渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
この記事の監修者
渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
二世帯住宅でトラブルの原因になりがちなのが、登記に関連した問題です。そもそも登記とは何を意味し、そしてどんな種類があるのでしょうか。当記事では、二世帯住宅の登記のパターンとそれぞれがもつメリットやデメリットについて解説します。
住宅を建てる時には、土地・建物の所有権の登記が必要です。不動産登記とは、誰がどのような不動産を所有しているのかを示す制度を指します。登記について、詳しく知らないという方も多いでしょう。二世帯住宅の登記方法は3種類あります。実は、二世帯住宅の種類によっても、登記方法のメリットが異なるので注意が必要です。どの登記方法が自分たちにとって最適なのかを比較するためにも、それぞれの登記方法について確認しておきましょう。
当記事では、二世帯住宅における登記方法の種類と、それらがもつメリットやデメリット、そして起こりやすいトラブルを回避する方法について解説していきます。初めて、二世帯住宅を建てる方は、参考にしてみてください。
二世帯住宅の登記の種類を知るうえで、どのような種類の二世帯住宅があるのかを知っておくのは必要不可欠です。まずは、二世帯住宅の種類について確認しておきましょう。
二世帯住宅は、基本的に親世帯と子世帯が同居する一戸建てのことを意味します。この一戸建ての中で各世帯がどの部分をどの程度共用するかによって、下記の3種類に分けることができます。
二世帯住宅の種類名 |
特徴 |
完全共有型 | 親世帯と子世帯の居住スペースのほぼ全てを共用する |
一部共有型 | 親世帯と子世帯の居住スペースの一部を共用する |
完全分離型 | 親世帯と子世帯の居住スペースを完全に分ける |
前提知識として、これらの種類別の特徴を確認するところから始めていきましょう。
完全共有型とは、二世帯住宅において最も世帯間の共用部分が多い形態です。親世帯と子世帯の寝室以外のスペースや、設備を共用にしている二世帯住宅を意味します。昔ながらの、一軒家のなかに親世帯と子世帯が住んでるような状況を想像すると理解しやすいでしょう。
完全共有型のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット |
|
デメリット |
|
一部共有型とは、完全共有型と完全分離型の中間のような形態です。世帯間における居住スペースや設備などの一部を共用するという二世帯住宅を意味します。親世帯と子世帯で共有するスペースの広さや設備の割合には特に決まりはありません。
例えば、ほとんど大部分を共有しているがリビングスペースだけは親世帯と子世帯で分かれている、あるいはほとんどのスペースと設備が分かれているが、玄関だけは共用している、というパターンもあります。すなわち、一部共有型でありつつ一部分離型である、と見ることもできるでしょう。
一部共有型のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット |
|
デメリット |
|
完全分離型とは、世帯間の共用部分が全くない形態です。親世帯と子世帯ですべての設備やスペースを完全に分離している二世帯住宅を意味します。イメージとしては、一軒家の中に二戸の家が建っているようなものです。
完全分離型のメリット・デメリットは以下の通りです。
メリット |
|
デメリット |
|
二世帯住宅の登記は、全体で一戸の住宅とみなして単独登記や共有登記をすることができます。また、二戸の住宅とみなす区分登記も可能です。
ここでは、以下に示す登記の3パターンについて解説します。
単独登記とは、1人の名義で登記する方法を指します。二世帯住宅においては、親または子どちらかの世帯の単独所有として登記する方法です。基本的には、住宅を購入した人の名義になります。一戸の住宅に対して名義人が1人のため、権利関係が明瞭で最もシンプルな登記方法といえるでしょう。
共有登記とは、複数人が共同で出資し、出資額の割合に応じて持分を分配する登記方法です。二世帯住宅においては、親と子が共有所有として登記します。そのため、必ずしも2分の1ずつということはなく、3分の1と3分の2となるケースもあります。
区分登記とは、複数による名義で登記する方法ですが、一戸の出資比率で分配する共有登記とは異なり、それぞれの世帯を一戸として別々に所有権を登記します。
ただし、二世帯住宅を区分登記するためには、構造上・機能上の独立性が認められなければなりません。そのため、完全分離型のみ区分登記が可能です。なお、完全分離型の二世帯住宅でも、単独登記や共有登記を選択することはできます。
参照元:不動産登記法
各登記には、それぞれ得られるメリットがあります。主なメリット2点について解説します。
二世帯住宅の登記が、単独登記または共有登記の場合、相続税で優遇される可能性があります。いくつかある特例のうち、最も注目したいのが、「小規模宅地等の特例」です。
小規模宅地等の特例の特例とは
亡くなった方(被相続人)が居住していた土地、もしくは同一生計親族が居住していた土地を相続する場合に、土地面積330平方メートルを上限とし、評価額を最大80%減額できる制度のことです。
参照元:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
亡くなった方が住んでいた土地を相続すると、その土地の評価額に対して、高額な相続税がかかってしまいます。この相続税を支払うために、相続人が自宅や土地を手放さざるを得ない事態を防ぐために制定されました。
亡くなった方と親族が居住する二世帯住宅の宅地に関して、以下のように定められています。
1 二世帯住宅に居住していた場合
被相続人と親族が居住するいわゆる二世帯住宅の敷地の用に供されている宅地等について、二世帯住宅が構造上区分された住居であっても、区分所有建物登記がされている建物を除き、一定の要件を満たすものである場合には、その敷地全体について特例の適用ができるようになりました。
引用元:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁
また、二世帯住宅で小規模宅地等の特例が適用されるには、子は親に対して賃料を払っていないという事実も必要になります。
区分登記にしている二世帯住宅は、相続税以外にもいくつかの減税措置において、単独登記や共有登記に比べお得になっています。
区分登記は二戸とみなされるため、以下の軽減措置を二戸分として適用されます。
単独登記・共有登記
(一戸とみなされる) |
区分登記 (二戸とみなされる) | |
住宅ローン減税 | 2022年~2023年に居住開始
原則13年間0.7%控除される | 左記の内容で、親世帯・子世帯ともに住宅ローン減税が適用される |
2022年~2023年に居住開始
10年間0.7%控除される | ||
不動産取得税 | 一戸あたり、評価額から1,200万円を控除したものに税率をかける | 二戸分となり、控除額が1,200万円の2倍になる |
固定資産税 | 土地
●200平方メートル以下の部分 固定資産税は6分の1 ●200平方メートルを超える部分固定資産税は3分の1 適用期間は3年 | 土地
●400平方メートルまで 固定資産税は6分の1 ●400平方メートルを超える部分 固定資産税は3分の1 適用期間は3年 |
建物
床面積120平方メートルまで 固定資産税は2分の1 適用期間は3年 | 建物
床面積240平方メートルまで 固定資産税は2分の1 適用期間は3年 |
参照元:住宅ローン減税|国土交通省
参照元:不動産取得税に係る特例措置|国土交通省
参照元:新築住宅に係る税額の減額措置|国土交通省
節税になるケースが多いため二世帯住宅は区分登記が望ましいという意見もありますが、一概にそうとは言い切れません。相続も視野に入れ、どの登記方法が自分たちにとって最も適しているのか、税理士などの専門家に相談してみましょう。
完全分離でなおかつ区分登記にしている二世帯住宅は、また別の優遇を受けられる可能性があります。
各登記によってはいくつかデメリットも考えられます。主に起こりえるトラブルについて確認していきましょう。
共有登記では、出資した金額によって分配するというのは前述したとおりです。親世帯と子世帯で半分ずつ建築費を支払ったのなら、2分の1の持分で共有登記にするのが自然です。このとき、子の単独登記にしようとするなら、親が出資した建築費分が子への贈与とみなされます。
加えて、子の単独登記の場合に親がリフォームの費用を支払ったり、住宅ローンの支払いを肩代わりしたりすることでも贈与税が課されます。逆に親の単独名義であっても同様です。
二世帯住宅の土地・建物が、親との共有登記で、なおかつ子が複数いる場合には相続問題に発展する可能性があります。
相続の対象となるのは、二世帯住宅の共有持分です。遺産を相続する権利は、法定相続人にあります。法定相続人とは、民法で定められた相続人のことで、被相続人(遺産を残して亡くなった人)の「配偶者」や「血縁関係にある親族」が該当します。
複数の子がいる場合、相続分をきちんと分けることを求められたら、断ることはできません。相応の金額を支払う(代償分割)、もしくは売却したお金を等分して分ける(換価分割)などの手段をとる必要があります。
相続により二世帯住宅を取得すると、相続財産の合計金額が基礎控除の額を超えている場合に限り、期限内(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)に相続税の申告をしなければなりません。万一、トラブルになった際には、弁護士への相談をおすすめします。
登記に関連して起こりうる主なトラブルを回避するにはどうすれば良いのでしょうか。主に下記2つの代表的な対策を解説していきます。
あまり考えたくはないことですが、親世帯が存命のうちに、遺言や話し合いなどの形で相続に関する問題は解決しておきましょう。法的な根拠を相談できる弁護士などに立ち会ってもらい、書面を交わしておけばなお良いでしょう。
親と同居する子は、介護も含めて親の面倒を見るため、相続したい気持ちが強いのは当然です。親としても、老後の面倒を見てくれる子に多く遺産を残したくなるでしょう。もし、同居する子に二世帯住宅を相続させたいのであれば、土地・建物ともに同居する子の単独名義に変更して、共有状態を解消するのも一案です。その上で、同居する子に兄弟姉妹がいる場合は、相続の際に公平になるよう別の手立てを考えておきましょう。
親が現金を所有していたとしても、資産の大部分が二世帯住宅である場合、同居していない子が相続できる取り分は金銭的には少なくなってしまいます。親から同居していない子に対して生前贈与を行うことで、不公平感を緩和するのも1つの方法です。
1年間のうち、生前贈与の金額が110万円以内であれば贈与税は発生しません。毎年、少しずつ同居していない子へ財産を移動させるという方法です。この方法であれば、相続額を減らせるため、相続税の負担も軽くなるといった点がメリットになります。
参照元:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
これまで解説してきたとおり、二世帯住宅の登記方法にはいくつかのパターンがあります。法律に詳しくなければ、自分たちがどうするのが適切か分からず、混乱してしまう可能性が高いでしょう。
自分たちに適切な登記はどれか、またどうすればメリットがあるのか、そして何よりもトラブルを防ぐにはどうすべきか。これらについても相談しながら二世帯住宅を建築するというのも手段の一つではないでしょうか。
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なお、これらの相談、ヒアリングなどは、チャット、メール、電話などで対応可能です。具体的な話は面談が必要ですが、オンラインによる面談(Zoom)にも対応しています。忙しい方にも安心の対応です。
本記事では、二世帯住宅の登記のパターンについて、解説してきました。
その形式とともに登記のパターンがもつ特徴について知っておくことで、様々なメリットを受け、またデメリットを回避することができるでしょう。
重要なのは、自分たちが置かれた状況を鑑みて、どのパターンにするのが最適かを話し合い、家族間で納得しておくことです。
登記は行政上の処理と深く関わるため、親世帯だけでなく子世帯にも影響しますし、場合によっては子の子である孫世帯にまで影響を及ぼす可能性がある重要なものです。
決して、面倒だからと適当に決めてしまうことがないようにしましょう。
ぜひこの記事を参考にして、自分たちにとって何が最適なのか、話し合うきっかけにしてみてください。
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