長期にわたるコロナ禍の中、住宅市場の動向を数値でみる
1.はじめに
2020年から始まった新型コロナウイルスの感染拡大によって、住宅市場は大きな影響を受けた業種の1つです。コロナ禍で企業のリモートワークが普及したことにより、多くの人々の生活に変化がありました。リモートで仕事ができるため郊外に引っ越したり、自宅にワークスペースを確保したり、少なからず住宅市場は稼働し続けてきたイメージがあります。しかし、実際に数値で見た住宅市場の動向はどのような動きをしたのか、この記事ではコロナ禍から現在に至るまでの住宅市場の動向について数値でみていきたいと思います。
2.新設住宅着工戸数
新設住宅着工数は公表されている新築着工統計で見る限り、コロナ禍以前から減少傾向にあり住宅市場自体は低迷していました。数値で見ると、2019年度は前年対比マイナス7.3%、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年では前年対比がマイナス8.1%となっており、2021年に関しては前年対比がプラス6.6%と回復基調となっています。このデータを内訳で見てみると、分譲住宅ではマンション市場が激しく増減しており、2020年初頭では需要が一気に高まり、同年5月には再び減少に転じたりと厳しい状況が続いています。一方、戸建ての需要は2020年・2021年と緩やかに上昇しており、この原因としてはコロナ禍で働き方に変化が生じた結果ワークスペースの確保や必要性が需要増に繋がったと言えるでしょう。しかし、マンションも戸建ても2022年5月以降は大幅に減少しており住宅市場全体としては厳しい状況となっているようです。
※出典:「国土交通省・経済産業省」
※「新設住宅着工戸数調査」(国土交通省) (https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20220714hitokoto.html)を加工して作成
3.新築戸建住宅売買数
続いて新築戸建住宅販売業指数の推移から戸建て販売に関する数値を見てみたいと思います。新築戸建ての売買は、新型コロナウイルスの拡大に伴い注文住宅の着工が大幅に減少した2020年は、逆に大幅上昇しました。しかし、2021年には急落に転じるというあわただしい動きを見せています。その原因として、2022年4月の緊急事態宣言が発動された月は急落してはいるものの、緊急事態宣言解除後の6月~8月にかけては上昇しています。コロナ禍で消費できなかった蓄積された需要が住宅投資に向かった結果と言えるでしょう。一方、2020年8月以降は低下傾向が一年半近く続き、2022年に入りようやく回復傾向の兆しが見えたものの低下傾向の期間が長期にわたった結果、2022年1月の水準は緊急事態宣言下の水準からも大きく下回りました。その原因としては助成金や減税措置などの支援制度が2021年末に終了となったほか、ローン減税控除率の引き下げなどの制度改正によるものが大きく影響しているようです。
※出典:「国土交通省・経済産業省」
※「新築戸建住宅売買数調査」(国土交通省) (https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20220714hitokoto.html)を加工して作成
4.新築戸建て減少の背景
新築戸建ての需要低下の要因の1つとして考えられているものが「ウッドショック」と言えるでしょう。これは世界的な木材の高騰や建築資材の不足によるもので「オイルショック」ならぬ「ウッドショック」と呼ばれています。実際にどれほど価格が上昇したのかこれを数値で見てみると、2021年5月以降の前年同月比にて約50%以上も上昇が見られます。
このウッドショック現象は当然建築工事費の高騰にも繋がり、特に木材による住宅の上昇率やRCなどの鉄骨住宅に比べても上昇率が上回っています。人件費や住宅設備の高騰も相まって新築戸建て住宅の現象を引き起こしていると言えるでしょう。
※出典:「国土交通省・経済産業省」
※「新築戸建て減少の背景調査」(国土交通省) (https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/minikaisetsu/hitokoto_kako/20220714hitokoto.html)を加工して作成
5.住み替えや建て替えの動向
新型コロナウイルスの影響でイベントの中止や大型商業施設の休業など、様々な自粛で人々のライフスタイルやワークスタイルにも変化が生じてきました。このような中、住み替えや建て替えを検討している人の割合も多いようです。しかし、具体的に計画を進めている人、実際に行動している人ということになると約半数の人がまだ検討段階とのことです。長期にわたる自粛生活で不動産への訪問をためらったり、不動産の内見にも二の足を踏んだりと業界全体としては市場が委縮しているようです。しかし、住み替えや建て替えを検討している人も計画自体を中止するつもりはなく、コロナ禍やウッドショックの影響を鑑みて計画を後ろ倒しにするという人が増えているようです。
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6.まとめ
2022年3月・4月あたりから新築戸建住宅販売の数値は徐々に回復基調にあり、新型コロナウイルスに対する様々な緩和が経済活動を再び活性化させているようです。2021年あたりから木材の高騰により1年以上にわたり住宅業界市場に大きな影響を及ぼしてきましたが、今後も様々な要因から建築資材や住宅設備の高騰は高止まりとなりそうです。人材不足のよる労働賃金の上昇や原油価格の上昇なども鑑みるとまだまだ先行きは不透明であるといえ、今後も住宅市場の動向は注視していく必要がありそうです。
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