賃貸併用住宅は、1つの建物に自宅と賃貸のスペースが設けられている住宅のことです。家賃収入をローン返済に充てられるというメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。この記事では、賃貸併用住宅のデメリットとその対処法、デメリットの少ない賃貸併用住宅の運用を目指すポイントについて解説します。

賃貸併用住宅5つのデメリット

賃貸併用住宅は、自宅と賃貸物件が併設されることでデメリットが生じます。賃貸併用住宅のデメリットは、主に以下の5つです。

  1. アパート経営に比べて収益性が低い
  2. 入居者によるトラブルへの対応が必要になる
  3. 戸建て住宅より修繕費用の負担が大きい
  4. 賃貸部分が隣接するので音問題が生じる
  5. すぐに売却できない可能性がある

1.アパート経営に比べると収益性が低い

賃貸併用住宅は、通常のアパート経営に比べて収益性が低い点がデメリットとして挙げられます。なぜなら、オーナーの自宅部分が収益を生み出さないためです。

自宅部分のスペースが大きいほど、賃貸のスペースを広く確保できません。そのため、1戸でも空室になると家賃収入に大きな影響が出てしまいます。全室賃貸となるアパートに比べ、同じ床面積でも収益性が低くなることを理解しておきましょう。

2.入居者によるトラブルへの対応が必要になる

入居者によるトラブルへの対応が必要になる点は、賃貸併用住宅特有のデメリットといえます。入居者と同居する住宅スタイルなので、どうしても入居者との距離が近くなるのがその理由です。

例えば、何か困った時に対応を求められる可能性もゼロではありません。設備の不具合や故障があると、業者への連絡や手続きをオーナーが対応するケースが多いです。入居者によるトラブルへの対応といった業務を負担するのは煩雑なので、この点は大きなデメリットになるでしょう。

3.戸建て住宅よりは修繕費用の負担が大きい

賃貸併用住宅は、経年劣化により外壁などの修繕が必要になります。戸建て住宅より建物規模が大きくなる賃貸併用住宅では、修繕費用の負担が大きくなる点がデメリットの1つです。

建物の規模や使用する材質、劣化状態によって修繕費用は変動しますが、その大規模な修繕費用は数百万規模になることも珍しくありません。

  • 外壁の補修や塗替え 
  • 雨漏りによる屋根の改修
  • 給排水管の修理・交換
  • ベランダ・バルコニーの防水工事
  • 水回り設備の修理・交換
  • 電球や壊れた備品などの交換
  • 入居者の退去にともなう原状回復費用

これらに該当する修繕には、入居者募集に致命的なダメージとなる項目もあるため、定期的もしくは不具合が出たら直ちに修繕しなければなりません。なお、安定した家賃収入があっても、高額な修繕が発生する年度は大幅な赤字になってしまいます。

4.賃貸部分が隣接するので音問題が生じる

賃貸併用住宅は、自宅部分と賃貸部分が隣接するので音問題が生じやすい点もデメリットになります。賃貸併用住宅における間取りのパターンとして、縦割り型と横割り型があります。各間取りで特に音問題が懸念される箇所は、下図の赤線部分です。

例えば、水回りの給排水音、足音、声、テレビなどの音量、ドアの開け閉めの音など様々な生活音が発生します。音に対する感覚は個人差が大きく、同じ環境下でも快・不快を感じる度合は一律ではありません。しかし、ひとたびトラブルになると解決に労力を要するケースも少なくないため、オーナーにとっては対処に苦慮する問題になるでしょう。

5.すぐに売却できない可能性がある

売却することになった場合に買い手がつきにくく、すぐに売却できない可能性がある点も理解しておくべきデメリットといえます。賃貸併用住宅は、戸建でありながら賃貸部分があるため、基本的に賃貸併用住宅を購入したいという人にしか需要がありません

中古の戸建てを求める人にとっては賃貸部分が不要です。また、不動産投資で高い収益を見込んでいる人はアパートやマンションといった投資用物件に力を入れています。いざ売却しようと思っても、希望する時期にスムーズに売却することが難しい点は賃貸併用住宅のデメリットになるといえます。

賃貸併用住宅によるデメリットの対処法

ここまで、賃貸併用住宅のデメリットを紹介しました。デメリットであっても、適切に対処すれば回避できるので参考にしてみてください。

ここでは、デメリットの対処法として、下記の5つについて解説します。

  1. 家賃収入とローン返済のバランスを考慮し資金計画を立てる
  2. 賃貸部分の管理を専門の管理会社に委託する
  3. 建物全体の修繕計画を作成し費用を積み立てる
  4. 防音性に優れた構造や間取りを工夫する
  5. 将来的に需要が落ちない立地を選ぶ

1.家賃収入とローン返済のバランスを考慮し資金計画を立てる

賃貸併用住宅は、アパート経営に比べて収益性が低い点がデメリットになることから、家賃収入とローン返済のバランスを考慮し、無理のない資金計画を行うことが大切です。自宅に賃貸部分がプラスされるため、建築費用は高額になります。そのため、月々のローン返済額もそれ相応の額になるでしょう。

賃貸併用住宅の資金計画で、考えなければならない項目を以下に示します。

総費用

・建築費

・土地購入資金

・諸経費(借入諸経費、不動産取得税、登記関連費用など)

資金

・借入金

・自己資金

年間収入

家賃収入

年間支出 

・ローン返済額

・固定資産税・都市計画税

・共用部分の光熱費

・修繕費の積み立て

・損害保険料など

・所得税・住民税

満室の場合だけでなく、空室により家賃収入が減少するリスクも考慮しておいた方が良いです。加えて、空室期間が続く場合やローンの金利タイプで変動金利を選択すると、金利の上昇に伴い返済額が増額になることも予想されます。そのため、余裕のある資金計画が欠かせないのです。

2.賃貸部分の管理を専門の管理会社に委託する

オーナー自身で管理しきれない業務は、専門の管理会社へ委託するのがおすすめです。単純にコストだけで判断すれば、管理費が発生しないオーナーの自主管理が良いでしょう。しかし、管理にかかる手間や時間を考慮すると、管理費がかかっても管理を委託した方が良い場合もあります。

管理会社の主な業務は、以下の通りです。

<入居前の業務>
  • 入居者の募集
  • 入居者の審査・家賃保証の加入手続き
  • 賃貸借契約の手続き

<入居中の業務>

  • 入居者からのクレーム対応・緊急対応
  • 賃料支払い滞納者への督促回収業務
  • 契約更新手続き
  • 退去手続き(立会い)
  • 原状回復工事

オーナーの仕事との兼ね合いから、これらの業務全てを委託することも可能です。管理コストを少しでも下げるのであれば、自分でできることは自主管理するのも1つの方法になります。自主管理することと専門会社に委託することを把握し、自分の要望に沿って動いてくれる管理会社を選ぶことが大切です。管理業務は、賃貸併用住宅を運営する手段の1つであるため、物件の収益を最大化するためにどうするかという観点で判断しましょう。

3.建物全体の修繕計画の作成し費用を積み立てる

大きな負担となる修繕費用の対処としては、毎月の家賃収入から修繕費用を計画的に積み立てておくのが基本的な対処法となります。賃貸併用住宅の場合、賃貸部分と自宅部分の両方に修繕が発生するので、建物全体の修繕計画を立てなければなりません。

修繕計画のポイントは、以下の2点が挙げられます。

●一定年数の経過ごとに行う修繕費用

●不測の事故や災害などで必要となる修繕費用

修繕が必要になってから、慌てて資金を調達するのは大変です。賃貸併用住宅の運用を開始した直後から、毎月少しずつ長期にわたって積み立てていきましょう。

修繕費用の経費計上に関する注意点

修繕費用が経費にできるのは、通常の維持管理や修理のために支出されるものであり、60万円未満などの規定があります。それ以外は、修繕費ではなく資本的支出(建物の資産価値を高める支出の場合)として耐用年数を計算した上で減価償却が必要です。

<減価償却とは

建物や設備などの資産(減価償却資産)において、使用開始時から経過した年数を一定の方法で分割し経費計上する会計処理です。 業務に使っていない固定資産は減価償却できないため、自宅部分の修繕費用は経費に該当しません。

参照元:〔資本的支出と修繕費等〕|国税庁

参照元:No.2107 資本的支出を行った場合の減価償却|国税庁

4.防音性に優れた構造や間取りを工夫する

音問題に対する対処は、防音性に優れた構造や間取りを工夫するのが有効です。ここでは、構造と間取りを防音対策の観点から解説します。

賃貸併用住宅で選ばれる構造と防音性能

建物の構造は、大きく分けて木造、鉄骨造、鉄筋コンクリートがあります。防音性能は、以下の順で高くなります。

防音性は、密度の高い構造であるほど高くなる

木造<鉄骨造<鉄筋コンクリート造

鉄筋コンクリート造は、その構造内部がコンクリートで満たされていることから密度が高いため防音性に優れています。防音性の高い賃貸併用住宅にするのであれば、鉄筋コンクリート造がおすすめです。ただ、窓の位置や構造によって防音性の低下を招くことがあります。

鉄筋造の防音性は、さほど高いとはいえません。木造より密度がある分、音を遮ることができるという程度です。鋼材の厚さが6ミリメートルを超える重量鉄骨は、軽量鉄骨よりも壁や床の強度が増すため、防音性が高くなるといえます。

木造はその構造材が軽い上に密度が低いため、基本的に防音性は他の構造よりも劣ります。建物の構造により防音性を高めることは可能ですが、全ての音を完全に遮断することはできない点を理解しておく必要があります。

また、建築会社によっては独自の工法で防音・遮音性能を高めるシステムを提案してくれることもあるため、建築会社を検討する際はこうした点を意識してみると良いでしょう。

間取りの工夫

賃貸併用住宅の防音性を高めるには、間取りを工夫することも効果的です。例えば、隣り合う住戸は、キッチンや浴室を合わせ面で配置し、住戸を水回りで仕切る間取りにします。上下階の場合は、水回りを同じ場所に配置するといった具合です。防音性を高めるには、音の発生源から距離をおいたり、音を遮るものを設置することが有効になるといえます。そうすることで、生活音が気になりにくくなるでしょう。

5.将来的に需要が落ちない立地を選ぶ

賃貸併用住宅はすぐに売却できない可能性があり、そういったデメリットへの対処は、将来的に需要が落ちない立地を選ぶことです。

将来的に需要が落ちない土地とは、以下のような条件を満たす土地です。

  1. 人口が多い
  2. 駅が近い
  3. ハザードリスクが少ない
  4. 道路に面した整形地(正方形や長方形)
  5. 幅広い公道に面している
  6. 様々なタイプの建物が建築できる

賃貸需要が落ちない立地であれば、将来的に引き続き賃貸併用住宅を運用する際に、入居者を確保しやすいでしょう。あるいは売却するにしても、資産価値を維持できるため買い手もつきやすく売却がスムーズになります。

デメリットの少ない賃貸併用住宅の運用を目指すポイント

ここまで、賃貸併用住宅のデメリットとその対処法について解説しました。では、その対処法を踏まえてどのように賃貸併用住宅を運用していけば良いのでしょうか。ここでは、デメリットの少ない賃貸併用住宅の運用を目指すための5つのポイントを解説します。

  1. 適正な家賃設定
  2. 適切なタイミングで行う修繕
  3. ニーズに合った設備の導入
  4. 念入りな清掃
  5. 管理会社との連携

1.適正な家賃設定

安定した賃貸併用住宅の運用には、適正な家賃設定が求められます。新築当初の家賃設定のままでは、入居希望者から敬遠されかねません。周辺で新築された賃貸物件で新規に募集した際の家賃と同等もしくはそれ以上であった場合に、入居希望者からすると割高感があるでしょう。そういった場合は、家賃を適正な価格に見直しする必要があります。

家賃の見直しは、最寄駅からの所要時間・間取りのタイプ・築年数などの条件が同じ物件と比較することが大切です。総務省の調査によると、家賃の築年数による経年変化率(下落率)は1年に約0.8%程度下がる傾向にあることが示されています。

  • 平均築年数の前年差を考慮した経年変化率
非木造共同住宅木造共同住宅
-0.76%-0.84%

毎年0.8%ずつ家賃の下落が進んでいくと仮定すると、20年後には約16%も家賃が下落していると考えておく方が良いでしょう。居者目線で、家賃が適正であるか見直すことは大切な視点といえます。

参照元:借家家賃の経年変化について|総務省

2.適切なタイミングで行う修繕

安定した運用を目指すのであれば、適切なタイミングで修繕を行うことも重要なポイントです。設備の故障や不具合が起こった時に即座に対応し、老朽化している箇所は修繕を施して、古さを感じさせないように工夫しなければなりません。

あらかじめ修繕に必要な資金を準備し、適切なタイミングでの修繕を意識しておくことが望ましいです。ただし、高額になりがちなので費用対効果を考えておきましょう。

3.ニーズに合った設備の導入

入居者のニーズに合った設備の導入も、周辺の賃貸物件との差別化を図る上で重要になる運用のポイントです。情報収集の1つとして参考になるのは、設備に関するランキングです。ここでは、株式会社リクルート住まいカンパニーのランキングを紹介します。

この調査で、「次に引っ越すときに欲しい設備」の上位は以下の通りです。

①エアコン:95.3%

②都市ガス:86.2%

③TVモニター付きインターフォン:82.8%

④追い焚き機能付きの風呂:79.0%

⑤宅配ボックス:78.1%

⑥温水便座:77.1%

⑦無料インターネット:73.3%

⑧Wi-Fi:71.6%

⑨遮音性の高い窓:70.7%

⑩24時間ゴミ出し:70.7%

また、世帯構成別ではファミリー・2人暮らしで設備全般に必要度が高く、1人暮らし・学生では宅配ボックスと温水洗浄便座の必要度が8割以上となっています。

これらの設備が導入されていない場合には、入居者の物件探しの段階でふるい落とされる可能性が高いです。設備に関するランキングなども参考にしながら、賃貸併用住宅に導入できる設備を検討してみましょう。

参照元:2016年度賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査(首都圏版)|⑥次に引っ越すときに欲しい設備|株式会社リクルート住まいカンパニー

4.念入りな清掃

入居希望者が最終的に賃貸物件を決めるのは、物件の内覧です。その印象を左右するのが管理状態となるため、清掃を念入りにすることが安定した運用を目指す上で重要なポイントになるでしょう。

株式会社リクルートの調査によると、オンライン内見の利用が契約者の約2割にまで普及していることが示されました。加えて、オンラインだけで内見を実施した人の内見物件数は、オフラインでのみ内見を実施した人の見学物件数を上回っています。内見のオンライン化が進み、オンライン契約の認知率が実に7割を超えているのです。

写真である程度の状態はイメージできますが、実際に現地を確認すると、印象が異なるというケースは少なくありません。気軽にオンラインで内見ができるからこそ、住戸のちょっとしたほこりや汚れなども目につきやすいため、物件の清掃は念入りに行うことが大切になります。

参照元:2020年度 賃貸契約者動向調査(首都圏)|株式会社リクルート

5.管理会社との連携

安定した賃貸併用住宅の運用を目指すには、賃貸併用住宅の持つ魅力だけでなく、管理会社との連携がポイントです。入居者募集を管理会社に委託しているのであれば、入居者募集の状況を確認し、家賃設定など懸念点があれば改善する方向で検討しなければなりません。

そういう意味では、管理会社との連携が賃貸併用住宅の運用に関して成否の鍵となるといえます。管理会社任せにせず、運用のパートナーとして信頼関係を構築しつつ密接に連携を図ることが重要になるのです。

賃貸併用住宅のデメリット回避は入念な計画が重要

賃貸併用住宅には、いくつかのデメリットがあります。あらかじめデメリットを把握し、工夫することが重要です。賃貸併用住宅のデメリットをできるだけ最小限にするには、家づくりのプロへの相談をおすすめします。
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土地探しから建築プランの決定までがスムーズに

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なお、これらの相談、ヒアリングなどは、チャット、メール、電話などで対応可能です。具体的な話は面談が必要ですが、オンラインによる面談にも対応しています。忙しい方にも安心の対応です。

最後に

この記事では、賃貸併用住宅のデメリットとその対処法、デメリットの少ない賃貸併用住宅の運用を目指すポイントについて解説しました。賃貸併用住宅にはいくつかのメリットが存在しますが、あらかじめ適切に対処し、運用のポイントを踏まえることで、デメリットの少ない賃貸併用住宅となります。

具体的に賃貸併用住宅の運用を検討する場合は、どのようなプランが自分に向いているのか、家づくりのプロに相談するのがおすすめです。その際は、注文住宅マッチングサービス「sumuzu(スムーズ)」へ依頼することを検討してみてはいかがでしょうか。