人と犬・猫が暮らしやすい家を考えるやさしい注文住宅

 

1.はじめに

大好きなペットと安全に楽しく暮らしたいと思っても「賃貸なのでペット可物件が少なく、リフォームもできない」「マンション管理規約でペットが禁止されている」「マンションでペットを飼っていたら苦情を受けた」など、賃貸やマンションなどでは人と犬・猫との暮らしやすさを考えるとなかなかうまくいかないという事情があります。今回は、愛犬・愛猫との上手な暮らし方というテーマで、ペットの特徴を知った上で、人もペットもどちらも住み心地のいい家にするためのポイントをまとめてみました。

2.愛犬との上手な暮らし方

愛犬と上手に暮らしていきたいと思っていても、犬は意外とデリケートだったりします。人と犬では生活のリズムや環境にも違いがありますので言葉で言うほど簡単ではなく、実際には犬に配慮してあげるなどが大切になります。配慮といっても犬の生活のリズムを整えやすくしたり、病気になりにくい環境にしたりほんの少しだけ、犬に寄り添ってあげる事でペットと快適に上手に暮らす事ができるのです。そのためにまずは、犬の特徴なども踏まえての改善ポイントなどをみていきましょう。

3.まずは犬の特徴を知る事

犬の特徴を把握しておく事は、犬と人が暮らしやすい家にするための第一歩でもあります。今回は4つのポイントからみていきたいと思います。
・噛み癖の問題
・匂いの問題
・階段の問題
・フローリングの問題

3-1.噛み癖の問題
犬の歯は人間と同じで、一度”乳歯”が抜けてその後大人の歯に生え変わります。その生え変わるタイミングで口回りや歯茎がとても痒くなるため、何かに擦り付けたり噛みちぎったりしてしまう習性があります。子犬の性格や特徴にもよりますが、痒みが収まるにつれてこの衝動は収まると言われています。しかし、その時期については子犬によってまちまちのようです。このような事から、犬が部屋の中で壁紙、柱、ソファー、家具などを噛んだりする事があるかもしれませんが、予め犬の生態とその背景を知っておく事が大切です。

【噛み癖に対する対策】
一般的に言われている対策方法としては「犬が嫌がる匂いスプレーを振りかける」「単純に叱る」「ゲージに入れる」などとされていますが、これでは一時しのぎにしかならず、家具や壁紙を噛む習性は、犬の成長とともに収まってくるので一時的に感情的になるのではなく、ゆっくりと犬の成長を待つことが大切なのかもしれません。注文住宅では、ペットの習性を予め想定して家づくりをする方も多く、近年では傷に強い壁紙や、壁の上下で別の素材にしたり、壁紙の張り替えを想定しての家づくりなど注文住宅ならではの強みや特徴を活かしたペット対策を施すこともできます。また、ペットにも個性や性格があるため、大きさ、身体能力、好みなどの個々のペットの個性に合わせた家づくりができるのも特徴です。ペットを家族の一員と考えるのならば、家族全員が暮らしやすい家が理想ですね。

3-2.匂いの問題
ペットを飼う上でいちばんの悩みが匂いの問題です。動物好きの方は気になりませんが、動物があまり好きではない方は、どうしても気になってしまいます。犬の場合には動物特融の匂いがする事がありますし、ペットシート付近はどうしても排泄の匂いが発生します。

【匂いに対する対策】
一般的に犬は猫よりもトイレの場所を覚えるのが遅いと言われています。確かに猫は猫砂やコルク・木片を入れたトイレを用意してあげるとすぐにそこで用を足しますが、犬はペットシートを敷いてもすぐには決められた場所で用を足すことが出来ない場合が多いようです。根気よくペットのペースに合わせてトイレの習慣づけをしていきましょう。匂いの対策としては、匂いを軽減してくれるペットシート、ペット用消臭剤などの製品や空気清浄機などで一定の対策をすることができます。また、シャンプーなどで清潔を保つようにする事で動物特融の匂いそのものを軽減できたりします。内装では、消臭機能があるエコカラットや調湿・抗菌・消臭・汚れ防止などの効果のある機能性クロスなどもおすすめです。

3-3.階段の問題
建築基準法に基づき階段は人が安全に昇降できるように設計されています。そのため人間用の階段では犬種によっては上り下りができなかったり、負担がかかる事もあります。

【階段に対する対策】
階段に滑り止めを設置したり、犬用のスロープ階段をつける事が効果的です。スロープを設置する事でペットにとって安全にもつながり、小型犬ならばここで運動をする事もできます。

3-4.床面の問題
床面の素材にはさまざまなものがありますが、床面が滑りやすい場合には犬の股関節が悪くなったり怪我をする事もあります。床に排泄をしてしまったりする事もありますのでペットはどうしても汚してしまうものと割り切れば、掃除がしやすい素材を選んでおくという選択もできます。

【床面に対する対策】
犬も人も床面が滑りやすいと怪我などにも繋がります。フロアシートなどは表面ががつるつるとしたものではなく、滑り止めがついているものを選んだり、フローリングなどもペットに配慮した製品を選んであげると良いでしょう。また、犬の目線に合わせたコンセントのいたずら防止や段差をなくすなどの工夫も効果的です。犬の個性や性格、犬種なども考慮しながら、人と犬が高齢化をしていく事も設計に入れると将来的な修繕費やリフォーム代の節約にもつながります。

4.人と犬が暮らしやすい家とは

人と犬が暮らしやすい家をつくりには、まずは「ペットの特徴を理解する」という事、そして「優先順位をつけて必要な対策を施す」事がポイントになります。個々のペットによっても、個性や性格があります。ペットは不安になったりストレスを受けると、吠えたりいたずらをしたりする事もありますので、やはりペットに寄り添ってあげるのが一番大切なのだと思います。マンションや賃貸などでは、個々のペットに合わせてリフォームをしようと思っても、難しい部分があります。

人も犬も怪我をしたり病気になったりすると辛い時間を過ごす事になります。注文住宅ではペットの足洗い場を玄関付近に設置する事で、散歩の動線をラクにできたり清潔を保つことにもつながります。バリアフリーにしておく事でペットにも人にもやさしい暮らしやすい家を実現する事もできます。ペットに寄り添いながら、人とペットの両方が暮らしやすい家について考えるきっかけにして頂ければ幸いです。

5.愛猫との上手な暮らし方

現在猫を飼われている方でも、これから猫を飼いたいと考えている方でも、猫との快適な暮らしを実現するための家づくりの情報は気になってしまうものです。自宅を住み替えたり、買い替えたりする理由はそれぞれですが、人とペットの生活環境をより良くしたいとを考えると家に求めるものも変化していきます。この章では家で猫を飼う時に知っておくべきポイントについて解説していきます。

6.猫にとって危険なものとは

人間が暮らす住宅の中には、人にとっては危険でなくても、猫にとっては危険なものがあります。怪我をしたり事故に結びつくおそれのあるものは、猫の目につかないようにするなどの対策が必要です。

6-1.電気コードやコンセント
猫はコード類が大好きで、本能的に電気コードを噛んでしまう事が多いようです。感電してしまったり、火災の原因になる事もありますので、専用のカバーで保護したり、コンセントキャップなどを利用するのがおすすめです。【家づくりのポイント】使い勝手と猫の動線なども考えて、コンセントの設置箇所を決めたり、配線が露出にならないようにするのがポイントです。

6-2.輪ゴム、画びょうなどの文房具や雑貨類
文房具や雑貨などを誤って飲み込んでしまうケースがあります。輪ゴムや画びょう、クリップなど、誤飲する恐れのあるものは整理しておきましょう。誤飲してしまうと手術に至る事もあります。【家づくりのポイント】日常で使用する文房具などは出しっぱなしにせずに、猫の目につかない場所にしまっておきます。猫用の収納スペースがあると猫用のおもちゃ、フード類などを便利に収納できます。

6-3.床暖房や暖房器具類
冬になると暖房器具を使用する事が多くなります。猫は床暖房などで低温火傷になる事もありますので、水分補給や温度調節などが必要です。【家づくりのポイント】電気代の削減もでき低温火傷のリスクが少ない床暖房などもありますし、床暖房などでは猫用にキャットウォークなどの逃げ場を作るとよいでしょう。

6-4.窓やベランダなど
窓やベランダからの落下防止や、誤って外に出てしまい危険にさらされないように、脱走防止などの対策が必要です。【家づくりのポイント】猫用フェンス、パーテーションやネットを設置するなどで、落下や脱走を防ぐ事ができます。室内に猫が運動するスペースがない場合などで、ベランダを猫が遊べるようなスペースにしているケースもあります。

7.人と猫の防災対策を考える

もしも災害が突然起きてしまったらペットを守れるのは飼い主だけです。そこで防災対策についてご紹介したいと思います。環境省のペットの防災対策資料によれば住まいを災害に強くしておく事が人とペットの安全につながるとしています。この中では住まいの防災対策として下記があげられています。

【住まいの防災対策】
✔︎住まいの耐震強度の確認
✔︎家具の固定、転倒、落下防止
✔︎飼育ケージの固定、転倒防止(屋外飼育の場合は外塀やガラス窓の近くを避ける)
✔︎ケージなどペットの避難場所(隠れ場所)の確保

【ペットのための備蓄品】
✔︎療法食、薬など
✔︎5日間以上のフード、水、食器
✔︎予備の首輪、リード
✔︎飼い主の連絡先やペットの情報を記載したもの
✔︎ペット用シーツ、トイレ用品、好きなおもちゃ、においのついたタオルなど

災害時でも安心して過ごすためには、日頃からの準備が大切です。まずは住まいの耐震強度の確認と、家具や飼育ケージの固定などから初めてみて下さい。

8.猫の老化も視野に入れてあげよう

人もペットも一緒に年齢を重ねていきます。病気にかかりやすくなったり体調を崩しやすくなりますので適度な運動をしたり、生活しやすい環境を整えておきたいところです。室内や猫用トイレなどはできるだけ段差を少なくしたり、滑りにくい床材にしたり事故を防げるような安全対策などもにも気をつけてあげましょう。

9.注文住宅で猫と快適に暮らす

数年前に話題となった猫目線での「猫の十戒」ですが、最初の第一戒と最後の第十戒は猫の最後について書かれています。家族の一員でもあるペットは最後まで責任を持って看取ってあげて下さい。

・第一戒 私の寿命は10年~15年ほど。私があなたのも元から去るときには、あなたはとても辛い思いをするかもしれない。
・第十戒 最後に旅立つ時は、そばにいて私を見送ってね。あなたがそばにいれてくれれば、私はそれだけでいい。

人にとって住みやすい家でも、猫にとっては住みにくい家という事もあります。人の暮らしも大事にしながらペットの安全な暮らしを守るのは、注文住宅ならではです。これからの時代は、人にもペットにもやさしい家が注目されてきます。災害にも強く、人にもペットにもやさしい家について見直す機会にしてみてはいかがでしょうか。

この記事を書いた人

渡辺 知哉

設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。