コロナショックで東京の地価相場、住宅ニーズはどう変化するか
目 次
1.はじめに
2020年は東京オリンピックが開催され、日本国内のみならずオリンピックイヤーで盛り上がるはずであった年ですが、2020年1月16日に日本で新型コロナウイルス患者が報告されてからは状況が一変しました。新型コロナウイルスは、人とモノの移動が停滞するなど実体経済への影響が大きくコロナショックと呼ばれ、リーマンショックのような金融市場の混乱とは異なる動きを示していると共に、リーマンショックを超える未曾有の経済危機になるとも言われています。
また、新型コロナウイルスの蔓延により新しい生活様式が生まれ、住宅においてはテレワークの普及や、密を避ける工夫など、今までとは異なる生活スタイルに対応した住宅へのニーズが高まってきました。2020年7月段階でコロナ禍の収束が見えていない状況下ですが、新型コロナウイルス蔓延前とコロナ禍で東京の地価相場はどのように変化しているのかをデータ分析してみました。
2.コロナ禍での住宅用地の地価相場変動
住宅地として高い人気を誇る東京城南6区(港区、品川区、渋谷区、目黒区、世田谷区、大田区)で流通している住宅用地の坪単価について、コロナ禍前(2019年6月)とコロナ禍(2020年6月)をデータで比較してみました。2019年6月と2020年6月の坪単価中央値を比較すると、都心に近い港区、渋谷区はコロナ禍の2020年6月の方が上昇しています。一方で目黒区、品川区、世田谷区、大田区は2019年6月と2020年6月に大きな変動が見られない状況となっています。2020年7月現在、コロナ禍の収束が見えない状況下にあるため、今後も注視していく必要はありますが、城南エリアの住宅用地に関しては、コロナ禍においても地価相場に大きな変動が見られないという結果がデータから読み取れます。
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コロナショックで東京の地価相場、住宅ニーズはどう変化するか
上述の通り、城南エリアの坪単価については大きな変動が見られない状況でしたが、流通している売地件数はどのような傾向を示しているでしょうか。2019年6月と2020年6月の売地件数を比較すると、2020年6月の方が売地件数が少ない傾向を示しています。これはコロナ禍で価格下落などを想定して売却物件が制御されたことなどが考えられますが、このことで需給調整に繋がった結果、価格変動が抑えられたという見方もできます。ただ、新型コロナウィルスの影響が長期化すれば、需給バランスが崩れるなどの影響も考えられるため、今後も注視していく必要がありそうですが、2020年7月現在においてはコロナ禍前とコロナ禍で目立った混乱は起きていない状況です。
※sumuzu売地流通データから集計
3.コロナショック・リーマンショックの地価傾向を比較
今回のコロナショックを受けて、リーマンショック時の不動産下落のイメージを思い浮かべられる方は多いと思います。新型コロナウィルスはまだ収束していないため、今後も地価の変動は起こりうることが予測されますが、2020年7月時点のコロナ禍の地価状況と、リーマンショック時の地価状況について、地価上昇率を指標として比較してみました。コロナショックについては、2019年6月と2020年6月の地価上昇率(sumuzu売地流通データ)、リーマンショックについては、2008年と2009年の地価上昇率(東京都基準地価格「区市町村別用途別 平均価格の推移」)で比較すると、リーマンショック時の方が地価下落率が高い傾向を示しています。
※コロナショック sumuzu売地流通データ
※リーマンショック 東京都基準地価格
4.新型コロナウイルスがもたらした住宅ニーズの変化
新型コロナウイルスの蔓延によって、生活様式を変える動きが加速し、テレワークや密を避ける行動など、今までの日常とは異なる生活スタイルの変化が起き始めています。住宅に関しても生活様式の変化により新たなニーズが生まれてきています。例えば、テレワークのための書斎や仕事部屋に対するニーズ、密を避けるべくマンションから戸建てへのシフト、郊外での住宅ニーズ増加、賃貸から所有へのニーズ変化など、価値観含めてさまざまな変化が起こり始めています。新型コロナウイルスによって、マンションから戸建てへの買い替え、さらには自分の生活スタイルに合わせて設計できる注文住宅の普及など、「住」に対する価値観そのものが変化し始めていると言えるかもしれません。
5.今後の地価相場はどうなる?
それでは、今後の地価相場はどのように推移すると予測されるでしょうか。今後の新型コロナウイルスの収束状況や経済状況によって地価相場は今後も変動が予測され、不動産価格は下落する、ほぼ影響しないなど、専門家によっても意見が割れています。ただ、新型コロナウイルスが発生して約半年経過した状況下で、城南6区というミクロ視点で観察した結果においては、リーマンショック時よりも地価の変動が小さい傾向を示しているため、今のところは大きな混乱はない状況と言えるでしょう。一方で、マンションはリーマンショック後に高騰し続けました。マンションについては、今回リポートした地価とは異なる傾向を示す可能性がありますので、購入や売却をお考えの方は常に最新の動向を注視しておいた方が良いでしょう。
6.城南エリアの地価分布データ
7.コロナ禍と今後の住宅動向
コロナ禍で生まれた新しい生活様式。これにより、住宅に対する考え方も変わってきそうです。そんな中で脚光を浴びてきているのが「注文住宅」。昨今では、生活スタイルの多様化や、しばしば起きる自然災害により、災害リスクの低い土地に住宅を建てるニーズが高りを見せていましたが、さらにコロナ禍で新しい生活様式に対するニーズへの高まりを受け、注文住宅への関心がますます高まっています。アフターコロナでもテレワークは新しい働き方として定着しそうですし、自宅での時間の過ごし方なども変わってきそうです。コロナ禍は「住」に関する価値観を見つめ直すきっかけになったのかもしれません。これからライフイベントを迎えるご家族、新居をお考えの方、新しい生活様式に適した住宅への住み替えをお考えの方は、人生を豊かにする注文住宅を考えてみてはいかがでしょうか。
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8.コロナショックで東京の地価相場、住宅ニーズはどう変化するか
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