賃貸併用住宅の間取りは、賃貸経営を考える上で入居率を安定させる重要な要素の1つです。この記事では、賃貸併用住宅の間取りを考えるポイントから入居者のニーズに合った賃貸併用住宅、理想の間取りを実現するための注意点に加えて、賃貸併用住宅の実例も合わせて紹介します。

賃貸併用住宅の間取りを考えるポイント

賃貸併用住宅の間取りを考える上で重要なポイントは、以下の3点です。

  1. 希望とする土地周辺の環境を把握する
  2. 賃貸部分と自宅部分の分け方を考える
  3. 地域ごとの規制に照らし合わせる

ここでは、賃貸併用住宅の間取りを考える上で重要な3つのポイントについて詳しく解説します。

1.希望する土地周辺の環境を把握する

まず、希望する土地周辺の環境を把握することから始めましょう。単身者とファミリー向けのどちらの賃貸物件が多いのか、あるいは混在しているのかを理解しておきましょう。次に、周辺環境を確認する時には現地へ実際に出向くことが大切です。そこで、以下の点を確認しましょう。

  • 最寄り駅と距離、所要時間
  • コンビニ・スーパー
  • 学校・病院・公園

駅が近く、コンビニや大学などがあれば単身者向き、多少駅から離れていても、小・中学校や大型スーパーといったインフラが充実していればファミリー向きと判断できるでしょう。

もちろん、近隣の賃貸物件(1Rや1Kもしくは2DKなど)の状況、賃貸物件と分譲マンションや一戸建てでは、どちらが多いのかを見極めることも重要です。また、複数の企業や工場がある地域であれば、駅から遠くても単身者やファミリーの需要があるので、検討してみても良いかもしれません。

具体的な間取りは、どのような層をターゲットにするかで決まってくるので、土地周辺の環境を把握することが重要となります。購入したい土地を見つけた場合は、実際に自分で出向いてみることをおすすめします。

2.賃貸部分と自宅部分の分け方を考える

賃貸併用住宅の賃貸部分と自宅部分の分け方には、縦割りと横割りのタイプがあります。間取りのタイプには、それぞれのメリット・デメリットがあるので確認しましょう、

▶横割り型賃貸併用住宅

▶縦割り型賃貸併用住宅

住宅ローンを使うなら自宅部分を50%以上に

賃貸併用住宅の購入に住宅ローンを検討しているのであれば、自宅部分と賃貸部分の床面積を確認しておきましょう。住宅ローンの適用要件が「建物全体の床面積のうち自宅部分の床面積の割合が50%以上であること」となっています。そのため、自宅部分は必ず50%以上にしなければなりません。

このように、賃貸部分に割ける面積に上限があるので、住宅ローンを使える範囲で収益を上げるためには、上限ギリギリまでスペースを確保し、需要の高い間取りにすることが重要になります。

さらに収益性を重視する場合は?

賃貸併用住宅で収益性を重視するのであれば、住宅ローンの適用条件である自宅部分を50%以下にし、賃貸部分の割合を大きくする必要があります。例えば、以下に示す図のように、3階建ての1・2階を賃貸のスペースにし、最上階を自宅にするといった具合です。

▶賃貸部分を大きくした間取りのタイプ

ただし、住宅部分より賃貸部分のスペースが大きい場合は、収益性の高い不動産になり、不動産投資ローン(アパートローン)での融資になります。

3.地域ごとの規制に照らし合わせる

土地にどれくらいの規模の建物が建築可能なのかを示す「建ぺい率」と「容積率」という建築基準法で決められた規制があります。理想の広さの賃貸併用住宅がその土地に実現できるのかを知るためには、建ぺい率と容積率という制限について理解しておくことが大切です。

建ぺい率

建ぺい率とは、敷地面積に対して建築できる面積の割合のことです。自分の土地に、できるだけ効率よく家を建てたいと考える人も少なくありません。そうすると、日当たりや通風が悪く、火災が発生すると燃え広がってしまうなどの不都合が多くなります。

そこで、敷地内に一定割合以上の空地を設けて良好な住環境の確保を目的として、建築基準法により用途地域ごとに建ぺい率に制限が設けられているのです。

建ぺい率(%)=建築面積÷敷地面積×100例えば、

敷地面積100平方メートル・建ぺい率50%の場合は、
建築面積50平方メートルまで

敷地面積80平方メートル・建ぺい率80%の場合は、
建築面積64平方メートルまで

建ぺい率によって、敷地面積が狭いのに
建築面積が大きくなるということもあります。

※建築面積とは、土地の建物を真上から見たときの面積のこと。

容積率

容積率とは、敷地面積に対する建築物の延床面積の割合のことです。建築物の規模とその地域の道路などの整備状況とのバランスの確保を目的としています。容積率も建ぺい率と同じく、用途地域ごとに容積率の制限が設けられています

容積率(%)=延床面積÷敷地面積×100例えば、

敷地面積100平方メートルで建ぺい率50%・容積率50%の場合は、

床面積が1階50平方メートルまで・2階50平方メートルまで

第一種および第二種中高層住居専用地域では、
容積率100~500%に設定されており、
500%の場合は敷地面積の5倍の延床面積の建物が建てられることになります。

建ぺい率と容積率の組み合わせで具体例を挙げます。

敷地面積100平方メートルで建ぺい率60%・容積率150%

1階が60平方メートルまで、2階は150平方メートルまで
現実的には、2階建てで1階と2階が
同じ床面積の120平方メートルまでの建築が可能です。

理想の賃貸併用住宅のイメージを実現するには、建ぺい率や容積率という規制が必ず出てくるので地域の選定や土地選びの際に検討してみてください。

参照元:都市計画制度|国土交通省

入居者のニーズに合った賃貸併用住宅にするには?

賃貸併用住宅で安定した家賃収入を得るには、入居者のニーズを把握することが欠かせません。入居者ニーズに合った賃貸併用住宅にするには、どのような点に着目すると良いのでしょうか。ここでは、以下の観点で入居者のニーズについて解説します。

  1. 騒音・防音対策を意識する
  2. プライバシーを確保を重視する
  3. 入居者の快適性に配慮した設備を整える

1.騒音・防音対策を意識する

入居者のニーズとして従来から挙げられるのは、騒音・防音への対策です。賃貸併用住宅では入居者同士に加えてオーナーと入居者間の生活音が気になります。この対策の重要性が以前より高まっているのは、テレワークの普及により在宅時間が増えているためです。

騒音に関しては、人によって感じ方に違いがあり、同じ音量でも煩わしさを感じることもあれば、気にならないと感じることもあり、一概に「ここまで対策すれば万全」とはいえません。隣接する部屋の設備を離れた場所に配置するといった、間取りの工夫が望ましいです。加えて、床や壁に防音性の高い材料を使用することも必要になります。

建物の防音性や遮音性を高めるとコストがかかりますが、費用対効果を考えた上で総合的に判断するようにしましょう。

2.プライバシーの確保を重視する

プライバシーの確保を重視した賃貸併用住宅は、入居者だけでなくオーナーにとっても欠かせません。オーナーが近くにいると安心という人がいる一方で、干渉されるようで気まずいという人もいるでしょう。そのため、プライバシーの確保ができるように、間取りの設計段階で考えておく必要があります。

オーナーと入居者の生活動線が交わらないようにすることで、直接顔を合わせるという接触を軽減できます。

具体的には、以下のような工夫でプライバシーの確保が可能です。

  • 自宅部分と賃貸部分の玄関を完全に分ける
  • 外付け階段を設置する
  • 庭や玄関付近に植栽をして居住空間を目隠しする

設計士とよく話し合って、プライバシーが確保できる空間を作りましょう。

3. 入居者の快適性に配慮した設備を整える

入居者のニーズを考える上で、入居者の快適性に配慮した設備を整えることに着目しましょう。全国賃貸新聞が公表した「この設備がなければ決まらないランキング」によると、単身者向けとファミリー向けでは人気設備に違いがあることが示されています。

▶単身者向け

順位順位の変動設備
1前回1位室内洗濯機置場
2前回2位TVモニター付きインターホン
3前回3位インターネット無料
4前回4位温水洗浄便座
5前回5位独立洗面台
6前回6位→エントランスのオートロック
7前回8位備え付け照明
8前回7位↓宅配ボックス
9前回9位→高速インターネット(1Gbps以上)
10前回10位→ガスコンロ(2口/3口)

▶ファミリー向け

順位順位の変動設備
1前回4位↑追いだき機能
2前回2位→室内洗濯機置場
3前回1位↓TVモニター付きインターホン
4前回3位↓独立洗面台
5前回5位→温水洗浄便座
6前回6位→インターネット無料
7前回7位→システムキッチン
8前回8位→ガスコンロ(2口/3口)
9前回9位→エントランスのオートロック
10前回11位↑宅配ボックス

入居者が求める設備は、地域や部屋の広さによって違いがあると考えられます。必要な設備は、近くの賃貸物件を参考にするのも良いでしょう。

引用元:「この設備がなければ入居が決まらない」ランキング2022|全国賃貸新聞

賃貸併用住宅の実例を紹介

ここでは、賃貸併用住宅の具体的な実例と最適な間取りプランを提案してもらう方法についても紹介します。

実例は、目黒区で敷地面積36坪の土地を有効活用した内容です。イメージしやすい三次元化した断面パース、解説付き間取り図、賃貸併用住宅の概要を元に紹介します。

賃貸併用4LDK(横割り型タイプ)

住所目黒区
敷地面積119.29平方メートル(36.0坪)
建物延床面積155.71平方メートル(47.1坪)
建物参考価格5,000〜5,500万円
居住割合賃貸20.88平方メートル(6.3坪)

賃貸19.06平方メートル(5.7坪)

自宅115.77平方メートル(35.0坪)

こちらの賃貸併用住宅は、1階に賃貸2室と楽器練習室、2・3階にオーナーの居住部分を配置した設計です。コンクリート造のため、上階の音が響きにくくなっています

賃貸部分のプラスαとして、入居者が楽器の演奏ができるといった音楽マンションの要素を持っていることが特徴です。賃料を取れるということもありますが、賃料を下げることなく長く住んでもらえるという魅力があります。

自宅部分は、収納が廊下に備え付けてあり、洗濯室の家事動線がスムーズです。また、キッチンからリビングとインナーバルコニーまで見通すことができます。さらに、天井高5.1メートルの開放的な吹抜けやインナーバルコニーが広がりを見せています。

賃貸併用住宅の間取りを提案してもらうには

賃貸併用住宅では、自宅部分はオーナーの要望を活かした設計にできますが、賃貸部分は入居者のニーズに配慮した設計でなければなりません。最適な間取りを提案してもらうには、賃貸併用住宅のプランニングに熟知した会社に依頼するのが成功の鍵といえます。まずは、会社の間取りプランや建築事例を確認しましょう。

賃貸併用住宅で理想の間取りを実現するための注意点

ここでは、賃貸併用住宅で理想の間取りを実現するための注意点について解説します。

その注意点は、以下の通りです。

  1. 建築規制を確認する
  2. 賃貸併用住宅に強い建築会社を選ぶ
  3. 必ず複数の間取りプランを比較する

1.建築規制を確認する

賃貸併用住宅の敷地は、予算の範囲でなるべく広くしたいと考える人は多いでしょう。住宅地といっても、どこにでも自由に建物が建てられるわけではありません。土地には建物を建築する際にいくつかの規制があり、建ぺい率と容積率という規制があることを紹介しました。この他にも地域ごとの規制として、斜線制限や日影規制などがあります。

建築確認では、地域限定の規制(集団規定)と全ての建物の規制(単体規定)が守られているかの確認が行われ、規制が守られていなければ建築できません。理想の間取りを実現するためには、その土地の建築規制を確認することが大切です。

以下で、土地選びに役立つ建築規制をいくつか紹介します。

用途地域

用途地域とは、「住居系」「商業系」「工業系」の3タイプに分け、さらに13種類に細分化した地域のことです。建築可能な建物の種類や大きさ、高さなどに規制があります。このうち、工業専用地域だけは賃貸併用住宅を建築することができません。

高さ制限

高さ制限とは、建物の高さを制限する規制で、絶対高さと高度地区があります。

▶絶対高さ

建物の高さを10mもしくは12m以内に定めた制限で、低層住宅の住環境を良好に保つことを目的とします。第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域内において、建築物の一番高いところを12メートルもしくは10メートル以下にしなければなりません。

▶高度地区

高度地区は、用途地域内で市街地の環境維持と土地利用の増進を図ることを目的としています。高さの他に、北側の敷地に対する斜線制限も含んでいるのが一般的です。なお、各自治体の特定行政庁によって定められているため、内容は自治体ごとに違いがあります

斜線制限

斜線制限とは、道路境界線あるいは隣地境界線から敷地の上空にかけて斜めに引かれた高さ制限のことです。以下に示すように、いくつかの斜線制限が存在しています。

 ▶北側斜線制限

北側の敷地に対して、南からの採光を確保するために行われる規制です。北側の境界線より建てようとしている建築物の上空に向かって引かれる制限のことです。2階建ての場合、北側の屋根の一部が少し斜めになる程度で大きな影響はありません。3階建て以上になると、同じ広さの土地でも建物の面積に顕著な違いが出てきます。

▶道路斜線制限

道路の日照や通風などに支障が出ないためにかけられる高さの制限のことです。敷地が接している前面道路の反対側の境界線から、敷地上空にかけて一定の勾配で引かれる線の範囲内に建物を建てなければなりません。ただし、適用距離(20〜50メートル)を超える部分には高さ制限はありません。

▶隣地斜線制限

隣地との境界線より一定の高さ(20〜31メートル)から敷地に向かって引かれる線の範囲内に建物を建てなければなりません。ただし、第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域は、絶対高さの制限があるため、隣地斜線制限は適用外です。

日影規制

文字通り、日当たりに関する規制です。冬至日の真太陽時(太陽が真南にきた時間を正午とする)を基準として、一定時間以上の日影が生じる建物の高さを制限します。この規制が適用外になるのは、商業地域・工業地域・工業専用地域の3つのエリアです。

適用されるのは、以下の通りです。

<第一種・第二種低層住居専用地域、田園住居地域>

屋根下7メートルを超える場合や地上部分が3階を超える場合

<第一種・第二種中高層住宅専用地域、第一種・第二種住居地域、準住居地域>

高さ10メートルを超える建築物

参照元:建築基準法制度概要集|国土交通省

2.賃貸併用住宅に強い建築会社を選ぶ

賃貸併用住宅の建築は、施工実績のある建築会社を選びましょう。賃貸併用住宅は、自宅部分ではオーナーの要望や住み心地を重視し、賃貸部分には入居者のニーズとマッチさせることが求められます。だからこそ、入居者のニーズなどのリサーチや様々な建築規制を元にした最適な間取りプランに加え、施工技術に優れた建築会社を選ぶことが重要になるのです。

賃貸併用住宅に強い建築会社とは、個人宅という注文住宅で得た技術やノウハウの豊かさといった実績を活かしつつ、それを賃貸部分にも反映できる建築会社を意味します。そういった建築会社を選ぶことで、オーナーも入居者も満足度の高い住宅を建てることができるでしょう。

3.必ず複数の間取りプランを必ず比較する

賃貸併用住宅で理想の間取りを実現するには、必ず複数の間取りプランを比較検討しましょう。そうすることで、賃貸併用住宅に強い建築会社を見極めることができます。信頼できる建築会社があれば、1社に絞って依頼する方法もありますが、提案された間取りが理想的なプランなのか、建築費が妥当なのかを判断することは難しいでしょう。

予算と要望を同じように伝えたとしても、建築会社によって間取りに特徴が現れます。比較してはじめて、理想とする間取りを実現できる建築会社に出会えるのです。

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なお、これらの相談、ヒアリングなどは、チャット、メール、電話などで対応可能です。具体的な話は面談が必要ですが、オンラインによる面談(Zoom)にも対応しています。忙しい方にも安心の対応です。

最後に

この記事では、賃貸併用住宅の間取りを考えるポイントから入居者のニーズに合った賃貸併用住宅、理想の間取りを実現するための注意点に加えて、賃貸併用住宅の実例も合わせて紹介しました。賃貸併用住宅の間取りは、希望する土地周辺に実際に出向いて環境を把握し、自宅と賃貸それぞれの分け方を検討して、入居者の快適性に配慮した設備を整えていきます。

また、土地選びは様々な建築規制の確認を怠ると、理想の建物の広さを叶えられない可能性が高まるでしょう。だからこそ、複数のプランから本当に賃貸併用住宅に強い建築会社を選び、土地購入から家づくりの相談を進めていくことが重要です。