賃貸併用住宅を建てる際に、建築費用の目安とされるのが坪単価です。1坪あたりの建築費を指しますが、この数字だけでは実際の建築費を把握することはできません。この記事では、賃貸併用住宅の坪単価や坪単価を活用するメリット、建築費を坪単価で比較するときの注意点のほか、坪単価を下げるポイントについて解説します。

賃貸併用住宅における坪単価とは

ここでは、賃貸併用住宅における坪単価とはどのようなことを指しているのか、以下の内容について解説します。

  1. 坪単価とは
  2. 坪単価の計算方法

坪単価とは

坪単価とは、1坪あたりの建築費のことです。1坪の広さは3.3平方メートルです。畳2枚分と覚えておくとイメージしやすいでしょう。

自分が建てたい家の広さと予算が決まっていれば、坪単価を割り出すこともできます。また、建築会社のホームページや広告に掲載されている坪単価を計算すると、その会社が建てる建物の金額を知ることも可能です。

坪単価の計算方法

一般的な坪単価の計算方法は、以下の式を用いて計算します。

坪単価=本体価格÷延床面積

例えば2階建て賃貸併用住宅の場合、1階と2階がそれぞれ25坪ずつだと、延床面積は50坪となります。本体価格5.000万円とすると、坪単価は以下のような計算式となります。

5,000万円÷50坪=100万円 

坪単価は100万円

また、坪単価が分かっている場合は「坪単価×延床面積」で本体価格を求められます。おおよその見当として参考にできるので、計算式を知っておくと便利です。

賃貸併用住宅の坪単価はいくらになる?

坪単価には、建築会社や構造によって幅があります。賃貸併用住宅の相場はどの程度になるのでしょうか。ここでは、以下の観点で解説します。

  • 賃貸併用住宅の坪単価は建築会社ごとに異なる
  • 賃貸併用住宅の坪単価は構造によって変わる

賃貸併用住宅の坪単価は建築会社ごとに異なる

賃貸併用住宅では、ハウスメーカーや工務店によって坪単価が異なります。それぞれの坪単価は、下表の通りです。

タイプ別坪単価
大手ハウスメーカー約90〜100万円
工務店約80〜90万円
ローコストで対応可能なハウスメーカー約70〜80万円

一般的に坪単価は税抜き価格です。消費税分の金額は高くなりがちなので、表示されている坪単価が税抜きと税込みのどちらかを確認しましょう。

▶︎大手ハウスメーカー

全国規模で展開し、テレビコマーシャルで馴染みのある大手企業です。坪単価は、約90~100万円くらいで高価格となります。

▶︎工務店

地域に根差して展開しており、その地域特有の木材を扱うなど特色があります。自由設計の注文住宅となるため、間取りなどの制限が少ないのが特徴です。坪単価に地域差がありますが、約80〜90万円となります。

▶︎ローコストに対応可能なハウスメーカー

低価格を打ち出しているので、坪単価は約70〜80万円ほどです。間取りやデザインを規格化するなどして、大幅にコストを抑えています。

坪単価が分かれば、どの建築会社が高いかもしくは安いのかを比較しやすいです。加えて、自分の予算に合うかどうかもイメージがつきやすいでしょう。

賃貸併用住宅の坪単価は構造によって変わる

同じ延床面積でも、構造の違いにより坪単価も異なります。国税庁が公表した2022年における構造の坪単価は、下表の通りです。

  木造鉄骨鉄筋コンクリート造鉄筋コンクリート造鉄骨造
全国平均1平方メートルあたり173,000円284,000円265,000円256,000円
坪単価570,900円937,200円874,500円844,400円
東京1平方メートル

あたり

173,000円364,000円327,000円309,000円
坪単価570,900円1,202,200円1,079,100円1,019,700円

※調査結果にある1平方メートルの単価を坪単価に換算しています。

引用元:地域別・構造別の工事費用表(1m2当たり)【令和4年分用】|国税庁

2022年国税庁による構造別坪単価は、鉄骨鉄筋コンクリートが最も高く、続いて鉄筋コンクリート・鉄骨造・木造の順に低くなります。

▶木造

その名の通り、木材を構造材とします。坪単価は、全国平均と東京ともに579,000円程度が相場といえます。工法には、柱と梁で補強しながら骨組みを作っていく木造軸組工法と、パネルで組み立てていく木造枠組壁工法(ツーバイフォー)が代表的です。一般的には軸組工法より、建築資材が少ない木造枠組み工法の方が建築費用を抑えられます。

▶鉄骨鉄筋コンクリート

鉄骨の柱の周りに鉄筋を組み、コンクリートを流し込んで施工します。坪単価は、全国平均937,200円、東京ではそれより高めの1,202,200円程度が相場です。最も耐震性と遮音性に優れているといわれています。

▶鉄筋コンクリート

組み上げた型枠に鉄筋を配置し、そこにコンクリートを施工します。坪単価は全国平均874,500円、東京ではそれより高めの1,079,100円程度が相場です。耐震性、耐火性に加えて、遮音性にも優れています。

▶鉄骨造

重量鉄骨(厚さ6mm以上)と軽量鉄骨(6mm未満)に分けられます。坪単価は、この2種類を含めた数字で、全国平均844,400円円、東京ではそれより高めの1,019,700円程度が相場です。耐震性に優れ、高層ビルやマンションに使用されています。

すべての構造で共通するのは、土地や建物の形状、地盤の状況などから上記の坪単価の相場が大きく変動するという点です。その点も踏まえて、建築会社とよく相談しながら進めるようにしましょう。

賃貸併用住宅の建築費を坪単価で比較するときの注意点

賃貸併用住宅の建築費を坪単価で比較する時は、いくつか注意点があります。この注意点が分かると、坪単価の正しい意味を理解することができるでしょう。

賃貸併用住宅の建築費を坪単価で比較する時は、以下のポイントに注意が必要です。

  1. 坪単価の算出方法は延床面積と施工面積がある
  2. 坪単価に含まれていない費用がある
  3. 延床面積を小さくしても坪単価は下がらない
  4. ランニングコストにも注目する

1.坪単価の算出方法は延床面積と施工面積がある

坪単価は、「本体価格÷延床面積」で算出することを紹介しましたが、実は、延床面積以外にも施工面積があります。この2つのどちらで坪単価を計算するかで、本体価格に大きな差があるので要注意です。

延床面積:各階の床面積合計

ロフトや吹き抜け、バルコニーなど含まれない部分がある

施工面積:実際に施工した面積

ロフトや吹き抜けなども施工しているので、延床面積よりも広くなる

坪単価は、延床面積と施工面積のどちらを採用して計算するかの決まったルールがありません。注意が必要なのは、施工面積で採用している会社です。価格が同じであれば、数値の大きい面積で割った方が安くなります。よって、施工面積は延床面積より広くなるため、坪単価を安く見せることができるのです。

2.坪単価に含まれていない費用がある

坪単価に含まれていない費用があるので、坪単価に延床面積を乗じた額では賃貸併用住宅が建てられない可能性があります。坪単価の本体価格にどれだけの設備が含まれているか、それとは別に付帯工事費用が含まれているかどうかで、坪単価の捉え方が全く異なるからです。

<本体価格>

最低限の設備

トイレ・浴室・キッチン

付帯工事費用

解体工事(建て替えの場合)

地盤工事(軟弱な地盤の場合)

電設工事

給水工事

ガス工事

家具工事

外構工事

植栽工事など

 

生活に必要な設備

トイレ・浴室・キッチン以外の設備

(照明器具・エアコン・カーテンなど)

坪単価として表記されている価格に「最低限の設備」があるだけで、そのまま生活することはできない状態のものと「生活に必要な設備」などを含み、そのまま生活できる状態となっている状態のケースがあります。付帯工事費用も含まれている場合とそうでない場合もあり、建築会社により様々です。

当然ですが、同じ延床面積であれば、本体価格に照明器具などの設備や付帯工事費用を含めている場合は坪単価が上がります。同じ施工方法で間取りが同じでも坪単価に差が出るのは、本体価格に含まれる費用が異なっている可能性が高いでしょう。

建築会社に見積もりを依頼する際には、坪単価を計算している本体価格には何が含まれているか、含まれていない費用は何かについても確認してください。

3.延床面積を小さくしても坪単価は下がらない

延床面積を小さくすると坪単価も下がると思いがちですが、決してそうではありません。極端な例ですが、坪単価が70万円のところを延床面積を半分にしても、坪単価が35万円にならないということです。

キッチンやバス、トイレなどの生活上不可欠な設備は、延床面積を小さくしたからといって削ることはできません。それに伴う工事費用や人件費も同様です。このような場合に坪単価を減らすなら、キッチンやバス、トイレなどのグレードを下げる必要があります。したがって、床面積を小さくしても坪単価が下がらないため、かえって割高になってしまうのです。

4.ランニングコストにも注目する

賃貸併用住宅の建築費を坪単価で比較する時には、坪単価に加え、ランニングコスト(建物や設備を維持するために必要となるコスト)にも注目しましょう。坪単価を重視するあまり品質を軽視すると、劣化スピードが速くなり、その程度によっては莫大な費用がかかる恐れがあるからです。

住宅産業協議会のメンテナンスに関する資料によると、一般的な戸建住宅では、屋根(120平方メートル)に40〜50万円、外壁(170平方メートル)の表面塗装に60〜80万円のコストがかかります。それに伴う足場代も別途必要です。賃貸併用住宅は、さらに費用が大きくなることは否めません。

引用元:住まいのメンテナンススケジュール|住宅産業協議会

普段の維持管理や将来発生する修繕、あるいは建て替えの計画から、ランニングコストに注目し、それらの費用を抑えられる屋根・外壁などを選ぶことが重要です。

賃貸併用住宅の坪単価を下げるポイント

賃貸併用住宅の坪単価を下げるポイントは、以下の6点です。住宅併用住宅の建築の際に、より多くのポイントを採用することで坪単価を下げることができるでしょう。

  1. 実現したいものに優先順位をつける
  2. 建物の凹凸を減らす
  3. 屋根の形状をシンプルにする
  4. 賃貸1戸あたりの床面積を40平方メートル以上にする
  5. 設計から施工まで同じ建築会社に依頼する
  6. 複数の建築会社を比較する

1.実現したいものに優先順位をつける

坪単価を下げる時、真っ先に考えるべきは実現したいものに優先順位をつけることです。すべての要望を満たせば、坪単価は上がってしまいます。限られた予算の中で、どこにお金をかけるのか、何を削るのかを検討しましょう。実は、坪単価を左右するのは自分自身の考えによるといっても過言ではありません。坪単価は、要望と予算のバランスをとる上で優先順位が重要になります。

2.建物の凹凸を減らす

同じ延床面積でも、建物の形状で坪単価が上下するので凸凹を減らすことで坪単価を下げることができます。以下の図は、同じ床面積の正方形・長方形・L字型・コの字型です。

坪単価は、正方形が最も低く、長方形・L字型・コの字型の順に高くなります。その理由は、外周の長さが長くなるためです。外周が長くなると、外壁や断熱材の施工に費用などがかかります。建物の凸凹のない総二階(1階と2階が同じ面積)やキューブ型であれば、坪単価を抑えるには最適といえるでしょう。

3.屋根の形状をシンプルにする

建物の凸凹を減らすのと同じ考えですが、屋根の形状をシンプルにすることで坪単価を下げることができます。

最も坪単価を抑えられるのは、片流れ屋根です。屋根に1枚の屋根を載せたようなシンプルなデザインで、片方に傾斜を設けた屋根形状になっています。済むので様々な屋根形状の中でも、面積が小さく雨どいの長さも短いため、コストは圧倒的に安いという特徴があります。

4.賃貸1戸あたりの床面積を40平方メートル以上にする

賃貸1戸あたりの床面積を40平方メートル以上にすると、不動産取得税が軽減されるので結果として坪単価を下げることにつながります。不動産取得税は、賃貸併用住宅を取得したときに1回だけ課される税金です。

40平方メートル以上240平方メートル以下の床面積で居宅要件を満たす賃貸住宅については、固定資産税評価額から1戸あたり1,200万円が控除されます。そのため、賃貸併用住宅の賃貸スペースが1戸と認められれば、自宅に加えて賃貸戸数分も控除されるのです。

不動産取得税は以下のようになります。

不動産取得税=(固定資産税評価額ー1,200万円×(自宅+賃貸戸数))×3%

また、1戸あたりの床面積を広くすると、賃貸戸数が減ります。各戸に設置されたバスやキッチン、トイレなどの設備の数も減るので坪単価が下がることになります。賃貸1戸あたり床面積を40平方メートル以上にすると、不動産取得税の大幅な軽減と同時に坪単価も下げられるので、賃貸1戸あたりの床面積に注目してみましょう。

5.設計から施工まで同じ建築会社に依頼する

賃貸併用住宅を建築する場合、設計から施工まで同じ建築会社に依頼することで坪単価を下げることができます。そういった建築会社は、設計料が安くなるのが一般的です。また、施工会社は得意とする工法があるので、その設計者が坪単価を抑えて建てられる工法で設計してくれることからも、坪単価を下げることが可能になるのです。

6.複数の建築会社を比較する

建築会社を選ぶ時は、必ず複数の会社を比較検討しましょう。プランにおける建物の本体価格と坪単価だけでなく、含まれている費用あるいは含まれていない費用から坪単価を正しく計算して比較することが重要になります。つまり、最終的に一体いくらで建てられるのかという建築費用の総額から坪単価を計算しなければ比較できないのです。

とはいえ、複数といっても情報が多すぎては比較するのが大変になるでしょう。よって、依頼するのは3社がおすすめです。要望の構造があれば、その構造に特化した会社を比較するのも良いでしょう。建築会社の種類で選ぶ時は、大手ハウスメーカーや工務店、ローコストで対応可能なハウスメーカーというように特色の異なる会社から、それぞれ1社ずつ建築プランを取り寄せるのも効果的です。

予算に合った賃貸併用住宅プランを提案してもらうには?

坪単価は、大まかな建築費を知るための目安となるので、賃貸併用住宅を建築する前にしっかりと把握することが大切です。ただし、坪単価はあくまでも目安なので、実際に建築プランを作ってもらったら建物の形状や土地の条件などで、坪単価が大きく変動することも少なくありません。正確な費用を把握することは、なかなか難しいものです。

賃貸併用住宅に関して判断に迷う方や、予算に合った建築費用を把握したい方は、株式会社ランディックスが運営する、注文住宅マッチングサービス「sumuzu(スムーズ)」に相談してみてください。

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なお、建築会社は、厳格な審査を通過した信頼できるハウスメーカーや工務店、建築家などが参加しています(建築会社一覧)。

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なお、これらの相談、ヒアリングなどは、チャット、メール、電話などで対応可能です。具体的な話は面談が必要ですが、オンラインによる面談(Zoom)にも対応しています。忙しい方にも安心の対応です。

最後に

この記事では、賃貸併用住宅の坪単価や坪単価を活用するメリット、建築費を坪単価で比較するときの注意点のほか、坪単価を下げるポイントについて解説しました。坪単価は、1坪あたりの建築費を示すので、自分が建てたい建物の広さに対するおおよその費用を知ることができます。

建築会社や構造により坪単価の変動があるため、坪単価を抑えるにはどこから考えたら良いのか分からないという方も多いようです。賃貸併用住宅の建築費用でお悩みのある方は、ぜひ注文住宅マッチングサービスsumuzuに相談してみてはいかがでしょうか。