渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
この記事の監修者
渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
賃貸併用住宅は、自宅部分に加えて賃貸部分があるので、通常の戸建て住宅を建築するよりもコストがかかります。そのため、できるだけコストを抑えたいと思う方は多いです。この記事では、賃貸併用住宅をローコストで建てる方法やローコストを検討する際に注意すべき点、建築会社の選び方を解説します。
賃貸併用住宅をローコストで建てるには、押さえておきたいポイントがあります。以下に示す5つの観点に注目し、コストを抑えられそうな部分について検討しましょう。
賃貸併用住宅は、建物全体の床面積のうち自宅部分を50%以上にすると住宅ローンで融資が受けられるので、全体のコストダウンが可能です。通常、アパートやマンションの購入は不動産投資ローン(アパートローン)での融資となり、住宅ローンは適用されません。
不動産投資ローンと住宅ローンでは、金利に大きな違いがあります。住宅ローンは、返済原資を給与としているため、貸し倒れのリスクが少なく、金利は銀行により異なりますが0.5~2.0%程度と不動産投資ローン(1.5~4.0%程度)に比べて低い水準で借り入れることが可能です。
住宅ローン金利0.5%と不動産投資ローン1.5%では、総返済額をどのくらい抑えられるのでしょうか。それぞれ、以下の条件で計算してみました。
<金利0.5%で5,000万円を借りた場合>
毎月返済額 | 総利息額 | 総返済額 |
15万円 | 386万円 | 5,386万円 |
<金利1.5%で5,000万円借りた場合>
毎月返済額 | 総利息額 | 総返済額 |
17.3万円 | 1,213万円 | 6,213万円 |
金利0.5%と1.5%の違いはたった1%ですが、これで30年ローンを組んだ場合、月々の返済額は0.5%と1.5%の差は2.3万円となります。総返済額で比較すると827万円もの違いがあるわけです。自宅部分を50%以上にすると、金利だけでかなりのコストを抑えられるといえます。
賃貸併用住宅の賃貸一戸あたりの床面積を40以上240平方メートル以下にすることで、不動産取得税を大幅に抑えることができます。
不動産取得税とは、不動産取得時に1回だけ課税される地方税のことです。課税対象は、購入・建築・増改築・贈与などで、相続の時だけ非課税となります。支払い方法は、不動産取得時に各都道府県から数ヶ月ほどで納税通知書が届くので、それを使って納めるという形です。
▶不動産取得税の計算方法を以下に示します。
固定資産税評価額×税率 |
固定資産税評価額とは、総務大臣が定めた固定資産評価基準によって評価・決定された価格で、原則として固定資産課税台帳に登録された価格です。
▶不動産取得税の税率は下表の通りです。
区分 | 取得日 | |
平成20年4月1日
~ 令和6年3月31日 | ||
土地 | 3% | |
建物 | 住宅 | 3% |
非住宅 | 4% |
不動産取得税は、2024年3月31日までに取得した不動産に対して、軽減税率(3%)が適用されます。
ここでは、不動産取得税の軽減措置とは、どのような特例なのか概要を解説します。
▶建物に関する不動産取得税の軽減措置は以下の通りです。
適用要件 | 控除 | |||
建物
新築が対象 | 住宅 | 対象床面積
50平方メートル以上240平方メートル以下 | 1,200万円
長期優良住宅の場合は1,300万円 | |
非住宅
(賃貸) | 一戸当たりの床面積
40平方メートル以上240平方メートル以下 | 1,200万円 |
賃貸併用住宅の場合は、賃貸部分の要件を満たすことで「1,200万円×戸数」が控除額になります。
建物に関する不動産取得税の計算方法を以下に示します。
固定資産税評価額ー1,200万円×(自宅+賃貸戸数)×3% |
自宅部分も控除されるため、自宅と賃貸戸数分が控除されます。賃貸戸数によっては、特例が適用されると実質非課税となるケースもあり、賃貸併用住宅の節税効果を高めるには戸数と床面積に着目すると良いでしょう。
▶土地に関する不動産取得税の軽減措置は以下の通りです。
適用要件 | 控除 | |||
住宅用地 | ・建物の要件を満たしていること
・土地を先に取得した場合は、取得から3年以内に建物を新築すること ・建物の建築が先の場合(借地に新築)新築1年以内に土地を取得すること | いずれか高い方の額
A:150万円×3%(45,000円) B:土地1平方メートル当たりの価格×住宅の床面積の2倍×3% ※1戸当たり200m平方メートルを上限 |
土地に関する不動産取得税の計算方法を以下に示します。
(固定資産税評価額×1/2×3%)-控除額(A・Bのいずれか高い方の額) |
宅地の場合は、2分の1を乗じて計算します。建物の計算式と区別しておきましょう。
新築の賃貸併用住宅を土地付きで取得した場合は、「賃貸一戸の床面積が40以上240平方メートル以下」であれば、かなり大きな軽減措置が受けられるので、不動産取得税の負担が少なくなります。
参照元:不動産取得税|総務省
賃貸併用住宅にかかる建築コストを抑えるには、賃貸戸数を減らすのも1つの方法です。賃貸戸数が多くなると各戸にキッチンや浴室などの住宅設備に加え、ライフラインの工事費用などがかかります。
建築コストを抑えたいけれど、床面積を効率的に使いたいと考える方も少なくありません。そういった場合は、小さなワンルームを複数戸作るよりもファミリー向けにある程度広さのある住戸を配置して個数を減らすのが得策です。
建物をシンプルな形にすることで建築コストを抑えることが可能です。凹凸を少なくすると、外壁の外周が短くなり、外壁面積を減らすことができます。ゆえに、使う材料や工事の量を減らせるのです。
ここでは、総二階にするとなぜコストを抑えられるのかという点について、外壁面積以外のポイントに着目し、一例を挙げて解説します。
以下の図は、どちらも40坪の家です。
基礎面積は、部分二階が明らかに大きくなります。屋根面積にも違いがあり、真上から見た場合に基礎部分の大きな部分二階の方が大きいです。つまり、この図の部分二階は、60坪の総二階(1・2階とも30坪)と基礎・屋根面積が同じになるわけです。
したがって、総二階は同じ床面積の部分二階に比べて、基礎・屋根の施工面積が小さく手間が減るので、大幅にコストを抑えることができます。また、基礎面積が小さい総二階は狭い土地での建築も可能になり、土地の購入費用も抑えられる点も見逃せません。
設備や仕様のグレードを下げるのも、建築コストの調整に使われる方法です。自宅や賃貸部分において、設備や仕様にこだわりが多いほどローコストから遠ざかります。
キッチンや浴室のグレードを上げたり、内装のクロス・床材を高級感のあるものにしたりといった具合です。要望を全て叶えようとすると必然的に予算を超えてしまうので、優先順位をつけて床材や扉などの建具、設備を見直しグレードを下げることを検討してみてください。
ここまで、賃貸併用住宅をローコストで建てる方法について紹介しましたが、その際にいくつか注意すべき点があります。この点を押さえておかないと、建ててしまってから後悔することになりかねません。ここでは、賃貸併用住宅のローコストを検討する際に注意するポイントを以下で解説します。
戸数が少ないということは、1室でも空室になると収益に大きな影響を及ぼすという点に注意が必要です。例えば、4戸の賃貸があると仮定した場合、1室が空室になると25%減となり、収益が満室時の75%まで目減りしてしまいます。
そのため、少ない戸数で高い収益を上げるには、当然ながら家賃を高く設定しなければなりません。もし、周辺の賃貸相場より高くなる場合は、設備面を充実させるなどプラスαを検討する必要があるでしょう。それは、コストが増すことを意味します。戸数を減らしつつ建築コストを抑える場合には、空室時の収益への影響が最小限となるよう事前の空室対策が重要になります。
コストを重視するあまり、建物自体の機能性を下げてしまう可能性があります。そうなるとクレームが発生したり、退去する人が続出したりという事態になりかねません。主に、以下の3項目に関してローコストを検討する際に注意が必要です。
耐震対策は建築後でも可能ですが、その場合コストがかかります。また、地震はいつ起こるか予測はできません。新築と同時に制振装置などの耐震対策がおすすめです。
雨風から住宅を守る外壁は劣化のスピードが速く、一般的に10年を目安に塗替えが必要です。ローコストにするあまり耐久性の低い外壁を選ぶと、雨漏りなどが懸念されます。そのため、多少のコストがかかっても劣化しにくい耐久性や機能性の高い外壁にするべきです。
安い断熱材を使うと、新築なのに冬は寒さが厳しく夏は暑いといったことになり、光熱費が膨らみ維持費が高くなりがちです。後から断熱材を入れ替えることは可能ですが、莫大なコストを要します。ゆえに、コストが上がっても建築後の維持費を下げられる品質の良い断熱材を選びましょう。
賃貸併用住宅でローコストを検討する際は、設備のグレードに注意を払いましょう。グレードの低すぎる設備は、入居者の生活に負担となるので入居者の確保が難しくなる点は否めません。
どのような設備があるのか気にする人は多く、設備とそのスペックに不満があると、入居希望者の賃貸選びの段階ではじかれる可能性も高いです。周辺の賃貸物件をリサーチし、標準的な設備を確認して、導入する設備とグレードを決定すると良いでしょう。
賃貸併用住宅はコストを抑えたとしても、入居率や収益を上げるという観点からの建築プランが必要です。ここでは、ローコストで賃貸併用住宅を建てる会社の選び方について解説します。解説するポイントは、以下の4点です。
コストを抑えて賃貸併用住宅を建てるなら、賃貸併用住宅の施工実績がある会社を選びましょう。当然のことと思われるかもしれませんが、通常の戸建て住宅と賃貸住宅の特色を併せ持っているため、賃貸併用住宅を手がけたことの会社は選ぶべきではありません。収益性の観点から、どの部分のコストカットが有効なのか、あえてコストをかけるのはどの部分なのかを判断できないためです。
賃貸併用住宅の施工実績が豊富であり、確かな設計の技術力がある会社を選ぶと良いでしょう。ホームページの建築事例などを参考にし、その実績を確認しておくことがおすすめです。
賃貸併用住宅の建築コストを重視するのであれば、賃貸経営についてのノウハウがある建築会社を選ぶことが大切です。限られた空間で最大限に収益を上げる必要があるからこそ、収支計画の作成は重要になります。
建築コストの節約はもちろんのこと、賃貸需要や地域性の知見といった視点での収支プランは賃貸経営のノウハウがなければ、正確性に欠けるものになってしまいます。賃貸経営に関する不明点などに対して、分かりやすく丁寧に対応してくれるか見極めましょう。
住宅ローンもしくは不動産投資ローンなど、融資に関する相談も合わせてできる建築会社を選びましょう。賃貸併用住宅を建築する際、多くのオーナーは金融機関で融資を受けて建築をします。自己資金が十分でない場合や、勤務年数が基準に満たないケースでは、融資に不安を抱く方も多いでしょう。初めての賃貸経営となると、収支計画の立て方や見方が分からないという声もよく聞かれます。
収支計画に関しては、基本のフォーマットなどがある建築会社もあり、建築プランと一緒に融資をした場合の相談ができると安心です。
建築コストをできるだけ抑えたい場合は、複数の会社からの建築プランを検討することがおすすめです。賃貸併用住宅は、一般的な戸建て住宅よりも規模が大きく、コストも高額になります。また、同じ広さの土地に同じ床面積の建物を建てても、建築会社によって、全くイメージの異なる住宅になることも少なくありません。そのため、どの程度ローコストで建築ができるのか、各建築会社のプランを十分に比較検討する必要があるのです。
建築プランを検討する時は、以下の点に注意しましょう。
一度決定してしまうと、後から大幅な変更が難しい場合もあります。建築プランは、十分に時間をかけて選ぶようにしましょう。
賃貸併用住宅は建築コストが高めなので、できる限り費用を抑えて建てたい、家づくりにこだわりたいけれど高額な予算はかけられないと考える方も少なくありません。また、予算の立て方から土地選び、建築会社の選び方まで分からないことが多いものです。家づくりの道のりは長く、様々な不安や心配といった困りごとが発生するかもしれません。
そういった場合におすすめしたいのが、株式会社ランディックスが運営する、注文住宅マッチングサービス「sumuzu(スムーズ)」です。
sumuzuはお客様の家づくりを中立的な立場からサポートする専門家集団です。工務店・ビルダー・ハウスメーカー・設計事務所の選び方から、お客様のご希望に合わせた間取り計画・工事見積りの減額調整まで、家づくりに関する全ての悩みについてご相談いただけます。
なお、建築会社は、厳格な審査を通過した信頼できるハウスメーカーや工務店、建築家などが参加しています(建築会社一覧)。
資金計画を立てる上で重要になる、住宅の希望条件、予算に加えて、住宅ローンの紹介といった資金面の相談が可能です。見逃しがちな火災保険やアフターサービス、引っ越しについても相談可能です。さらに、インテリア、エクステリア、セキュリティなどにも対応しておりますので、住宅に関する様々な面をカバーしているということになります。
なお、これらの相談、ヒアリングなどは、チャット、メール、電話などで対応可能です。具体的な話は面談が必要ですが、オンラインによる面談(Zoom)にも対応しています。忙しい方にも安心の対応です。
この記事では、賃貸併用住宅をローコストで建てる方法やローコストを検討する際に注意すべき点、建築会社の選び方について解説しました。賃貸併用住宅は、自宅部分を床面積全体の50%以上とすることで住宅ローンの融資が可能です。不動産投資ローンに比べると低金利が魅力なので、大幅にコストが抑えられます。また、不動産取得税が自宅と住戸分に適用されるのも賃貸併用住宅ならではのコストカットの方法です。
ただ、ローコストを意識しすぎるのも賃貸経営に支障が出る可能性があるため、注意しなければなりません。できるだけコストを抑えつつ、希望の賃貸併用住宅の実現には、ぜひsumuzu(スムーズ)へ依頼してみてはいかがでしょうか。