渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
この記事の監修者
渡辺知哉
設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。
太陽光パネルとは、太陽エネルギーで電力を作り出す発電設備です。
電気代の急激な値上げで、節電に取り組まれている方が多いでしょう。自宅で電気を作る方法として太陽光パネルを設置するのも電気代の節約に有効な手段のひとつとして注目されています。
ただし、太陽光パネルを設置するといってもメリットやデメリットがあるため、どのように選べば良いのか分からない方も少なくありません。
この記事では、太陽光パネルが注目される背景のほか、設置するメリットやデメリットを踏まえて、事前に知っておきたいポイントを解説します。注文住宅に太陽光パネルの設置を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
注文住宅に太陽光パネルが注目される背景には、地球温暖化防止のために効果的な手段とされている点が挙げられます。地球温暖化対策は、温室効果ガスの排出を削減する必要があり、石油などの化石燃料から太陽光発電といった再生可能エネルギーへの転換が求められているのです。
日本は、国内の温室効果ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2030年までに新築戸建て住宅の6割に太陽光パネルの設置を目指しています。
また、昨今の燃料価格が上昇している影響によって、電気代が高騰しているのもポイントといえるでしょう。
参照:今後の再生可能エネルギー政策について|資源エネルギー庁
東京都では2025年4月から大手ハウスメーカーに対して、住宅の供給数に応じた太陽光パネル導入の目安と達成状況の報告を義務付ける制度が施行されます。戸建て住宅に対する義務化は全国で初めての取り組みです。
また、神奈川県川崎市において、2023年3月に戸建て住宅を含む新築建物に太陽光パネルの設置を義務づける条例改正案が可決され、2025年4月から設置の義務化が始まります。
京都府、群馬県、福島県大熊町でも、特定の条件に該当する建物に太陽光パネルなど発電装置の設置を義務化した条例を制定しているため、自治体の動向をチェックしましょう。
太陽光パネルが地球温暖化防止に効果的であり、東京都をはじめ自治体で義務化に向けて取り組んでいることを理解したところで、注文住宅への設置についても考えてみましょう。
実際に設置すると、どのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは主な4つのメリットを解説します。
発電した電力のうち家庭で消費しきれなかった分は、各地域の電力会社へ売却して収入が得られます。
例えば、夫婦共働きで昼間に不在がちな場合、せっかく発電してもムダになってしまうのではと考えるかもしれません。太陽光パネルを設置した効果を実感しにくいでしょう。
しかし、FIT制度(固定価格買取制度)では、一般家庭に設置されることの多い容量10kW未満の太陽光パネルの場合に10年間は一定の価格で買い取ってもらえます。買取価格は年度によって異なり、年々下がっているとはいえ、安定した売電収入を得られるのはメリットといえるでしょう。
自宅に太陽光パネルを設置する場合は 「雑所得」としての申告が必要になります。売電収入から必要経費を差し引いた所得金額が20万円を超えると、所得税の確定申告が義務付けられているためです。
また、20万円を超えなくても市・県民税の申告をする義務があるので、いずれにしても毎年申告が必要になるので注意してください。太陽光発電の所得金額が赤字になった場合は申告する必要はありませんが、他の雑所得と合算することで得になる場合があります。詳しくは、管轄の税務署に相談すると良いでしょう。
参照元:自宅に設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入|国税庁
太陽光パネルを設置すると、昼間に発電した電気は家庭で使用でき、電力会社から購入する電気量を減らせるため、電気代の削減が可能です。
昼間より夜に電気を多く使う家庭では、電気代が減らないのでは?と考える方がいらっしゃるかもしれません。そういう場合は、蓄電池を導入しましょう。昼間に発電して余った電気を蓄電池に貯めて、発電しない夜にその電気を使うことができます。電気代0円となる可能性もあるでしょう。
太陽光パネルを屋根の上に設置すると、夏は涼しく冬は暖かい住まいになります。
夏に室内温度が上昇する要因のひとつに屋根からの熱があり、直射日光を遮る効果があるため涼しくなるのです。冬は室内から外部への放熱を抑え、暖気が逃しにくくなるので、暖かく過ごせます。
地震や台風といった災害の多い日本は、停電で電気が使えない事態に備えておきたいと考える方は少なくありません。災害などで停電になったとき、太陽光パネルがあれば非常用電源として使用できるので安心です。
停電が発生したときに「非常用電源」として使うことを自立運転といい、パワーコンディショナーにあるスイッチで切り替えます。専用コンセントを使って、家電製品やスマートフォンの充電が可能です。
自立運転の場合は、昼間の発電する時間帯でなければ活用できませんが、蓄電池を併設しておくと、停電時の夜間にも一定量の電力をカバーできます。
太陽光パネルによって得られる電力は、発電の際に二酸化炭素を排出しない環境にやさしいエネルギーといえます。二酸化炭素は、地球温暖化の要因となる温室効果ガスのひとつです。
化石燃料を使用した火力発電は、二酸化炭素を多く排出することからみても、環境にやさしいと捉えられるでしょう。
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太陽光パネルによる発電は、環境にやさしいのはもちろんのこと、電気代の削減も可能です。余った電力は売電で収入を得たり、蓄電池を併用して非常時の安心など、多様なメリットがあります。
その反面、以下のようなデメリットがあるので、事前にメリットと合わせて理解し、納得しておくことが大切です。
太陽光パネルの設置を考える上で、初期費用にいくらかかるのか気になる方が多いでしょう。
2023年に公表された資源エネルギー庁のデータによると、新築住宅での太陽光パネルの費用は1kWあたり平均28.8万円です。このうち太陽光パネルは14.7万円、工事費7.6万円となっています。
メーカーやパネルの種類によって費用は異なりますが、5kWを想定した場合に、設置費用の相場は144万円程度といえるでしょう。
太陽光パネルでの発電は、四季がある日本において天候の影響を受けやすくなります。日照時間や日射量に応じて発電量が決まるためです。具体的には、曇りの日は晴れた日の40%~60%、雨の日にいたっては25%程度まで発電量が下がります。
また、太陽光パネルに雪が積もってしまうと発電できなくなる点にも注意が必要です。天候の影響により、想定通りの効果が期待できない可能性があるので注意しましょう。
太陽光パネルを安全に維持・運用するためには、定期的な点検やメンテナンスが必要です。異常や不具合を早期に発見し、故障を未然に防止する効果があります。
また、太陽光パネルの長期的な出力保証が注目されていますが、寿命は長いとはいえ、経年劣化による性能低下は否めません。売電収入を得るためにも、発電維持管理をいかに確実におこなえるかが重要です。
検討する際に、メンテナンスも含めたアフターサービスを業者に確認すると良いでしょう。
太陽光パネルの設置を希望する場合は、あらかじめ設置を想定して住宅設計を依頼しましょう。日照条件によって設置できない可能性があるからです。
発電量との兼ね合いで設置するメリットがないのは、以下のケースが挙げられます。
また、屋根に一定の面積がなければ設置できません、屋根の面積や角度により日照条件が重要になるため、小さすぎる屋根には導入が難しくなります。東京都では、「屋根面積が20㎡未満の狭小住宅」を太陽光パネル設置の義務対象外としています。
太陽光パネルを設置するデメリットのうち、初期費用や天候による日照時間については解消する方法があります。デメリットを読んで、太陽光パネルの設置が難しそうと感じた方は、以下の方法を確認してみてください。
太陽光パネルは初期費用が高額になりますが、国や自治体は「2050年カーボンニュートラル」を推進しているため、太陽光パネルの設置について補助金制度を利用できる可能性があります。
国や自治体の補助金が活用できる場合は、その分コストを下げられます。さらに、太陽光パネルの費用は下降しているため、以前より導入しやすい価格になっているのもポイントです。注文住宅の施工会社への相談のほか、各自治体へ問い合わせてみましょう。
東京都では、2024年度における太陽光パネルの設置や蓄電池に対して補助金があります。5月末頃に補助金の事前申し込みがスタートされる見込みです。
参照:太陽光発電設備、蓄電池の設置等住宅補助概要|東京都概要
気象庁のデータから直近10年間(2014年から2023年まで)における東京の年間日照時間を見ると、最低は2016年の約1841時間、最高は2023年の約2259時間と約1.23倍の差があります。
したがって、資金計画では太陽光パネルの導入による電気代や売電収入に「23%程度の変動」を想定しておくと良いでしょう。
太陽光パネルを設置すると、毎日の電気使用量や発電量のほか、売電実績をモニターで確認できます。天気予報などを参考に、支障のない範囲で電気の使用量をコントロールして電気代を抑えられないか検討しましょう。
太陽光パネルを設置するうえで大切なのは、信頼できる設置業者選びです。
注文住宅の場合は、建築を依頼するハウスメーカーや工務店、あるいは太陽光パネルの専門業者に依頼することになります。
工務店やハウスメーカーに依頼をすると、建築と太陽光パネル設置の両方を1社に任せられるため、窓口が1つで済むメリットがあります。ただし、専門業者に比べると取り扱っているメーカーが限られる場合があるので注意しましょう。
専門業者に依頼する場合は、様々なメーカーの製品を取り扱っているため、納得のいく太陽光パネルを選べるのがメリットといえます。注文住宅は設置場所など細かな調整が必要になるので、工務店やハウスメーカーとしっかり連携をとれるかがポイントです。
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太陽光パネルの設置を考える時、何を判断基準に選ぶのが良いか分からない方も多いでしょう。販売価格だけで選んでしまうと、思うような発電量を得られない可能性があります。設置してから後悔しないよう、慎重に検討しましょう。
太陽光パネルを選ぶポイントは、以下の4つです。
太陽光パネルを選ぶ際に、最初に着目したいのがkW単価です。kW単価とは、太陽光発電1kWあたりの価格を指し、1kW発電するのにいくらかかるのかが分かります。
kW単価の計算式は、以下の通りです。
kW単価=費用総額÷太陽光パネルの発電量(kW) |
kW単価は全てのコストを元に計算するので、費用感を比較しやすいといえます。
前述の通り、新築住宅での太陽光パネルの費用は1kWあたり平均28.8万円です。この価格を目安に各メーカーを比較すると、どのパネルが経済的であるかが分かります。ただし、大幅に安い場合は何らかのリスクがあると考えるべきでしょう。
太陽光パネルを選ぶポイントの1つに、変換効率があります。これは、発電性能を示す数値で、発電量やコストを左右する重要な指標です。
同じ枚数の太陽光パネルを設置したとしても、変換効率が高いほど多くの電気を作り出せます。太陽光パネルの変換効率はメーカーによって異なりますが、約15%~20%が一般的です。
限られたスペースでできるだけ多くの電気を作りたい場合は、変換効率を重視して太陽光パネルを選ぶと良いでしょう。
太陽光パネルを選ぶ際は、販売実績の確認も大切です。
太陽光パネルの設置場所は、角度や建物の形状や周囲の環境によって異なります。また、適切な容量は日射量以外にも気象条件やFIT制度、家族構成などを考慮しなければなりません。業者の知識やノウハウが問われる部分といえるでしょう。
太陽光パネルの設計・施工に豊富な実績がある業者であれば、ニーズに合わせた最適なプランを提案してもらえる可能性が高まります。
複数の業者から見積書を出してもらうことで、kW単価・変換効率・売電価格・コスト回収までの期間といった項目の違いを比較できるメリットがあります。
売電価格やコスト回収までの期間にどのくらいの差が出ているのか、長期的な視点で比較して判断すると良いでしょう。
また、太陽光パネルの発電量が思わしくない、雨漏りが発生するなどのトラブルが起きる可能性を踏まえて、各社が実施する定期点検のほかアフターサービスと保証期間も比較してください。
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この記事では、太陽光パネルが注目される背景のほか、設置するメリットやデメリットとともにデメリットを解消する方法、選ぶポイントを解説しました。
二酸化炭素を発生させない太陽光パネルは、地球温暖化防止のための効果的な手段として注目されています。東京都をはじめ、いくつかの自治体で義務化する動きがみられるようになり、今後も普及が見込まれるでしょう。
太陽光パネルには様々なメリットがある一方、初期費用や設置場所などの検討も必要なので、家づくりを考える段階から専門家への相談をおすすめします。
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