見落としNG! 注文住宅における「北側斜線制限」を徹底解説
新しい家を建てる時、自分たちの理想とする住まいを実現するためにはさまざまな要素を考慮する必要があります。しかし、その中でも特に重要なのが「北側斜線制限」、通称「北斜(きたしゃ)」です。これは、日本の都市計画法に基づく制限で、自分たちの家が隣の家の日当たりを奪わないようにするためのものです。
なぜこんなに重要なのでしょうか?
それは、この制限があることで、皆が快適に暮らせるようになるからです。自分たちの家を建てる際に「北側斜線制限」を無視してしまうと、建てた家が隣の家の日当たりを奪ったり、風通しを悪くしてしまい、周囲とのトラブルとなります。
この記事では、「北側斜線制限」の基本的な知識から、注文住宅を建てる際のポイント、そして専門的な知識まで、わかりやすく解説します。あなたがこれから家を建てる予定の方、あるいはこれから家づくりに関心を持つ方々にとって、必要となる情報を詰め込んでいます。ぜひ最後までお読みいただき、あなたの理想とする家づくりに役立ててください。
目 次
1. 北側斜線制限」とは
新しい家を建てる際に様々な規則が立ちはだかります。「北側斜線制限」もその一つです。
あなたが自分の家を建てるため前に知っておくべき「北側斜線制限」について解説します。
1-1. 「北側斜線制限」の基本的な概念の解説
言葉は少し難しそうですが、基本的な概念はとてもシンプルです。
「北側斜線制限」は、あなたの家が隣の家の日当たりを阻害しないように、建物の高さや形状に制限を設ける規則のことを指します。具体的には、あなたの家の北側に位置する隣家の日当たりを確保するための制限です。これは、日本の住宅地においては一般的に南側に日が当たるため、北側の家が高すぎると南側の家の日当たりを奪ってしまう可能性があるからです。
1-2. 日当たりと生活環境の関係
日当たりは、我々の生活環境にとって大変重要です。良好な日当たりは、家の中を明るくし、心地よい暮らしを実現します。また、日光が十分に入る家は、冬季の暖房費を抑える効果もあります。そのため、日当たりの確保に関する「北側斜線制限」をきちんと理解し、適切に活用することで、住宅地におけるあなたの家も周囲の家も良好な日当たりを享受できるようになります。
2. 注文住宅を建てるときの「北側斜線制限」の意識
あなたが新しい家を建てる際には、周囲の環境を配慮することが大切です。「北側斜線制限」はその一部であり、この規則を守ることで、あなた自身と周囲の人々双方に利益をもたらすことができます。
2-1. 自宅が隣家の日当たりを阻害しないことの重要性
住宅地は共同の生活空間です。あなたの家が他人の日当たりを阻害すると、それは周囲の人々の生活環境を悪化させる可能性があります。これは、共同生活の原則に反する行為であり、トラブルの原因になることもあります。一方、あなたが「北側斜線制限」を守ることで、あなた自身も他人も良好な生活環境を享受できるようになります。
2-2. 「北側斜線制限」を守るメリット
「北側斜線制限」を守ることで、隣人とのトラブルを避けることができます。日当たりを阻害する家を建てると、それは周囲の人々の不満を引き起こす可能性があります。これを避けるためには、「北側斜線制限」を理解し、適切に適用することが大切です。これにより、あなた自身も周囲の人々も互いに尊重し合い、共生することができます。また、このようにして隣人との良好な関係を保つことは、あなたの生活品質を向上させるだけでなく、地域社会全体の良好な関係を築くことにも貢献します。
また自分たちだけではなく、隣家も北側斜線制限を守ることで、あなたの家は良好な日当たりを確保することができます。これは、あなたの家の中が明るくて暖かい、快適な生活を維持できることを意味します。
2-3. 「北側斜線制限」を守らない場合のリスク
「北側斜線制限」は建築基準法に基づく規制であり、これを違反すると、建築許可が下りないだけでなく、違法建築として取り壊し命令が出される可能性もあります。また、罰金の対象となることもあります。
また、「北側斜線制限」を守らないことで、隣地の日当たりを阻害することになります。そのため、近隣住民との間に重大なトラブルを生むこととなり、場合によっては訴訟になります。
3. 「北側斜線制限」を理解するための基本的なポイント
「北側斜線制限」を理解するためには、いくつかの基本的なポイントを押さえる必要があります。
それは隣地との距離、建物の高さ、そして影の長さです。
具体的な数値などの詳細は4〜7章をご覧ください。
3-1. 隣地との距離
隣地との距離は、敷地の境界から境界までの直線距離として計測されます。境界線は通常、固定物件や登記情報から特定されます。
これは、北側斜線制限が適用されるかどうかを判断するための重要な要素です。
3-2. 建物の高さ
建物の高さは、地面から建物の最も高い部分(通常は屋根)までの垂直距離として測定されます。
ここで注意すべき点は、地形の高低差や基礎の高さも建物の高さに含まれるということです。
3-3. 影の長さ
影の長さとは、建物が作り出す影の長さのことを指します。
特に冬季の正午時に最も長い影が出るため、この時点で隣地への影が入らないように配慮することが求められます。
4. 北側斜線制限に該当する条件
この章から具体的な法令や数値を見ていきます。
前述の通り、北側斜線制限とは建築基準法で定められた建物の高さを制限する規制の中のひとつです。北側に面した隣地の日照の悪化を防ぐことを目的としていますが、その制限の及ぶ範囲は以下の2パターンとなります。
- 第一種低層住居専用地域/第二種低層住居専用地域の場合
- 第一種中高層住居専用地域/第二種中高層住居専用地域の場合
用途地域 | 高さ | 傾斜勾配 |
第一種低層住居専用地域 第二種低層住居専用地域 | 5m | 1.25 |
第一種中高層住居専用地域 第二種中高層住居専用地域 | 10m | 1.25 |
この制限を受けると上記、図のように北側隣地の境界線上に一定の高さ(5m、あるいは10m)をとり、そこから一定の勾配(1.25)で記された線(=北側斜線)の範囲内で建物を建てる必要があります。注意しなければならない点は、北側の基準が真北となることです。
5. 真北とは
真北 (しんぽく)とは、ある地点から子午線※が示す北、北極点を指す方向でつまり一般的にいう北になります。これに対し磁北(じほく)は、まさしく字の通り方位磁石によって求められる北(北磁極)を基準にする北を指します。磁北は、一般的には風水や飛行機の航路に使われています。
※子午線:地球の赤道に直角に交差するように両極「北極・南極」を結ぶ大円を指します。
- 真北(しんぽく):経線の指さす上
- 磁北(じほく):磁石の指す北
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6. 規制や制限が重なった場合
北側斜線制限が他の規制や制限と重なった場合は、より厳しいほうが優先されます。例えば、「道路斜線制限」や「隣地斜線制限」「日影規制」などの制限がこれにあたります。道路斜線制限に関していえば、道路面の日照を確保するため道路に面した建物の高さを制限した規定です。一方、隣地斜線制限は主にマンションやオフィス・店舗などが該当し、建物が20mや31mを越える建物に対しての制限となります。しかし、第一種低層住居地域や第二種低層住居地域では、建物の制限がもともと10m・12m以内に制限されているためこの規制には該当しません。また、高度地区が指定されている地区では傾斜勾配が「1.25」よりもさらに厳しい数値が定められます。
7. 緩和される条件
「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」で日影規制がかかってくる場合は、北側斜線制限が適用されません。また、「北側斜線制限」や「道路斜線制限」に引っかかるような建物でも、天空率が許容範囲内に収まっていればこのような高さ制限を受けることはありません。住宅の高さ制限が厳しくなる規制や、緩和される規制など複雑な規制が多くあるため、高さに関する制限はしっかりと専門家と相談した上で検討することをお薦めします。
8. まとめ
大型マンションやアパートで北向きのルーフバルコニーや庭園が多い理由は、北側斜線制限がかかっているからと考えて良いでしょう。北向きの間取りは需要が低いのでルーフバルコニーや庭園にすることが多いようです。3階建ての注文住宅など高さのある建物では特に注意が必要な制限となります。そのほか、土地の向きが真北から少しずれていると1方向だけではなく2方向から北側斜線制限がかかってくることもあり得ます。
このように、注文住宅を考える上で北側斜線制限は切っても切れないものである上に、複雑な場合もあります。自分たちでしっかり下調べをするだけなく、専門家に相談をした上で土地の購入や家の設計に臨むと良いと思います。
sumuzuでは、「北側斜線制限」に関する知識豊かな一級建築士が在籍しており、地形や隣家の形状からアドバイスいたします。また、ハウスメーカーや建築家の説明が分かりづらいときも、分かりやすく解説いたします。
家づくりで不明な点などございましたら、お気軽にsumuzuまでご相談ください。