建築家と注文住宅を建てる際の支払い方法について知ろう

 

1.はじめに

設計事務所(建築家)で注文住宅を建てる場合、「設計監理契約」を設計事務所と締結し、「建築工事請負契約」を工務店などの施工会社と締結することになります。そのため費用についても、設計料は設計事務所へ、工事費は工務店へ、それぞれ別々に支払うことになり、マンションや建売戸建ての購入時に発生する住宅ローンとは違ったローンの組み方が必要となることがあります。この記事では設計事務所で注文住宅を建てる際に知っておくべき費用の支払い方法について解説していきたいと思います。

2.注文住宅のローンの仕組みについて

注文住宅を建てる土地が決まり、建築プランも決まると具体的な借り入れ金額が分かり正式な住宅ローンを組むことになります。ここで注意する点は、建売やマンションと違い土地から購入して家を建てる場合は、資金繰りが他とは違ってくる点です。それに加えて設計事務所には別途、設計料が発生しますのでこの辺りは予め認識しておく必要があります。設計事務所への支払い方法については記事後半で記載していきます。

3.つなぎ融資について

注文住宅を建てる際は土地と建物を別々に購入するので、支払いのタイミングも別々になることがあります。通常は土地と建物で一緒にローンを組んで建物の引き渡し時に合わせて費用を支払うという方法が取られますが、金融機関によっては土地と建物で一緒にローンを組むことができないケースもあります。具体的には支払いのタイミングは「土地購入時」、建物の「着工時・上棟時・引き渡し時」の4回に分けて発生することが多いようです。

通常であれば「住宅ローン」を組んで支払いをしていくことになりますが、住宅ローンが実行される時期は建物の「引き渡し時」となります。つまり、建築途中では住宅ローンは実行されないため、この間にかかる費用を住宅ローンで支払うことができないのです。そこで、この間に(住宅引き渡し時まで)かかる費用を支払う手段として「つなぎ融資」というものが存在します。この「つなぎ融資」というサービスを利用して住宅ローンの実行時までの間は利息だけを支払い、住宅ローン実行時にまとめて返済します。なお、つなぎ融資はどの金融機関にでも取り扱っているわけではないので予め確認が必要になることと、金利が高いのでこれらを十分に理解をした上で活用を検討してみて下さい

4.設計契約と施工契約

設計事務所で家を建てる場合は、設計事務所と「設計監理契約」を締結し、工務店とは「建築工事請負契約」を締結することになります。設計事務所は、施主と直接設計契約を結ぶことで、施工業者とは独立した立場で業務を行うことになります。ハウスメーカーや工務店で家を建てる場合は、これら1社とのみ建築工事請負契約を締結します。施主は設計・工事監理・建築工事をすべて同じ会社と契約することになります。

5.設計事務所への支払い方法

設計事務所に支払う設計料の支払い方法は3回~5回に分けて支払うことが一般的です。しかし、その支払い回数や金額についてはそれぞれの設計事務所によって異なります。以下、一般的な支払い例を記載したいと思います。

■ 設計契約(設計料の20%程度)
正確には「設計業務委託契約」といい、施主と設計事務所の間でかわす委任契約で工事監理まで含めることが多い。

■ 基本設計(設計料の20%程度)
建物の設計を設計事務所に依頼し、業務委託契約書の締結後、最初に行うステップが「基本設計」です。

■ 実施設計(設計料の30%程度)
基本設計で決定した間取りを設計事務所が詳細な図面に描き上げる作業です。

■ 工事監理(設計料の15%程度)
工事監理者の責任において工事を設計図書と照合し設計図書のとおりに実施されているか確認すること。

■ 引き渡し(設計料の15%程度)
完成した住宅を施工会社から施工主へ引き渡すこと。

6.まとめ

このように設計事務所への支払いは数回に分けて行うので、この点を予め理解をしておく必要があります。また、住宅ローンは原則として建築工事請負契約に含まれるものが対象となるため、設計料は住宅ローンの対象にはならないケースがあり、その場合は自己資金で用意することになります。その他、設計事務所に設計を依頼する場合の注意点として、住宅ローンは「融資の決定から引き渡しまでの期間を1年以内」とする制限があるので工期には十分注意が必要となります。設計事務所へ設計を依頼することはハードルが高いと思われがちですが、建築依頼主にとってのメリットも多くあるのでしっかりと事前に知識を入れた上で検討されることをおすすめします。

この記事を書いた人

渡辺 知哉

設計事務所・大手ハウスメーカー・不動産ベンチャーを渡り歩き、ランディックスにジョイン。 設計事務所時代は戸建住宅をメインに設計しつつ、その他はビル・マンション・オフィス・ショップ等広く設計業務を担当。 ハウスメーカーでは営業・設計・IC業務を兼務。ベンチャーではリノベーションのワンストップサービス業務を担当。営業・設計の両面からサポートします。