坪庭

初心者でも安心! 坪庭を徹底解説

 

新鮮な緑に囲まれた小さな庭、坪庭。
日本の美学と自然が織りなす坪庭は、都会の狭い空間でも楽しむことができ、家族の癒しの場所にもなります。また、プライベートな空間を作り出すのに最適な場所でもあります。
そんな坪庭について、 基本情報はもちろんのこと、設計から造成までの流れ、植物選びからメンテナンスの方法、季節ごとの楽しみ方なども、詳しく解説していきます。

私たちの生活空間はどんどん小さくなっていきますが、私たちと自然が切り離されていくわけではありません。むしろ、それは私たちの新たな創造性を引き出し、心地良い生活空間を作り出す機会となっているのではないでしょうか。
それでは、小さくても我が家の癒やしの中心となる坪庭を見ていきましょう。

目 次

1. はじめに

この章では、坪庭の基本的な概念とその魅力、そして中庭との違いについて説明していきます。

1-1. 坪庭とは何か

坪庭とは、文字通り1坪(約3.3平方メートル)または2〜3坪程度の、壁や塀で囲まれた小さな庭のことを指します。しかしその小さなサイズだからこそ、庭としての新たな可能性を呼び起こし、自然によるアートと建築の美しい融合を試みる場となっています。

具体的なイメージとしては、日本の伝統的な庭園の縮小版を想像してみてください。鮮やかな緑の苔、庭石や砂利、水面に映る風景、それぞれが互いを引き立て、ひとつの調和した姿を生み出します。それはまるで、小さく切り取られた自然を、生活空間の真ん中に取り込んだかのようです。

1-2. 坪庭の魅力とは

坪庭の魅力はそのコンパクトさにあります。
制約しかないような小さなスペースですが、その実、設計者の創造力を刺激し、美しいデザインが生まれる源になります。ユニークで美しい景観を作り出すための方法は無数に存在し、それはしばしば予想外の嬉しい結果を生むこともあります。
日本の伝統的な坪庭では、樹木、苔、石、水などをで自然の一部を模倣し、一体感を生み出すだけでなく、見る者に深い安心感を与えます。一方、モダンなデザインの坪庭では、シンプルな構成の中に和洋問わない植栽を取り入れ、その個性と魅力を最大限に引き立てます。

私たちが自宅で過ごす時間が増えている今、小さな庭は、私たちが自然を感じ、リフレッシュする時間を過ごすための重要なスペースとなります。例えば、春には桜の花が咲き、夏には濃淡豊かな緑の葉が茂り、秋には色とりどりの葉が私たちの目を楽しませ、冬には静かな雪景色が心を落ち着かせます。

1-3. 「坪庭」と「中庭」の違い

坪庭は壁や塀などに囲まれた空間に作られる、1〜3坪くらいの小さな庭です。
美しい景観を眺めたり、四季を感じたり、主に視覚的に楽しむために設けることが多いです。

一方、中庭は、文字通り建物の中心付近に作られる、坪庭より大きなサイズの庭になります。
一般的な庭と同じように利用したり、あるいは、例えば屋外のリビングスペースのように居住空間の一部とするなど、住人が中に入って使用する目的で設けます。

2. 坪庭のメリットとデメリット

この章では坪庭の主なメリットとデメリットを解説します。
ここに書かれていることを踏まえ、あなた自身のライフスタイル、利用目的、予算に基づいて、最適な坪庭を作っていくと良いでしょう。

2-1. 坪庭の主なメリット

2-1-1. スペースの有効活用

坪庭の一番のメリットは、限られたスペースを最大限に活用できることです。
都市部の小さな一戸建てでも、土地と建物の形状から余った敷地部分などに、きちんとデザインした坪庭を設ければ、自然の心地よさを楽しむことができます。
例えば、庭のスペースがない2階建ての家でも、坪庭を設けることで、自然が感じられるリラクゼーション空間を作り出せるだけでなく、吹抜けとは異なる開放感や採光を得ることもできたり、風通しの良い間取りを作ることもできます。
ちなみに、坪庭は建蔽率(建ぺい率)に含まれません。

2-1-2. 手軽さ

一般的な庭と比べて面積が小さい坪庭は、作成と維持にかかるコストは格段に低くなります。さらに植物や設置物の数が少なければ、それだけ必要となる費用も少なくなります。さらに、シンプルなデザインであれば、専門家に頼らずとも自分で作成することも可能です。
維持管理も比較的簡単です。デザインにもよりますが、頻繁な草むしりや樹木の剪定、大規模なメンテナンスなどが不要なことが多くで、手間ひまがあまり掛かりません。

2-1-3. プライバシーの確保

都市部の住宅は隣家や道路との間隔が狭いことが多く、敷地外から見られたりすることが避けられない状況になりがちです。坪庭は自宅の内側からしか見えないように作ることができるため、屋外スペースなのに他人の視線を気にすることなく、完全に自分たちだけのプライベートな空間とすることができます。

2-2. 坪庭の主なデメリット

2-2-1. コストの増加

坪庭を設けるための構造的な問題で、建築費用が余分に掛かる場合があります。例えば、外壁の面積が増えたり、坪庭に出るためドアや窓の設置などによる材料費が増加する可能性があります。
また、坪庭に面したガラスの窓や扉があることで、季節によっては室内の温度に影響を受ける可能性があります。例えば、夏は太陽光や坪庭からの反射熱で温度が上がったり、冬は冷気が家に入り込むなど、冷暖房費のランニングコストが増える可能性もあります。

2-2-2. 水の管理

水の管理も大切になります。
建物に囲まれた場所に坪庭を作る場合は、建築時に排水や防水のことを考慮しなければなりません。
植物の水やりに関しても、短い日照時間や水はけを考慮しないと、根腐りするなど植物の健康状態が悪くなり、その結果、坪庭全体の美観に影響を及ぼす可能性があります。

3. 坪庭のデザイン

坪庭というと日本庭園スタイルのものを思い浮かべると思います。しかし、決まったルールがあるわけではないので、和洋の様々なデザインで作ることができます。

3-1. 坪庭のスタイル例

3-1-1. 日本庭園スタイル

よく見かける伝統的な日本庭園の様式美を取り入れた庭です。砂利や苔、低木、竹、池などを組み合わせて、自然の風景を縮小したような風景を作り出します。
例えば、小さな石灯籠、苔むした石、シダ類やツツジなどを配置することで、日本ならではの静寂と落ち着きのある雰囲気を演出できます。

3-1-2. モダンスタイル

モダンな坪庭は、シンプルかつ洗練されたデザインが特徴です。幾何学的なタイルの配置、モノクロ中心のシンプルな色使い、厳選されたミニマルな装飾などです。
例えば、ウッドデッキの敷設、タイルの小径、シンプルな樹木、印象的なライトアップの設置などで、現代的でスタイリッシュな雰囲気を作り出すことができます。

3-2. 小さな空間を最大限に生かすデザインのコツ

3-2-1. 色彩の利用

彩りは空間の雰囲気を大きく左右します。
色彩をうまく利用することで、空間に広がりを作り出すことが可能です。
例えば、明るい色の植物や装飾は、庭を広く明るく見せます。反対に濃い色は、奥行きを感じさせ、空間に深みを与えます。

3-2-2. 高低差の利用

高さも空間の印象に大きく影響します。
高さの異なる植物や樹木を配置することで、立体感とダイナミズムを演出できます。

4. 坪庭の設計と作成

4-1. 坪庭の設計手順

4-1-1. 計画・設計

坪庭の設計は、まずプランニングから始まります。
まずはじめに、坪庭を設ける目的は何か、どのような効果を期待したいのかを明確にします。次に、実際のスペースと環境を調査します。日照条件、水はけ、背景となる壁や塀などを考慮に入れ、それに適した植物や素材を選びます。
可能であれば、スケッチを描くことで具体的なイメージを固めをし、それに基づいて詳細な設計図を作成すると良いでしょう。

4-1-2. 造成

設計図が完成したら、実際の造園作業に移ります。
必要な工具や材料を揃え、土壌を整える準備を行います。それから、設計に従って植栽を植えたり砂利の敷設など順次作業を進めていきます。デザイン性が高い場合は、形にするためのテクニックや工夫が求められることがあります。

4-2. DIYによる坪庭作りのためガイド

4-2-1. 基本的なガーデニングツール

坪庭を造成するためには、シャベル、レーキ、手袋、散水ホースなどの基本的なガーデニングツールが必要です。また、必要に応じてプランターやポット、石やレンガなどの装飾材料、そして植物類も準備します。

4-2-2. 材料の選択

植栽や材料の選択は、庭のデザインに大きく影響します。
例えば、日本庭園スタイルなら、低木や竹、石、苔などを組み合わせるのが一般的です。一方、モダンなスタイルなら、シマトネリコやハイノキなどの植栽や草花に、タイルやレンガ、あるいはウッドデッキを組み合わせることが多いです。

4-2-3. 造園

坪庭の造園は、適切な順を追って進めていくことが大切です。
まずは、地面をならして均一な面を作ります。
次に、土を耕し、必要に応じて栄養素を土壌に加えます。
その後、設計に従って植物を配置し、必要に応じて砂利や石などを置いていきます。
完成後は植物に適した量の水やりを行い、植物の成長を見守ります。特に初期段階では、新しい植物がしっかり土に根を張るまで、注意深く見守ってください。

5. 坪庭の植物選び

5-1. 坪庭に適した植物とその特性

5-1-1. 常緑植物

坪庭におすすめの植物として、まず考えられるのが常緑植物です。
常緑植物は年間を通じて緑を保つため、季節を問わず美しい坪庭を維持することができます。例えば、ツツジやシマトネリコなどが一般的です。これらは、成長が遅いため比較的管理がしやすく、坪庭に最適な常緑植物です。

5-1-2. 季節の花

また、季節に応じて花を咲かせたり紅葉が見られる植物も坪庭に似合います。例えば、春に花を楽しみたい場合は梅や桜、夏でしたらアジサイやサルスベリ、秋はモミジやハギ、冬は椿などを選ぶと良いでしょう。それぞれの季節感があふれる坪庭を楽しむことができます。

5-2. 季節ごとの植物の管理と育て方

5-2-1. 春のメンテナンス

春は新芽が出るシーズンなので、この時期は剪定と施肥が重要です。また、冬の寒さから植物を保護してた冬囲いなどを取り除きます。

5-2-2. 夏のメンテナンス

夏は高温と乾燥が植物にとって大きなストレスとなるため、適度な水やりと日陰を作ることが大切です。特に、水不足は植物の生育に大きな影響を及ぼすため、早朝や夕方など、日差しが弱い時間帯に水やりをすることをおすすめします。
また、草むしりを怠ると害虫が発生しやすくなることもあります。

5-2-3. 秋のメンテナンス

秋は植物が冬を乗り越えるためにエネルギーを蓄える時期です。
そのため、この時期は栄養補給を重視した肥料を施し、寒さに対する耐性を高めます。
紅葉樹が植わっている場合は、景観を保つために、落葉の掃除も必要になります。

5-2-4. 冬のメンテナンス

冬は寒さにより植物が活動を休止する期間で、寒さから植物を守ることが重要になります。
寒さに弱い植物には防寒対策を施しましょう。具体的には、ウッドチップなどで地表を覆うマルチングや、麻袋などで植物を覆う冬囲いなどを行います。
また、雪が降った後の除雪作業も重要で、特に大切な樹木の枝が雪の重みで折れるのを防ぐためにも、必要に応じて雪を落としてあげてください。

6. 坪庭のメンテナンス

6-1. 坪庭の日々のメンテナンス方法

坪庭の美しさを保つためには、日々の維持管理が重要です。ここでは基本的なメンテナンス方法について解説します。

6-1-1. 水やりと施肥

水やりと施肥は、植物の種類や季節によって頻度が異なります。
例えば、シマトネリコやハイノキ、オリーブなどはあまり頻繁に水を与えない方が良いです。また、施肥も植物の成長期うや季節に合わせて適度に行うことが大切です。

6-1-2. 病気や害虫からの保護

病気や害虫から植物を守るためには、日々の観察が必要です。何か異常があったらすぐに対処することで、問題が大きくなるのを防げます。
例えば、葉に黒や白の斑点が見えたら、それは病気や害虫が付いた兆候かもしれません。葉の裏にも虫が付いていることがあるので、時々確認してください。また、普段見かけない虫が草木に付いているのを見つけたら、それが害虫かどうか確認し、必要に応じて対策を講じましょう。

6-3. 坪庭のトラブルシューティング

植物の世話をしていると、様々な問題に遭遇することがあります。ここでは、それらの問題をどのように解決すればよいかについて解説します。

6-3-1. よくある問題

一般的によく遭遇する問題としては、植物の枯れや成長の停滞、害虫の発生などがあります。これらのトラブルの多くは、水やりや施肥のバランスが悪かったり、日照時間が適切でなかったりすることによって引き起こされます。問題の原因を特定し、それに応じた対策を取りましょう。

6-3-2. 専門家に相談するタイミング

自分たちで問題が解決しない場合や、何が原因か分からない場合は、専門家に相談するのが良いでしょう。また、植物の移植や剪定をする時も、適切な方法を知らないや不安な場合は、専門家に頼ることをお勧めします。

7. 坪庭の楽しみ方

坪庭が完成したら、その美しさを眺めるだけではもったいありません。
坪庭はプライバシーが守られた空間なので、外部からの目を気にすることなく、リラクゼーションスペースや家族のイベントの場としても活用できます。

7-1. ヨガや瞑想のスペースとしての利用

自然の中で行うヨガや瞑想は、身体と心のリラクゼーションにとても効果的です。もし坪庭の中にスペースがあれば、一日の始まりや終わりに少しの時間を取り、ヨガマットなどを敷いて、ヨガや瞑想を楽しんでみてください。

7-2. お茶の時間

自分でデザインした日本庭園スタイルの坪庭に面した部屋で、抹茶をいただくのは格別だと思います。
また、モダンスタイルの坪庭に小さなテーブルや椅子を出せば、朝のコーヒータイムや午後のお茶の時間を楽しむ場所にもなります。
お茶を用意して静かな時間を過ごしつつ、植物の香りや風の音、時には小鳥のさえずりなどを五感で楽しんでみてはどうでしょうか。

7-3. 坪庭を用いた季節のイベントの楽しみ方

四季折々のイベントも坪庭で楽しむことができます。
例えば、春の花見や秋の紅葉、夏には花火、冬に雪が降れば雪だるまやかまくらを作ったりすることができます。季節ごとにちょっとしたイベントを坪庭やその周りで行うことで、自宅での時間がより豊かになるでしょう。

8. 坪庭についてのよくある質問

Q:坪庭のデザインはどのように決めれば良いですか?

A:坪庭のデザインは、家族の好みや生活スタイル、家の外観や内観との調和を考えながら決めると良いでしょう。PinterestなどのSNSやガーデニング書籍による情報収集も役立ちます。

Q:坪庭の造成はプロに依頼すべき? それともDIYでも大丈夫?

A:ガーデニングに自信がある方や時間がある方は、DIYで坪庭を作成することも可能です。一方、デザインや庭造りの経験や自信がない場合は、専門家に依頼することをおすすめします。プロならではの提案や施工技術で、質の高い理想の坪庭を実現することができます。

Q:坪庭で野菜やハーブを育てることは可能ですか?

A:もちろん可能です。小さなスペースとはいえ、植木鉢より豊かな土壌があるはずなので、十分に野菜やハーブ類を育てることができます。日当たりや風通しの良い場所を選び、ミニトマトやバジルなどの育てやすい種類から始めることをおすすめします。

8. まとめ

この記事を通じて、坪庭がどのような場所で、どのようなメリットやデメリットがあって、さらには自宅をより居心地の良い場所に変えることができるかについて、ご理解いただけましたでしょうか。
四季を感じ、その美しさを楽しむだけでなく、坪庭が日々のリラクゼーションの場所や季節のイベントを楽しむスペースとしても活用できます。小さなスペースですが、家族の生活が豊かになるイメージもできたと思います。
ぜひそれぞれのステップやヒントを参考にして、自分たちだけの坪庭を作り、日々の生活に癒やしと豊かさをプラスしてください。そして、時には家族のコミュニケーションの場としてもご活用ください。

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この記事を書いた人

渡辺知哉

設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。