらって買主を探すことになります。仲介を頼む不動産業者によって、売れ行きが変わることも少なくありません。査定価格が高いという理由で選ぶのではなく、なぜこの査定価格になったのかという根拠のある説明ができる会社を選ぶことがポイントになります。
購入希望者が見つかり、住居の条件として折り合いがつけば、価格交渉が行われます。いよいよ、販売活動が始まる段階です。売り出しの価格は、自分で自由に決めることができます。早く売りたいのであれば価格は安くなり、高く売りたいとなると時間がかかる傾向になります。
とはいえ、安すぎても手元に残るお金は少なく、損をしてしまう可能性もあります。それに対して、高すぎてもいつまでも売れない状況になりがちです。価格は、不動産会社と交渉し、最低ラインを設けて価格に幅を持たせると、値引き交渉が入った際にスムーズに進むでしょう。
買い手が見つかった場合は、売買契約を結びます。その上で、売買価格や引き渡し日などの条件交渉が行われ、条件が折り合えば売買・引き渡しへと進むのが一般的です。
ここまで紹介してきた売却の流れは、不動産業者に二世帯住宅の買い手を探してもらうという形式でした。二世帯住宅の売却に関して、できるだけ早く確実に売却したいと考える方も少なくありません。そういったケースでは、仲介業者に任せるのではなく、不動産買取業者に買い取ってもらうというのも手段の一つです。
不動産業者がその住宅を購入するため、買い手がつくまで待つ必要もありません。そのため、不動産仲介業者を経由して売却した場合に比べて、買取業者に買い取ってもらう場合は売却金額が低くなってしまう可能性があるというデメリットがあることも覚えておきましょう。
二世帯住宅を売却するためには、いくつかポイントがあります。下記の5つについて解説します。
将来的に売却を視野に入れているのであれば、あらかじめ売る可能性を考えて、一般的な戸建て住宅の間取りを意識した汎用性の高い設計を検討しましょう。決して、自分たちの要望が反映されない間取りをおすすめしているのではありません。二世帯住宅は、その住宅に住まう人に多くの利点があるべきです。
どういった間取りにすべきか、どこをこだわってどこを妥協すべきかは、注文住宅を依頼する際に知見をもった建築会社に相談してみると良いでしょう。
二世帯住宅は売れるまで時間がかかってしまいますし、探している人も限定的です。そこで、初めから二世帯住宅の売却に対して実績がある不動産仲介業者に依頼するようにしましょう。
以下に示す、2つのサイトが業者選びや二世帯住宅の相場を知るうえで参考になります。
レインズ・マーケット・インフォメーション(REINS Market Information)とは、国土交通大臣指定の不動産流通機構が運営している不動産取引情報提供サイトです。全国の不動産取引の価格をなどを公開しています。建物の種別や居住地域などを選択するだけで、無料で検索できるため、気軽に利用してみてください。
土地総合情報システムとは、国土交通省が運営する不動産の取引価格から、地価公示・地価調査の価格までを閲覧できるWEBサイトです。こちらも、無料で検索できます。不動産取引価格に関して、土地・土地と建物・中古マンションなどの取引相場の確認が可能です。詳細な情報は、所在地・最寄り駅・取引総額・面積・坪単価を知ることができます。
二世帯住宅のままではなかなか買い手がつかないのなら、リフォームを行うことで付加価値をつけることも検討してみると良いでしょう。
完全共有型の場合、一軒家としては少し大きめである場合が多いでしょう。そのため、そのままの間取りで売りに出すのがおすすめです。リフォームといっても、壁紙の補修程度にとどめておくことが、より高く売るためのポイントとなります。
一部共有型であれば、シェアハウスとして検討してみてはいかがでしょうか。シェアハウスとは、水回りやリビングなどを複数人でシェアして生活する賃貸物件です。
共有部分はそれまでどおり居住者が共有し、個室があるためある程度のプライバシーも確保できます。この場合、それほどリフォームしなくても良いという点も魅力的です。ただし、そもそも一部共有型は、各世帯での適度な距離感を保ちたい方が選択するので、知らない人と同居するのは難しいという方には不向きともいえます。
完全分離型の場合、収益物件付住宅として貸し出したり、売りに出したりすることができます。なかなか売れないのであれば、賃貸を検討すると良いでしょう。例えば、片方の世帯スペースには自分が住んだままで、もう一方を賃貸として貸し出すのです。ただし、フルリフォームはおすすめできません。莫大な資金を要し、たとえ売却できたとしてもリフォーム費用を十分に回収できない可能性が高いためです。
何も手を加えず、じっくりと待つというのも、実は手段の一つです。
自分たちがこだわった間取りと、ニーズが合致する家族が現れる可能性があるためです。もしかすると、何年も購入希望者が見つからないかもしれません。
しかし、いざニーズが合致した希望者が見つかれば、満額に近い売値で購入してくれる可能性が高まります。
売却価格が低くなってしまうという話をしましたが、自分たちが「売れない住宅を抱え続ける」というリスクと比較して、どちらが良いかを考えてみましょう。
いわば、買取業者が自分たちが負うはずだったリスクを肩代わりしてくれているようなものなのです。
仲介業者に依頼して何年も売れず、家の価値が経年で下がってから買取業者に依頼するよりも、最初から依頼してしまうという手段があることも検討しておきましょう。
これまで解説してきたとおり、ある程度の計画性をもち、あらかじめ売却しやすい二世帯住宅を建てることがおすすめです。
その際に、ぜひ検討いただきたいのが、株式会社ランディックスが運営する注文住宅マッチングサービス「sumuzu(スムーズ)」です。
sumuzuが提供するサービスの一つが、建築会社とのマッチングサービスです。
審査を通過した、信頼できる建築会社やハウスメーカーなどが登録されています。(建築会社一覧)
sumuzu(スムーズ)は、相談者の家づくりを中立的な立場からサポートする専門家集団です。
工務店・ビルダー・ハウスメーカー・設計事務所の選び方、相談者が抱える悩みや希望合わせた間取り計画から、工事見積りの減額調整まで、家づくりに関するすべてについて相談できます。
本記事では、二世帯住宅が中古で売れにくいといわれている原因とそれを防ぐ方法、そして中古で売るためのコツについて解説してきました。
多くの場合、親世帯にとっては終の棲家として二世帯住宅を建てると思いますが、子世帯にとってはそうとは限らないものです。
こだわることも必要ですが、将来を見据えたプランを立てておくのもまた重要なことでしょう。
この記事をきっかけにして、ぜひ二世帯住宅を新築する際の間取りや、中古での売り方について考えてみてください。
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