崖の近くや傾斜地に住宅を建てたいけれど、どうすればよいのか分からないと悩む方は少なくありません。がけ条例にかかる土地を購入すべきか、迷っている方もいらっしゃるでしょう。

通常、崖がある土地に住宅を建てる場合、防護壁を設置する必要があります。安全が確保できなければ、建築できないからです。しかし、鉄筋コンクリート(RC)住宅であれば、防護壁を設置することなく建築できます。

この記事では、防護壁の概要やRC住宅に設置が不要な理由を解説します。崖付近にRC住宅を建てるポイントにも触れるので、崖の近くや傾斜地での家づくりを検討している方は参考にしてみてください。

防護壁とは崖下に建築する際に設置する構造物

防護壁とは、崖下に建築する際に設置する構造物です。崖地や傾斜地は、平坦な土地と比べて価格が安いメリットがあります。しかし、平坦な土地とは違い、自治体によって法律で制限が発生する必要なケースがあるので注意しなければなりません。

ここでは、崖について確認し、防護壁の役割と押さえておきたい法律について解説します。

そもそも崖とは

防護壁の役割を理解するには、まず崖の意味を知る必要があります。崖と聞くと、山のような急斜面の土地をイメージする方が多いでしょう。実際には、道路より高い土地や隣地との高低差がある場合でも崖とみなされることも少なくありません。

崖について、がけ条例によって定義づけされているので以下で確認しましょう。

傾斜が30度を超える

がけ条例で定義される「崖」とは、勾配が30度を超える傾斜地を指します。この基準となる30度は、土などを積み上げたときに崩れることなく安定をしている斜面の最大角度です。

傾斜が30度を超える土地は、土が下方向へ滑り落ちやすい状態といえます。豪雨や地震といった自然災害が発生した際には、土砂崩れの可能性が高まるでしょう。

このような傾斜地に建築する場合は、がけ条例による規制が適用され、安全を確保するための対処が必要になります。災害時のリスクを最小限に抑えるうえで、土地の傾斜を正確に評価して適切な対策を講じることが大切です。

傾斜地の高さが2mまたは3mを超える

がけ条例に関する規制は、傾斜の角度に加えて高さにも注意が必要です。具体的には、傾斜地の高さが2~3メートルを超える場合、建物を建てるには、崖から一定の距離(がけの高さの2倍以上)を保たなければなりません。 

高さの基準は自治体によって異なり、傾斜の上端から下端までの垂直距離で測定されます。高さの数値が大きいほど、建物は崖から離れて建築する必要があります。したがって、予定地における傾斜の角度だけではなく、その高さを正確に把握し、お住まいの地域でのがけ条例を確認しましょう。

防護壁はがけ崩れなどの被害から建物を守る

崖の下に建物がある場合に、崖崩れなどの被害から建物を守るのが防護壁です。防護壁は待ち受け擁護とも呼ばれ、急傾斜地の下部から離れた場所に設置して、斜面上部からの崩れてきた土砂や落石を受け止めます。

また、道路から下がった土地でも、建物と斜面の間に防護壁を造るケースもあります。土地購入の際には、がけ条例や防護壁の必要性を不動産会社もしくは自治体で確認しましょう。

法律により設置が義務づけられている

宅地造成及び特定盛土等規制法では、崖崩れや土砂災害が発生する可能性が高い地域での擁壁や防護壁の設置が義務づけられています。宅地造成工事規制区域に当てはまる地域では、自治体の許可を受けなければ工事ができません。自治体に許可を得る必要がある工事かどうかは、建築会社に確認すると良いでしょう。

また、建築基準法(がけ条例)でも、高さ2メートルを超える擁壁を設置する場合は事前の確認申請が必要と定められています。前面地盤が斜め(坂道)の場合で一部分が、2メートルを超える場合も対象です。

参照:宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)の概要について|国土交通省

鉄筋コンクリート(RC)住宅には防護壁が不要

がけ条例にかかる傾斜地や崖地では、防護壁が欠かせない対策のひとつです。ただし、木造で建てる場合には以下のケースで擁壁や防護壁がなくても建てられる可能性があります。

一例として、東京都では以下のケースを挙げます。

  • 建物の端から崖の上端または下端までの水平距離が、崖の高さの2倍以上離れている
  • 斜面の勾配が30度以下の崖
  • 堅固な地盤を切って斜面としている崖
  • 安全上支障がない崖

しかし、鉄筋コンクリート(RC)住宅であれば、上記に該当しない地域でも防護壁を設置する必要はありません。

ここでは、鉄筋コンクリート(RC)住宅には防護壁が不要になる理由のほか、崖地にRC住宅を建てるメリットや注意点を解説します。

RC造は建物自体が防護壁を兼ねる構造体のため

RC造は、たとえ崖崩れが発生したとしても、防護壁を兼ねる構造体です。RC造は、土台と建物部分を一体化しており、建物自体が土砂を食い止める役割を果たします。そのため、わざわざ防護壁を設置する必要がないのです。

自治体によっては、擁壁に関する助成金制度がありますが、擁壁工事には数百万以上かかるケースも珍しくありません。道路幅が狭くて工事車両が入れない場合や、通行制限を必要とする場合では、さらにコストアップするでしょう。

その点、RCの場合は防護壁単体で作る必要がないので、余分な経費がかからない構造体といえます。

RC造であれば崖地でも土地を有効活用できる

土地の背中側が崖状になっている立地で住宅を建築するとき、木造や鉄骨造だと敷地面積を有効に使えません。なぜなら、傾斜から一定の距離を離した場合、敷地面積の半分も使えないケースがほとんどだからです。敷地からはみ出してしまう場合さえあります。

唯一RC造であれば、崖から何メートルも離して建てる必要もないため、土地を最大限有効に活用できるのです。土地の高低差を利用して、見晴らしの良さやダイナミックなロケーションを楽しむことが可能になります。

RC造でも設計に制限がかかる場合がある

RC造だからといって、平坦な敷地での建築と同じようにできるわけではありません。例として、傾斜30度の範囲内に開口部を設けないといった制限がかかる場合があります。崖に面している壁面の開口部が、土砂の侵入に対して安全であると判断できない可能性があるからです。

RC造は、現場で鉄筋や型枠を組み立てた後にコンクリートを流し込むため、1階あたりの高さを自由に設定できます。土地の形状に合わせて天井高を決められるので、傾斜30度の範囲より上部に窓を設置すれば、自然光や風を取り入れられるので安心です。

1階がRC造にする混構造は建てられる可能性がある

崖地や傾斜地では、1階をRC造にする混構造であれば建てられる可能性があります。

混構造とは、複数の異なる構造材を使用した構造です。RC造と木造、RC造と鉄骨造などいくつかの組み合わせがあります。ただ、RC造はコストが高いため、木造と組み合わせることで最も建築費を抑えられるでしょう。

また、混構造は異なる構造を組み合わせて建てるため、確認申請の際に詳細な構造計算が求められます。さらに、混構造の場合は工事の期間が長くなる点も注意してください。

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崖付近に鉄筋コンクリート(RC)住宅を建てるポイント

崖付近にRC住宅を建てる際には、その土地が建築可能かどうかを調べなくてはなりません。土地が、がけ条例にかかっているか調べるには、地域の条例を確認する必要があります。

がけ条例の対象になるかどうかを確認する方法は、以下のとおりです。

崖付近にRC住宅を建てるポイントは、以下の3つです。

  1. 自治体のホームページでがけ条例について調べる
  2. 自治体の建築に関する専門窓口で確認する
  3. 建築士など家づくりのプロに相談する

1.自治体のホームページでがけ条例について調べる

多くの自治体が、ホームページ上でがけ条例の詳細を公開しています。これにより、条例の具体的な内容や、対象となる土地条件を確認することが可能です。

土地を購入してから規制に抵触していることが分かった場合、大きなトラブルに発展する可能性があります。建築予定の土地が崖に面している場合や2メートル程度の高低差のある土地であれば、まず自治体でがけ条例を確認するようにしましょう。

2.自治体の建築に関する専門窓口で確認する

自治体の専門窓口への相談は、建築計画に関する疑問や不明点を解消する際に有効です。

この部署には、がけ条例のほかにも建築に関する様々な規制について専門知識をもつ担当者がいるので、建築予定地が条例の対象なのか正確に判断してくれます。建築計画に関わるリスクを事前に把握し、適切な準備ができるでしょう。

自治体の専門窓口に出向く際には、図面など土地に関する資料を揃えておくと安心です。

3.建築士など家づくりのプロに相談する

がけ条例の対象になるか判断の難しい場合は、建築士など家づくりのプロに相談することをおすすめします。建築に関する豊富な知識と経験をもち、建築予定地ががけ条例にかかるかどうかを分析してくれます。

また、建築士は条例を踏まえたうえで、要望に合わせた設計の提案が可能です。建築計画の適法性を確認し、将来のリスクを回避するための適切な方法を知りましょう。

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崖付近にRC住宅を建てる際には地盤調査が必須

崖地にRC住宅を建築する際は、地盤の安全性を確認するために地盤調査が必須になります。崖崩れなどの自然災害が起こる可能性も考慮しなければなりません。RC住宅に防護壁が不要であっても、自然災害に万全とはいえないからです。

RC住宅を建築する際に地盤調査が必要になる理由は、主に以下の3つです。

  1. 造成方法によって地盤の強さが異なる
  2. 既存の擁壁がある場合は土地が不安定な可能性がある
  3. 軟弱地盤の場合は地盤改良工事が必要になる

1.造成方法によって地盤の強さが異なる

崖地が分譲で売りに出されている場合は、山を切り崩したり、土を盛ったりして、宅地造成が施されています。南向きの斜面を切り開いて造成された土地は、南側よりも北側のほうが高い位置になるのが一般的です。その分、日当たりや見晴らしが良くなりますが、造成方法によって地盤の強さが異なるので注意が必要です。

  • 切土:元の地盤面を切り崩ずすため、地表面より深い場所にある地盤になり全体的に均一で締まっている
  • 盛土:元の地盤面の上に新たに土を盛り足すため、ふたつの層に分かれ、境界部分がすべりやすい

上記のほかにも、敷地内で盛土の厚さが異なる場合や、切土と盛土が混在した異種地盤は盛土側が沈下しやすいので、特に警戒してください。

2.既存の擁壁がある場合は土地が不安定な可能性がある

高低差のある土地では、土地が低い側に擁壁(コンクリート塀)が設置されている場合があります。擁壁に近い部分は埋戻し土が不安定な可能性があるので注意しましょう。時間の経過とともに、雨水の影響で沈下しやすくなり、地割れや建物全体が傾いて沈下するリスクが高まります。

また、検査済証の交付がある擁壁であれば安心できますが、外構などで作るブロック塀に亀裂がみられるものは、地盤沈下の影響が考えられるので注意しましょう。

3.軟弱地盤の場合は地盤改良工事が必要になる

RC住宅は重量があるので、建物を支える地盤の地耐力に問題があると、地盤改良工事が必要です。軟弱地盤は、柔らかい粘土や密度の低い砂で構成されています。

軟弱地盤の例を確認しましょう。

  • 海や河川、沼、田んぼを埋め立てて造られた土地
  • 近くに用水路がある
  • 水路が地下に埋め立てられた付近にある土地
  • 過去に川の氾濫が起こった地域
  • 粘土や砂を多く含む地層
  • 傾斜地に盛土を盛土をして造られた土地
  • 擁壁の上にある土地

基本的に、水分量の多い地盤や地下水位の高い地盤は、地盤が弱いと考えましょう。また、埋め立てられた地下水を多く含む土地など、緩い砂地盤の場合も要注意です。地震の際に地盤が液状化する可能性があります。

軟弱地盤は建物が傾いて沈下するリスクが高いため、専門家による地盤調査を実施して、正確な地盤状態を把握することが大切です。

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最後に

この記事では、防護壁の概要やRC住宅に設置が不要な理由、崖付近にRC住宅を建てるポイントを解説しました。崖地や傾斜地に建物を建てる場合は、地域の自治体が定めるがけ条例によって防護壁が必要です。

しかし、RC造であれば、建物自体が防護壁を兼ねる構造体のため、設置する手間も費用もかかりません。崖から一定の距離を確保する必要がなく、開口部の制限があるものの、土地を有効活用できるのは大きなメリットといえるでしょう。

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