新築一戸建てを検討する際、注文住宅と建売住宅のどちらを選べば良いのか迷う方もいらっしゃるでしょう。どちらを選ぶかで、資金計画や入居までのスケジュールなどが大きく左右されます。

一般的に、注文住宅は建売住宅と比べて建築費用が高くなるイメージがあります。費用だけでなく、その他にも特徴が異なるため、しっかり比較した上で選択することが大切です。

この記事では、注文住宅と建売住宅を7つの項目で比較して、それぞれの違いを解説します。また、寿命が決まるポイントや注文住宅と建売住宅の選び方も紹介しますので、ご自身に合った住宅を選ぶ際の参考にしてみてください。

注文住宅と建売住宅の違いを7つの項目で比較

注文住宅は、建て主が土地を購入した後、自らが建築会社を探して建てる住宅です。一方で、建売住宅は不動産会社もしくは建築会社が土地を購入して、そこに建物を建てているケースが大半になります。

ここでは、注文住宅と建売住宅を7つの項目で比較するので確認しましょう。

項目注文住宅建売住宅
総額<全国平均>注文住宅:3,866万円土地付き注文住宅:5,436万円
<首都圏平均>土地付き注文住宅:7,960万円
<全国平均>建売住宅:4,214万円


<首都圏平均>土地付き注文住宅:7,960万円建売住宅:5,113万円
間取りやデザインの自由度理想を実現しやすく、自由度が高いすでに決まっているので、自由度に期待できない
建築のプロセス確認できる確認できない
住宅ローンつなぎ融資が必要住宅ローンを一括で組める
完成イメージ図面では完成のイメージがつきにくい内覧できるため、イメージが具体的に分かる
資金計画住宅ローンの実行までに段階的に支払いが発生し、資金計画が複雑になりやすい土地・建物の価格が決まっているため、計画が立てやすい
入居までの期間土地探しを含めて1年ほど最短1か月

1.総額|注文住宅が高くなる

国土交通省が公表した「令和4年度住宅市場動向調査」によると、注文住宅、土地付き注文住宅、建売住宅の全国平均価格は以下の通りです。

<全国平均>

  • 注文住宅:3,866万円
  • 土地付き注文住宅:5,436万円
  • 建売住宅:4,214万円

<首都圏平均>

  • 土地付き注文住宅:7,960万円
  • 建売住宅:5,113万円

前年度より価格がわずかに下落したのは建売住宅で、注文住宅と土地付注文住宅は上昇傾向にあります。

全国平均と首都圏では価格に大きな差があり、注文住宅のほうが建売住宅よりも全国平均で1,570万円、首都圏では2,847万円も高い状況です。

引用元:令和4年度住宅市場動向調査|国土交通省

総額が高くなると固定資産税も上がる

戸建て住宅の場合、土地と建物のそれぞれに固定資産税がかかります。土地を含めた注文住宅のほうが価格が高いということは、固定資産税も上がるのが一般的です。

固定資産税が上がるポイント

  • 土地費用が高い
  • 建物の形状や工法が複雑になる
  • 高い建材を使用する
  • 高額な設備を取り入れる

また、新築時が最も高く、築年数の経過とともに下がっていきます。

2.間取りやデザインの自由度|注文住宅のほうが高い

間取りやデザインの自由度は、注文住宅のほうが高いといえます。

注文住宅は、フルオーダーとセミオーダーで自由度の違いはあるものの、要望を実現しやすい住宅です。フルオーダーでの注文住宅は、細部にまでこだわることができるため、限りなく理想に近い家を建てられます。

建売住宅は、間取りやデザインの変更はできません。また、着工中であっても確認申請を出しているので、壁紙の色や素材など軽微な変更にとどまるのが一般的です。

3.建築のプロセス|注文住宅は経過を確認できる

注文住宅は、建築のプロセスをご自身で確認可能です。地盤改良や工法、工事の進捗状況を確認し、問題があれば対処できます。

建売住宅は、土地の状態や工事の経過を確認できません。例えば、地盤が軟弱な場合にどのように改良されたのかが分からず、耐久性や耐震性に影響がでる可能性があります。さらに、建物の基礎や壁の内部のように建ててからでは見えない部分の品質確認もできません。

4.住宅ローン|注文住宅はつなぎ融資が必要

注文住宅は、土地の購入から住宅の完成引き渡し時の住宅ローン決定まで、一般的には10か月前後かかるため、つなぎ融資が必要です。

つなぎ融資とは、完成引渡し前に必要となる費用を支払うために、一時的に利用する融資です。

<注文住宅のお金の流れ>

  • 土地購入時:土地費用
  • 建物の着工時:建物費用の一部
  • 建物建築の中間時:建物費用の一部
  • 建物の完成時:土地と建物の費用の住宅ローン

このように注文住宅は、工事の進捗に応じて、建築会社に建物費用の一部を支払わなければなりません。現金の用意がない場合は、つなぎ融資で土地費用や工事の着手金、中間金を支払います。

対して、建売住宅は土地と建物をセットで、住宅ローンを一括で組むことができます。注文住宅のように土地・建物費用を分けて支払う必要がありません。

<建売住宅のお金の流れ>

  • 購入前:手付金
  • 購入時:仲介手数料など
  • 住宅ローン利用時:ローン手数料・保証料など

5.完成イメージ|建売住宅のほうが具体的に分かる

建売住宅の場合、すでに完成した住宅の内覧が可能です。そのため、入居後のイメージが具体的になります。

家具の配置や生活動線といった、実際の生活を想像しやすいでしょう。建物内部の日当たりだけでなく、周囲からプライバシーが確保できるかなど、住んでみないと分からない点もチェックできます。

注文住宅は、完成後でなければ全体を把握できません

しかし、間取りの設計時に建築パース(立体的な絵にした透視図)で提案してもらうと、完成イメージがつきやすくなります。設計図面や説明では分かりにくい外観や間取り、デザイン、レイアウトなどをリアルに想像できるでしょう。

6.資金計画|建売住宅のほうが立てやすい

建売住宅は、販売価格が明示されているので、購入前から仲介手数料や不動産取得税などの税金の目安を計算できます。必要になるお金が大きく変動する可能性が低いことから、資金計画が立てやすいのです。

注文住宅は予算を決められたとしても、見積り価格では確定的な資金計画を立てられません。建物本体工事費のほかに、外構など付帯工事費が発生するからです。

前述の通り、注文住宅は住宅ローンの実行までに段階的に支払いが発生し、資金計画が複雑になりやすいといえます。資金計画は、注文住宅に詳しいファイナンシャルプランナーといった専門家に相談すると良いでしょう。

7.入居期間|建売住宅は最短1か月で入居可能

建売住宅は、早ければ物件の内覧から1か月程度で入居可能です。注文住宅は、土地探しから始める場合で1年ほどかかります。

建売住宅に入居するまでの流れ注文住宅に入居するまでの流れ
物件探し  物件内覧  不動産売買契約  引き渡し  入居【2か月】土地探し・売買契約
【1か月】会社比較・契約
【2か月】基本設計
【2か月】実施設計・確認申請
【4か月】着工・上棟・竣工
【1か月】是正工事・引き渡し  
 入居

住宅購入を急いでいる方には、建売住宅の入居までの早さは大きなメリットになるでしょう。

注文住宅では、完成時期から逆算して、土地探しと建築会社選びを並行して進める工夫が大切です。

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注文住宅と建売住宅では寿命に大きな違いはない

ここまで7つの項目で、注文住宅と建売住宅を比較してきました。それぞれ大きな違いがありますが、どちらの住宅が長く住めるのか、気になる方が多いでしょう。

結論からいうと、建売住宅と注文住宅はどちらも同じ法律に基づいて建てられているため、住宅の種類による寿命に違いはありません。 

  • 建築基準法に基づいて建てられているため
  • 住宅品確法により新築住宅の10年保証が定められているため

建築基準法に基づいて建てられているため

新築一戸建てを建てる際には、建築基準法で定められた基準を満たす必要があります。建築基準法とは、建築物を建てる際の最低限守らなければならないルールです。

例えば、建築基準法の「新耐震基準」は以下の通りです。 

  • 震度5強程度では家がほとんど損傷しない
  • 震度6強~7程度でも倒壊・崩壊しない

つまり、注文住宅と建売住宅のいずれにおいても、現行の耐震基準をきちんとクリアしていれば、震度6強~7程度の地震にはある程度耐えられる耐震性を備えているといえます。

住宅品確法により新築住宅の10年保証が定められているため

新築住宅には、住宅品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)「10年保証(住宅瑕疵担保責任)」が定められています。

住宅品確法とは、住宅の品質確保に関する一定のルールです。質の良い住宅の供給を目指すことを目的としています。

瑕疵とは欠陥や不具合を指し、柱や屋根などの基礎構造部分が対象です。新築であれば、注文住宅と建売住宅どちらも、一定の品質が保証されています。

この法律における新築住宅の定義

【品確法2条2項】新たに建設された住宅で、まだ人の居住の用に供したことのないもの(建設工事の完了の日から起算して一年を経過したものを除く。)

住宅性能表示

品確法に基づいて、住宅性能表示制度が運用されています。 統一した基準により住宅の性能を比較し、以下の等級で区分けされています。

等級内容
等級1建築基準法に定める対策が講じられている
等級2通常想定される自然条件及び維持管理の条件の下で2世代(おおむね50~60年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている
等級3上記と同じ条件で、3世代(おおむね75~90年)まで、大規模な改修工事を必要とするまでの期間を伸長するため必要な対策が講じられている

引用:新築住宅の住宅性能表示制度ガイド|国土交通省

新築住宅の場合、評価項目は10分野33項目となっています。住宅の寿命を考える際は、1つの目安にすると良いでしょう。

住宅の寿命が決まるポイント

住宅の寿命として、耐用年数が用いられる場合があります。耐用年数とは、法律上、建物に資産価値があると評価できる期間です。税金の計算や金融機関の審査に使用されます。

以下は、構造別にみる住宅の耐用年数です。 

構造耐用年数
木造22年
軽量鉄骨造(3㎜を超え、4㎜以下のもの)27年
重量鉄骨造(3㎜を超えるもの)34年
鉄筋コンクリート造 47年

引用:耐用年数(建物/建物附属設備)|国税庁

つまり、耐用年数を超えると資産価値がないとされるものの、住めなくなるわけではありません。しっかりメンテナンスすれば、さらに寿命を延ばすことも十分可能です。 

ここでは、住宅の寿命が決まるポイントを解説します。

  • 建築材料や施工の品質
  • 入居後のメンテナンス
  • 建築会社のアフターサービス

建築材料や施工品質

建築材料や施工品質は、住宅を長持ちさせるための重要なポイントです。たとえ優れた材料を使用しても、施工品質がともなわなければ、住宅性能に期待できないでしょう。

建売住宅の場合は、構造に関わる内部まで確認できませんが、どのような工程だったかを尋ねるようにしてください。施工記録の提出を求めるのもひとつの方法です。

一方、注文住宅の場合は予算を気にするあまり、建築材料を必要以上にコストダウンせず、住宅性能にも目を向けましょう。図面通りに工事が進められているか、現場に任せきりにしないことも重要です。

入居後のメンテナンス

住宅を長持ちさせて快適な暮らしを維持するには、入居後のメンテナンスが必要です。適切な時期を超えて先延ばしにすると、費用が高額になる場合があります。日頃から、不具合がないか点検しましょう。

特に、メンテナンスで意識したいポイントは以下の3つです。

  • 外壁・屋根の塗装
  • 設備機器の更新
  • 防蟻処理

1.外壁・屋根の塗装

建築から10年~15年のタイミングで、外壁や屋根の塗装が必要になります。

外壁の劣化により、建物内部に雨水が浸水し、断熱材の機能が失われます。改修費用は、塗装以外にも必要となり、高額になるでしょう。屋根に割れやひびがみられると、雨漏りの可能性が高まります。

劣化が深刻化する前に、外壁や屋根の塗装状況を見極めて、必要な改修を施しましょう。

2.設備機器の更新

給排水管などの設備機器は、定期的な部分改修が必要となる場合があります。配管に使用される素材によってメンテナンス時期が異なりますが、20年~30年での交換を目安にしましょう。

ただし、以下の症状が見られる場合には早めに対処してください。

  • 赤茶色の水が出る:サビや腐食による配管の劣化
  • 漏水している:配管の詰まりや劣化、パッキンのゆるみ
  • 詰まる:配管の詰まりや流れの悪さ

防蟻処理

シロアリは1年を通して活動するため、防蟻処理が大切です。新築時の薬効が切れる5年を目処に、継続的な防蟻処理をおこないましょう。

防蟻処理が必要なのは、木造住宅だけではありません。鉄骨住宅の骨組みは鉄骨ですが、下地や床組材、内装材には木材を使用しています。

日頃から、換気口周辺の風通しを良くしたり、庭の枯れ木や葉っぱの掃除をしたりしておくのも有効です。

参照元:住まいのメンテナンススケジュール|住宅産業協議会

建築会社のアフターサービス

建築会社は、入居後のアフターサービスや保証制度を用意しています。10年保証では、細やかなメンテナンスをカバーできません。

定期点検で住宅のコンディションをチェックし、適切なメンテナンスのアドバイスをしてくれる建築会社を選ぶことが、住宅を長持ちさせる重要なポイントといえます。

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注文住宅と建売住宅の選び方

注文住宅と建売住宅を7つの項目で比較してきました。それらを踏まえて、注文住宅と建売住宅に向いている人の特徴を紹介します。

注文住宅が向いている人

注文住宅に向いているのは、次のような人です。

  • 家づくりにこだわりをもっている人

注文住宅は、間取りやデザインの自由度が高いのが魅力です。オリジナリティに溢れた唯一無二の家づくりを実現したい場合には、注文住宅が適しています。

土地探しやプラン作成に、時間や労力、コストがかかりますが、どうしても実現したいこだわりがあるのであれば、注文住宅を検討しましょう

  • 土地を所有している人

家を建てるための土地をすでに所有している人は、建売住宅ではなく、注文住宅を選択すると良いでしょう。住みたいエリアでない場合は、売却を検討して購入資金に回すことも可能です。

  • 設計や施工の依頼先が決まっている人

設計や施工会社選びに迷う人は少なくありません。依頼先がすでに決まっている人と注文住宅に向いています。

建売住宅が向いている人

建売住宅に向いているのは、次のような人です。

  • 予算を抑えたい人

注文住宅より安くなるとは限りませんが、不動産会社もしくは建築会社が土地を購入して、そこに建物を建てているため、比較的安い価格設定となっています。

  • 入居後の生活をイメージしたい人

建売住宅はすでに完成しているので、実際の物件を確認することで、入居後の生活イメージが湧きやすくなります。入居後の不安をできるだけ解消しておきたい人は、建売住宅が向いています。

  • とにかく早く入居したい人

建売住宅は設計の自由度が下がるものの、その分の時間を省いて、入居までの期間が短くなります。短期間での入居を希望する人におすすめです。

家づくりに、何を重視するかは人によって違いがあります。住まいの優先順位や状況を検討して、ご自身に合った住宅を選択しましょう。

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最後に

新築一戸建てを検討する際、注文住宅と建売住宅が選択肢となります。

7つの項目で比較した場合、それぞれ異なる特徴があり、重視したいポイントを確認してみてください。ご自身の要望を整理したうえで、最適な方法を選びましょう。

また、住宅を長持ちさせるにはメンテナンスが必要です。建築会社のアフターサービスを利用しながら、定期的にメンテナンスしましょう。

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